その1




 騒がしく泣き喚く時計を叩いて時刻を確認する。週五で見る数字、六三零。

 面倒くさい、いっそサボってしまおうか。なんて。思うのは勝手だが実行に移すのは許されない。致し方なく溜息を吐きながら布団を剥ぐ。

 もうすぐ冬も終わる2月の朝。家の中であるにも関わらず部屋に溜まった空気は異常に冷たく、昨晩から身に纏っている、既に温もっている服を防具にもさせてくれなかった。


 扉を開いて短い廊下をゆっくりと歩くと直ぐに洗面所に就くこととなる。蛇口を捻って手洗いうがいに加えて洗顔。目覚ましにもなる其奴らの所為で今日が始まることを再確認。

 嗚呼、あわよくば隕石でも降り注いで俺もろとも人類全員滅んで仕舞えば良いのに。

 あわよくば何処かの宇宙人が何もしなくて良い星に連れてってくれたら良いのに。

 疲労の抜けない頭で妄想。そんな危険思想も最早日課と化していた。


 今日の朝ごはん。

 週末に買った消費期限の危うい食パン。かけて焼くだけで食パンをメロンパン風に変身させる魔法のチューブ。市販の緑茶に朝のニュースから得る知識。

 なんと質素で見慣れた食事。

 嗅ぎ慣れた暖かで食欲を誘う香りに包まれながらテレビを見遣る。毎日頑張っている見慣れたアナウンサー。平日であることを突きつけてくる部分は嫌だが人間としては素敵な頑張り屋で尊敬できると思う。

 齧ったパンの甘い香りが口一杯に広がり、鼻腔を擽る。昼まで持つ気は到底しないがきちんとした飯を作る元気はない。今晩、外食を堪能すればまた頑張れるだろう。なんて、浅はかな考えで頭を働かせながら緑茶でパンを流し込んで朝食を終えようとしたところだった。

 既に聞き覚えのある内容を垂れ流していたニュースの雰囲気が切り替わり、アナウンサーの背後に近未来的な施設の映像が浮かび上がる。映るのは酷く非現実的な、漫画やアニメで数度見たことあるような、CGと錯覚したくなるほどリアルで精密な機械が壁を覆う空間。

「二月五日、六千区にて地球外生命体が操縦していたと見られる乗り物が発見されていたことが明らかになりました」

 淡々とアナウンサーが語り終えると画面が切り替わり、画面いっぱいに広がる機械。見れば見るほど信じられない映像に胸が大きく高鳴る。

 こんな世界、支配してくれないか。なんて。淡い期待を抱きながらテレビの電源を落とした。


「また、この事により本日から未確認生物研究施設の研究員が自衛隊と共に動き始めました」



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