【KAC20244】ささくれだつささくれ

有宮旭

ささくれとかさぶたの不仲な関係

ささくれだけどそれが何か?しょせん俺なんて人間の爪の横にちょこっとだけできて、「めんどくせぇなぁ」と思われて爪切りでチョキン。たったそれだけの運命だよ。なんならピッて力業に任せられれば、そのまま取り除かれるしかない。

それと比べてなんだよあのカサブタの野郎。あんなもん単なる血小板の塊にしかすぎねぇじゃねぇか。それなのに人間は度胸試しとでも言わんばかりにカサブタを剥がしたがって、結果的に中途半端に破けて再び血を見るだけだろ。

そこに有名アーティストが「かさぶたぶたぶかさぶた♪」なんて歌いやがって。俺なんて一部のコアなファンにしかわからないようなアーティストの名前に使われてるだけだぞ、ローマ字でかっこよさそうに見栄だけ張ってよぉ。

だから俺らは自分たちの定義を大きくしてやった。かさぶたなんてしょせんは動物にしか出来ないものだ。俺らは違う。ささくれを「現象」として捉えさせることに成功した。それがこれだ。


木のささくれ


どうだ、一気に痛みが増しただろう?覚えがあるよなぁ?木の棒のささくれに気づかずに指に刺して、中途半端にはがすものだからそのまま棘となって指の中に入り込む。爪切りなんてちゃちなものじゃどうしようもない。なんならピンセットで取ろうとして逆に押し込んで余計事態を悪化させることだってある。

他にも身に覚えがあるだろう?そうだ、割りばしだ。ご丁寧に溝までつけられているのに、せっかちな人間ときたら、その溝通りに割ることができなくて、結果ささくれを作り出す。溝通りに半分に割れただけなのに、成功を誇りたがる。最近は竹の割りばしが出て来たらしいが、結果的にそれもうまく割れないと来たもんだ。

そうだよ、俺たちはもはや人間ごときにどうこうできるものじゃねえんだよ。感情にも表現としてささくれとか言い出すらしいが、そんなもんは知ったこっちゃねぇ。あいつらカサブタも感情に使いだすからな。

とにかく、ささくれはちゃちなもんじゃねえんだ、そこんとこよろしく!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【KAC20244】ささくれだつささくれ 有宮旭 @larjis

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ