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 その日、僕はとある音楽家の催しに友人と出向いていた。そこで、君を見かけたのです。君が視界に入ると鼓動が高まり、気分が昂揚する。恍惚三歩手前くらいかと思われる状態。地上数十メートルの展覧会場で、遠くから君をちらっと見てはぐらつく社会人的理性。最終的には太古から連なる野生が勝った。


 「もう一度見かけたら話しかける」


 僕は友人にそう告げる。とはいえ、先に階下へ行き、軽食をとる僕たちは君を見失っていたので、どうせもう君はここには居ない、会うこともないだろうから、この後に寄る居酒屋で、この出来事がいい酒のあてになるだろうと内心思っていた。

 しかしどっこい、あなたはそこに居るのでありました。神様ありがとうございます。

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