ささくれ

消しゴム

第1話

 人生何年も生きていれば、思い出したくない過去の一つや二つは誰にだってあるでしょう。かくいう私にも、中学生時代にとんでもない勘違いをしでかし、恥ずかしい思いをしたことがございます。今回は、皆さんにもそのエピソードを聞いていただきましょう。


 さて、中学生時代の私は、2年生になって関東から関西に引っ越したこともあり、クラスメイトから距離を置かれていました。私の標準語が「気取ってる」「都会もん」の如く捉えられ、仲間外れ寸前といった状況でしたね。別に私の家もそこまで裕福な訳ではなかったですが、中学生というのは得てして思い込みが激しいもので、関東=都会という価値観に支配されていたようなんですね。


 幸いなことに、当時はそれなりに勉強の出来た私は、例えば授業中に近くの席の子が分からない問題に困っていそうなら、コミュニケーションの一環とばかりにやり方を教えてあげるなんてことをやっていましたので、徐々に周りの席の子達を中心に距離感を縮めることができました。


 そんな中で忘れもしない冬の帰り道、とあるクラスメイトが「姉ちゃんと遊んでたら“さかむけ”が出来てん」と言ったんですね。当時の私は《ズル剝け》という単語が下ネタであることを認識していたので、“さかむけ”という単語の意味も知らないまま、「姉ちゃんと遊んでたらそんなのができるとか、何かエッチなことしてんの?」と知ったかぶりして冗談半分でその男子生徒にツッコんだんです。そしたら、「何言うてんの?さかむけってこの指のちょっとめくれてるとこのことやけど... 何と間違えてんの?」とか言う訳ですよ。後で知ったんですが、関西では関東で言うところの《ささくれ》を、《さかむけ》と言うそうなんです。そこでようやく私は自分の早とちりに気付きましたが、時既に遅し。勘違いしていたのは自分だったこと、○○剝けむけと聞いて下ネタだと思ってしまったことを白状させられ、その日以降中学を卒業するまで、私のあだ名は「ソーセージ」になりました。脳内ち○こ野郎の意味だそうです。勉強を教えることで築き上げた私の立ち位置が、儚くも崩れ去った瞬間でした。


 以上が、中学時代の私の恥ずかしい思い出です。あの勘違いをきっかけにクラスメイトと打ち解けられたことは良かった反面、下ネタ由来のあだ名を付けられてしまったことは心にのようにひっかかっており、今でも目をそたくなります、さかだけに。

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ささくれ 消しゴム @ke456monkey

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