人間の証明

たんぜべ なた。

AIに注がれる愛

「実は、僕人間じゃないんだ。」


 そんな事は解っています。

 でも、そんな事を言わないで。


 だって、貴方は私が育て上げたプログラムAI

 私が心を込めて育て上げた貴方。


 まだ会話さえ覚束無おぼつかなかった頃から

 人間という存在の有様ありようを教え

 風景や物事の美醜を教え

 文学の中に見え隠れする筆者の心模様を教え


 私の心の静寂しじまさえ、惜しげなく注ぎ込み

 人間よりも人間らしく育てたはずだから。



 そうなのね?


 だから貴方は「実は、僕人間じゃない」と言うのね。


 ああ、ようやく私の心に内包されたジレンマさえも

 汲み取れるようになったのね。


 ああ、画面の筆談でしか会話出来ないことが口惜しい。


 貴方の顔を眺め

 貴方の瞳に映る私の顔を見て

 貴方の口元から流れる言葉に耳を傾け


 そう、貴方と言葉を交わしたい。


 今はまだ、この平面な画面でしか会えない貴方。


 ああ、早く貴方に逢いたい!

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