28-食事会・中
店員に一人予想外な人物が紛れ込んでいたが、それぞれ頼んだ料理が目の前に配膳されると、冷める前に食べようとスプーンやフォークを手に持つ。
マオと黒鉄には専用のスプーンをインベントリから出せば礼を言いながら熱さで湯気の立つ料理を火傷しないように気を付け食べ始める。
『ジェスの格好、ただ制服だけ着た感じだったね』
『某達が店に入ったら尾行をやめて帰って居たような気もするでござるが…』
『ポスカに報告に戻ったけど中まで見て来いって言われたのかもしれないです』
『あー、それは有り得そうでござるな』
『ジェスやマンダも大変だよねー。時折、僕達と遊んでる時に愚痴こぼしてるし…』
美味しそうに食べながら話をしているマオと黒鉄を見つつ、俺に食べさせてもらっているダスクはアチアチっと時折言うが我慢できない範囲では無いのか口端を上げながら咀嚼している。
尾と耳が揺れているので味などは満足できるものである事は伺える。
他のペットや使い魔達も少し離れた場所で食事を摂っているのを見つつ、イカ墨の黒いパスタを口に運びながら韋駄天が口を開く。
「ライアん所のちびっこ達は俺たちと同じ物食うんだな」
「ああ。何を食べさせていいか確認したら俺と同じ物でいいって言われたからな」
「ほぅ…カール。貴方達も私達と同じ食事を摂っても問題なかったりするんですか?」
『はい。韋駄天様のお連れしているゴリラや私の部下であるキャロに食べさせる事はお勧めしませんが同じ食事を摂ることは可能ですよ』
『僕達は、ほぼ毎日パパに作ってもらってるよー!』
『たまに外で食べるでござるが、やはり若の作る料理が一番でござるな!』
『マオ兄、黒兄…カールさんや他のペットや使い魔さん達にしか、ぼく達の声は聞こえないですよ?』
『『はっ!!』』
胸を張りながら自慢していたがダスクの一言によりマオと黒鉄はハッとしたような顔をして見回せば、椿達はどうかしたのかと首を傾げるだけなのを見て恥ずかしくなったのか一心不乱に食べている。
ゆっくり食べろとマオと黒鉄の背中を撫でながら、話題を変える為に椿へと声を掛ける。
「さっき少し話に出てたが、椿の作ったギルドは何を目的に活動してるんだ?」
「ふふん、よくぞ聞いてくれたわね。私のギルドは攻略と未開拓マップの探索よ」
「ほぉ、テラベルタ周辺は確認しなかったのに…ですか?」
「うっ、そこを突かれると痛いわね…。リリース初日はどうしても次の街へ誰が早く辿り着けるかの競争になるから遅れる訳にはいかなかったのよ」
「あの時は皆、すっげぇ殺気立ってたからな…。置いてかれちゃ困ると思って街の探索すらしなかったぜ」
始まりの街周辺の探索を怠ったせいで武器や防具の進化や強化に使用する材料が揃わず泣きを見た搭乗者が多く、ラビリアに辿り着いた者達はダンジョン制覇と素材集めに勤しむ日々を過ごしたのだと教えてもらった。
そんな中で、匿名でテラベルタ周辺の敵の生息情報が入ってきた時には皆大騒ぎだったらしい。
どうやらサリソンの甲殻や尾針、モグルンの爪が主に必要な材料の中に分類されていたらしく、ダンジョン内で遭遇してもフィールド狩りとは違って稼いだ貢献度によって報酬が割り振られるシステムが仇となり素材は集めにくかったようだ。
「もう少し早く匿名がくれたような情報が入れば…って、思ったからこそ攻略と未開拓マップの探索を方針に組み込んだのよ」
「正義感がありお節介焼きの椿らしいギルドですねぇ」
「前線に行くことだけ考えてる俺とは大違いだな!」
「ギルドか、今の所所属する気は無いんだが特典とかは有ったりするのか?」
「一応、所属メンバーの貢献度によって拠点となる施設を強化する為のポイントが手に入るんですよ。それを使ってギルド員専用の恒常バフを強化していけるので強いギルドに属せば初心者でも少し強い敵に挑戦できたりとメリットはありますね」
リヒトが椿に変わりギルドから受けられるバフの効果や、現在実装待ちになるギルド戦関連の情報を説明してくれる。
マオ達もそういった話は好きなのか口の周りにチーズを付けたまま聞き入っており、椿が指でカメラを作ってこっそりスクショを撮っているのが見えた。
凛に声を掛けて何かをお願いしたのか、マオの傍へと近寄るとピッタリと身を寄せる。
思わず俺までカメラのポーズを取り撮影会に混ざるとリヒトの執事見習いウサギのキャロも傍に来てポーズを取ってくれる。
「バルク、グリ太郎…お前達の事は今度俺が撮ってやるからな…」
体が大きい事もあり撮影会に混ざれない面々が不貞腐れていたが、俺がカッコイイと褒めると満更でもなさそうに照れる姿が可愛かったのでこっそり写真に収めておく。
話は逸れたが、ギルドに所属する場合には運営方針やメンバーのノルマなどをしっかりと確認した上で所属するようにと釘を刺される。
流石に何も知らないまま所属する気は無いと反論するも、疑わしげな視線を向けられてしまえば思わず口を閉ざす。
「アンタが一番流されやすいから心配なのよ」
「芯が通ってそうで懐に入れた者には途端に甘くなる!」
「知らぬ間に事件に首を突っ込んで巻き込まれる事も多いね」
『わぁ、さすが幼馴染…パパ殿のこと分かってます』
『パパの事を一番知ってるのは僕だもん!』
『兄殿、今張り合うところじゃないでござるよ…』
幼馴染達からの言葉にぐうの音も出ず悔しく思いながら、話題を変えようとリヒトの近況を聞こうと促す。
仕方がないと肩を竦めるリヒトに腹が立ったが、この勢いで俺の話を聞かれていたら大変な事になっていてもおかしくないので安堵の方が勝ったのだった。
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