26-ペット達の紹介・後
取り敢えず俺とマオ達が食べたい物をメモした紙を椿に渡してから、どうやって紹介しようか悩む。
経緯は話したもののペットの数に関しては伝えていないので紹介の仕方が少しばかり難しい状態となってしまっている。
それよりも前線組でも連れているのは二~三匹となれば俺は異例の部類に入るのは確実だ。
『取り敢えず、僕達だけ紹介でもいいと思うよー?』
『うむ、見た所この会話を主に伝えるれるのはこの場ではカールのみでござろうからな。正確に連れている数を聞かれていないので誤魔化しようはあるでござる』
『ですです。黒兄の意見に同意です。イベントまで別行動する事も視野に入れたら無難だと思います!』
「そうするか。マオ、ゴーグル外してもいいぞ。今までずっと着けてたからな」
『コレ気に入ってるから全然苦じゃなかったよー?でも、パパが許してくれたから久しぶりに外すねー!』
俺とマオ達との会話を聞いているはずだが、微笑みを絶やさずに見ているだけのカールへ視線をやればウィンクを返されてしまいどう反応すべきか分からない。
後程、リヒトに話す可能性もあるが俺個人の都合などにも配慮してくれている可能性はある。
執事というが主から質問をされなければ黙認してくれる事も色々とあるのかもしれない。
マオが久方ぶりにゴーグルを外して額にある宝石を外の空気に触れさせているのを見て、背中を優しく撫でてやると尾を揺らしながらじゃれついてくる。
「あら、額に宝石があるなんてカーバンクルとかの精霊みたいじゃない」
「確か、この世界では精霊達は契約するのに特殊な条件があるという話だけど何かクエストの報酬で契約したのか?」
「流石に精霊とは契約した事ないさ。この子はマオ、 種族は宝石獣っていう珍しい部類のペットらしい」
『なるほど、雰囲気が違うので注視していましたが…まさか宝石獣とは…』
カールが納得したように頷いているのを見つつ、リヒトは僅かに目を細めるとマオの隣でダスクと話をしている黒鉄を見つめている。
表情豊かに会話をしている姿が気になるのか、それとも何かを思案しながら見ているのか分からない。
昔から良い事も良からぬ事も真面目な顔をして考える奴なので対応に困るのが辛い所だ。
「ライア、マオに触ってもいいか!?こんなちっこいの触れる機会そうそうないからよ!」
「私の凛には触らせないわよ…。アンタ、力加減出来ないんだもの」
『パパ、危ないなと思ったら思いっきり噛んでもいい?』
「許す。韋駄天なら噛んだり蹴ったりしてもケロッとしてるから好きにやっていいぞ」
『若…その許可はある意味ヤバ…』
『じゃあバズーカで撃っても…』
「それはダメ」
『銃火器はダメに決まってるのです…』
韋駄天の傍に行くマオを見送りつつ、残ったダスクと黒鉄の紹介をしようとした所で今度はリヒトが手を上げる。
どうぞと発言権を差し出すように手で差せば、小さく咳払いをした後にチラチラと黒鉄を見ながらリヒトが言葉を紡ぐ。
「私はその子龍に触れてみたいんだが、構わないか?」
「黒鉄、どうする?」
『構わぬでござるよ。某に進んで触りたいという者も珍しいので少し緊張するでござるが』
「触っていいそうだ。この子の名前は黒鉄だ。魔法攻撃が得意でいつも助けて貰ってるんだ」
『うぬぅ…そんなに褒めても何も出ないでござるよぉ』
『黒兄が照れくさそうにしてるけど、尻尾は満更でもなさそうに揺れてます…』
『褒められ慣れてないからねー。普段はポンコツだし』
『一言余計でござるよ!某はポンコツではござらん!』
言い返しながらリヒトの傍に向かった黒鉄は無遠慮に翼を摘みあげられれば、抗議するように威嚇するも気にした様子もなく風を受ける皮膜や尾、爪と興味が引かれる部分を観察されている。
不満げにテーブルを叩く尾に後で機嫌取りをしないといけないなと思いつつ、ダスクの紹介に移ろうとすれば待ってましたと言わんばかりに椿が満面の笑みで見つめてくる。
その視線に気付いたダスクが尾を丸めて足に挟んでいるので不安になっている事を察し、優しく腹や頭を撫でてやりながら取り合えずは紹介する。
「この子はダスク。昨日産まれたばかりでな。あんまり人に慣れてないからお触りは禁止だ」
「なんでよ!触らせてよ、ライア!ペットや使い魔で狼を連れてる搭乗者は貴重なのよ!?」
『勢いが怖いですっ…!ぼく、食べられたりしませんよね、パパ殿!?』
「あー、取って食いはしないだろうが…。撫で回した後に腹に顔を埋められる可能性は…あるな」
『や、やです!ぼくのお腹はパパ殿に一番最初に差し出すと決めてるんです!今の内に僕の初めて貰ってください!』
「待て、その言い方は色々と危ないというかなんというかだな…?」
『ぶふぉっ!…ふ、ふふ…すみません…。ライア様は、愛されておりますね…』
俺とマオ達とのやり取りを静かに表情を崩さず聞いていたカールだったが、堪えられなくなり吹き出すように笑えば、いきなりの事に驚いたリヒトが様子を伺うも黒鉄からは手を離していない。
このやり取りを聞いていた他のペット達もお腹いっぱいですという顔をしており、俺は少しいたたまれない気持ちになったのだった。
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