呪いのささくれ

最時

第1話 天然先生

 風呂上がり、六歳の娘が指を見ている。


「どうした」


「パパ、ここがむけちゃった」


「ああ、指の皮がささくれちゃったな」


「ひっぱっていい?」


「ダメ。

 ひっぱるとそのまま指が取れちゃうことがあるから」


「ウソ」


「ホントだよ」


「ママ、ホント?」


「ウソよ。

 ヒカルに嘘教えないで」


「パパ、ウソつき」


「嘘じゃないよ。

 良い子にしてないと呪術師が呪いを掛けて指をさいちゃうんだよ」


「いい子だもん。

 じゅじゅつしってなに?」


「悪い魔法使いかな」


「魔法使いなんていない」


「いるよ。

 この前、映画見たじゃん」


「あれは本当の話じゃない」


「えー、本当の話だよ」


「・・・ ママ、パパがウソいう」


「もう、パパの言うこと聞かなくて良いから」


「そこまで言わなくても」


「パパの言うこと聞かない」


「そう、ヒカルは良い子だもんね。

 おいで、爪切りで切ってあげるから」



 小学校の給食前、子ども達と手を洗っていると指にしみる痛みを感じた。


「あー、ささくれ出来てる」


「先生、どうしたの」


「ささくれちゃった」


「あーあ、きのうパパがそのままにしておくと指がさけちゃうっていっていた」


「本当に?

 それは大変だね」


「うん」


「・・・」


 確か、昨日までは少しめくれているだけで痛みは感じなかった。

 それが今日は大きくなって痛みを感じる。

 ヒカルさんのパパはお医者さんだし・・・

 ささくれがそんなになるなんて聞いたことないけど・・・



 子ども達と一緒に掃除をして手を洗うと再び痛みを感じた。


「あれ、さっきよりささくれ大きくなってる!」


 このままいけば確かに指半分くらい裂けることもあるのかな・・・



 子ども達を下校させるとすぐに教頭のところへ向かった。


「教頭先生、体調悪くて病院へ行きたいのでこれで早退します」


「わかりました。

 風邪ですかね? 症状は?」


「と言うわけではなくて、怪我が悪化してきてまして、早めに手を打っておかないと大変なことになりそうな気がしまして」


「学校の中での怪我ですか?」


「いえ、プライベートで」


「わかりました。

 お大事にしてください」


「ありがとうございます」



 教頭は学年主任のデスクへ行った。


「小林先生」


「どうしました教頭」


「小宮先生が怪我で早退したのですが、何か聞いてませんか?」


「初耳です。

 どんな怪我ですか?」


「詳しく聞けなかったのですが、病院へ行くそうです」


「そうですか。

 大事でなければ良いんですが、明日どうですかね」


「私か、代わりの先生をお願いしておきます」


「よろしくお願いします」



 病院の診察室にて


「小宮先生。

 ヒカルがお世話になります。

 今日はささくれですか?」


「はい。

 見てください」


「・・・ささくれですね。

 ささくれを切って、軟膏でも出しておきましょうか?」


「それで大丈夫ですか?

 指が裂けたりとか?」


「えっ」

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