第五話 剣帝序列筆頭、帝国の焔 Ⅰ

「船が爆発したぞ! 救助班急げ!」


 アデル達が船から飛び降りてまもなく大きな炎と共に爆発した、とっさの事でアデル達は何が何だかよく解らないで居る。


「ありゃ……燃料貯蔵庫に引火したな?」

「いや、たるに入っている酒などのアルコール物に当たったと考えても良いだろうな」


 二人は帝国兵に気付かれないように船の底を潜るように泳いだ、その間二人は口パクでお互いが言いたい事を存分に言った、それを解釈して互いに答えを口にする。


「ぷは、それにしてもこの後どうする?」

「どうするって言ったってなぁ。取り敢えず上陸するのが頭の良いやり方だろうな。こんな冷たい冬の海に何時までもつかっているなんて体力の消耗の元だ、それでなくてもあのレイヴンとか言う野郎に叩きのめされて疲れ果ててるってのによ」

「レイヴン。あいつは一体何者なんだろう」

「しらねぇよ、とにかく上がろう」


 ガズルは海の中で残っている力一杯重力波を水中にはなった、その反動でざぶんと音を立てて陸に上がると腕を伸ばしてアデルを引きずり出した。


「うぅ、寒い!」


 アデルはぶるぶると震えながら全身水浸しに成った身体を振った、その行動はまるで犬がびしょぬれになった時に身体をぶるぶると震わす行動と似ていた。


「冷て、お前も法術剣士エレメンタルブーレドなら何とかして炎を起こしてみろよ」

「無茶言うな、アレだって相当のエーテルを使うんだぞ。そう易々と出来る物じゃないんだ」

「じゃぁ、何でレイヴンはいとも簡単に炎を出したんだよ?」

「俺が聞きたいぐらいだ、それにあの移動速度は尋常じゃない。俺がまだ教わってなかった法術の一つだろうな。まったく、おやっさんはやってくれるよ」


 アデルはそうぼやくと辺りを見回す、そこはグリーンズグリーンズの商店街通り中央、路地裏に位置していた。


「取り敢えず何処かに入って暖を取らして貰おう、こんな所にいたら凍え死んじまうよ」


 二人は歩き始めた、ずぶぬれの衣装を引きずりながら歩きアデル、長ズボンがグッショリ濡れているガズル、二人は少し歩いた所の廃屋を見つけた。そこの扉をノックし誰もいない事を確認した上でドアを開けた。


「ん、比較的暖かいなこの中」

「そうだな、何が原因だろう」


 ガズルの眼鏡が光った、その異変を瞬時にして突き止めたアデルは背中から「一刀両断」と書かれた張りせんと「先手必勝」と書かれたピコピコハンマーを取り出す。それを両手に構えて大きく振りかぶって狙いを定める。

 だがそれを振り下ろそうとはしなかった、必死になってこの空間が何故暖かいのかを捜索しているガズルの事を考えるとここで突っ込む事は不必要だと考えた、なぜならガズルがその原因を突き止めればさらに服を乾かす事も出来るのではないだろうかと思いついたのだろう。それも無知の人間の想像ですらないが。


「……成る程な」


 ガズルの眼鏡から光が消えた、そして何か一つ物を手に取ると渋々とそれを観測し始めた。

「何か解ったのか?」


 ピコピコハンマーと張りせんを背中の何処かにしまい込んでガズルの横に座る、そしてガズルが観測をしている物を見る。


「なんだこれ?」

「はぁ? お前これが何か解らないのか?」


 戦闘以外に関しては全くの無知であるアデル、それは一緒に居るガズルにとって悩みの種でもあった。旅を続けるうえで必要な知識が欠落しているのだ。


「これはだな、幻聖石の一種で陽光石って言う珍しい石なんだ。その石は炎のエレメントで固められた一種の法術体、この陽光石から発せられている微弱な法術のお陰で暖を取れるって訳だ。因みにこんな所に有るのは不思議でしょうがない」


 淡々と説明する中アデルは最後の言葉に少し悩んだ。そして驚いた口調でガズルの腕を掴む。


「馬鹿、自然的にこんな所に有るわけ無いんだったら人工的に有るって事だろう!

 誰かここに住んでたりするんだよ、早く逃げるぞ!」


「その必要はないわ!」


 突然ドアが開いた、そしてそこには銃を構えた一人の少女が仁王立ちしている。


「あなた達は誰!」

「……何でお前と一緒だとこうも面倒なんだ?」

「知るか、取り敢えず撃たれないようにしろよ、こっちは何も構えてないんだ」


 二人は眉一つ動かさずに銃口を向けている少女の目を睨んだ、そして少女がアデルの足下に一発弾丸を飛ばした。


「答えなさい、あなた達は誰!」


 アデルはまだ濡れたままの衣装で床にドカッと座り込んだ。


「中央大陸グリーンズグリーン北部の町ケルミナより三フェルズ離れた所に拠点を持つ義賊『カルナック』の初代頭、アデル・ロードだ」

「同じく義賊カルナックの右腕、ガズル・E・バーズンだ。君は?」

「私の名前はアリス『アリス・キリエンタ』よ。こんな所で何してるの? まさか私のお金を盗もうとしてるんじゃないでしょうね?」

「おいおい、今も言ったが俺達は義賊だ。平民から金なんてもぎ取ろうとしないぜ?」


 ガズルが笑いながら冗談交じりに言った、だが次の瞬間ガズルの顔脇すれすれを弾丸が一発通り過ぎていった、サーと青ざめていくガズルを横目にアデルが話しかける。


「あんた、この町の出身か?」

「違うわ」


 即答だった、何もためらわずにきっぱりと答えた。


「あんたが金を貯めている理由は何の為だ、この町に移住でもするつもりなのか?」

「それを聞いてどうするつもりかしら?」

「別に、これと言って特にないが」

「……用心棒よ」

「はぁ?」「はい?」


 アデルとガズルはお互い拍子抜けしたような声を出す、余りにも解りやすく馬鹿みたいな回答に二人は急に笑い出した。


「何がおかしいの!」

「いや別に、用心棒だって聞いたからついな」

「全くだ、用心棒を雇う? 馬鹿馬鹿しい」


 二人はさらに笑い転げる、ついに頭に来たアリスはアデルに向かって銃口を向け引き金を引いた、だがアデルはその動作を見逃さなかった、とっさに腰に付けていた剣を取り出すと引き金が引かれる前に自分の目の前に取り出すと弾丸を斜め上に弾いた。


「っ!」

「どうだ、一つ商談と行かないか? 悪い話じゃないと思うんだけどな?」

「……何よ」

「簡単だ、俺達をかくまってくれ、そうすれば金無しで俺達があんたの護衛を引き受けてやろう。どうだ? 悪い話じゃないだろ?」

「あんた達を信用しろって言うの?」

「そう言ってるつもり何だろうな、アデルの口もさび付いたもんだ」


 ガズルが眼鏡を取り拭いた、そしてまた付けた。


「安心しな、俺達は義賊だ。誇りに掛けて嘘はつかねぇよ」

「あなた達が私を信用するのは勝手だから構わないけど私が裏切ったらどうするの? 私は帝国にあなた達を売るかも知れないわよ?」

「それは無いだろう?」

「なぜ?」

「もしもあんたが帝国に俺達を売るならもうとっくにしてるさね」


 お互いにらみ合ったまま暫く沈黙が続いた、緊張が走る三人の間にはまだ壁が残っている。だがその壁を壊すようにアリスが動く、拳銃を下ろしてクスクスと笑い始めた。


「ふふふ、貴方なかなか面白い事を言うわね」

「そうか? 俺は冗談が苦手なんだけどな」


 アデルの言葉がさらに笑いを誘う、何故笑われているのかが全く把握出来ていないアデルは少々ムッとした表情を見せる。


「わかった、あなた達を信じましょう」

「そう来なくっちゃ、俺達もいい加減ヤロー共の旅は飽き飽きしてる所だ」

「ヤロー共?」


 アリスが首をかしげる、ヤロー共と言うには物足りない人数だったからである。


「実は俺達さっき爆発した船に乗ってた人間なんだけどよ、ここにたどり着く数日前に仲間とはぐれちまってな。まずはそいつらを探しに行かなきゃ行けない所なんだ。まぁ……あいつの事だから心配はないと思うが……」


 ガズルが話し終える少し手前で言葉を遮るようにしてアリスが口を開く。


「あなた達あの船の搭乗者なの?」

「そうだけど、何か問題でも?」

「大ありよ、よくレイヴン相手して生き延びられたわね」


 アリスが驚きを表情にそのまま出して驚いている、その顔を見て二人は苦い顔をしながら事情を説明し始めた。

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