投資について悩んでいたら、女上司との距離がグッと縮まった件

あかせ

第1話 私が力になるわ!

 俺、尾形おがた剣也けんやは普通のサラリーマンだ。大卒で小さい会社に入社して3年になる。


それぐらいになると仕事に慣れるものだが、そのせいで余計な事を考える余裕ができてしまった。


考える事は色々あるが、一番気がかりなのがだ。巷では新MISAミーサが話題になっており、以前に比べて投資をする人が激増したとか。


しかし俺に投資の知識は皆無だ。仮に勉強したとしても、元本割れのリスクが気になる。簡単に手を出せるものじゃない。


とはいえ、このままスルーし続けて良いんだろうか? ネットじゃなくて誰かに相談できたら…。



 そんな風に悩み続けているある日。会社に来てすぐ、自分のデスクで取引先から来たメールを返信し終えた俺。


…元々睡眠の質が良くない上に朝だから眠い。パソコンに用はないのに、画面をぼんやり眺めてしまう。


「尾形君。朝からボンヤリしてどうしたの?」


「えっ…?」


いつの間にか、上司の皆川みながわさんが隣にいた。俺と同じ大卒入社で、歳は俺より数歳上になる。プライベートは知らないが、職場ではクール系だな。


「すみません、何でもないです」

余計な心配をかけたようだ。


「今だけならその言葉を信じるけど、最近の尾形君ケアレスミスが多いわよ? 問題なく通ってるのは、私が微調整してるからなの」


「そうだったんですか、申し訳ありません!」

知らない間に皆川さんに迷惑をかけていたとは…。


「これから気を付けてくれれば良いわ。でも急にミスが増えると、何かあったと勘ぐっちゃうわよ」


「何かあった訳ではないですが、悩みはありますね…」

つい本音が出てしまった。


「悩み? どんな事なの?」


「気にしないで下さい。自分で解決しますから」

社会人なんだから、それが当たり前だ。


「すぐ解決できる悩みとは思えないけど…」


皆川さんの言う通りだ。すぐ解決できるなら、ミスが頻発する前に事は済んでる。


「できれば話してもらえると助かるわ。私が尾形君の悩みを解決する手助けができたら、結果的に私のためになるんだから」


確かにそうだな。俺のミスのフォローをしなくて済むんだし…。


「そういう事なら、お言葉に甘えて良いですか?」


「良いわよ」


「実は…、将来というか投資について悩んでるんです」


「投資か…。最近は国を挙げて投資を推奨してるわね」


「だから俺も興味を持ち始めたんですが、知識はないし元本割れは怖いから手が出せなくて…」


「その悩みは、すぐにどうこうできる事じゃないわね」


「ですよね…」


「これから昼休みとかの空いた時間に、少しずつ教えてあげる」


「えっ? 皆川さんがですか?」


「そうよ。私は投資してるから力になれると思う。といっても始めたばかりだけど」


だとしても、間違いなく俺より頼りになる。面と向かって話せるから信頼できるし、皆川さんは上司だ。誰よりも相談しやすいだろう。


「それでもありがたいです。時間は何とかするので、お願いしても良いですか?」


「わかったわ。早速今日の昼休みからね」


「そんな急で大丈夫なんですか?」


「ちゃんと予定は把握した上で言ってるわ。心配しないでちょうだい」


上司に余計な心配したな…。


「それじゃ、昼休みね」


「はい」


皆川さんは俺の元から離れていく。忙しい合間を縫って教えてくれるんだし、身になるようにしっかり勉強しよう!

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