20-付き添い争奪戦
朝から盛大にやらかしてくれたルフは現在、ぶち抜いてしまった壁の補修作業をしている。
念の為、箱庭から綠を呼んで一緒にこの状況を確認してもらった際にルフなら問題なく直せるといってくれた。
更には崩してしまった壁の材料と、俺の持っている魔石を幾つか使用して今よりも頑丈で防音性のある壁を作れるとまで教えてくれる。
『フォッフォッフォ、しかし朝から災難じゃったのぅ。ワシも探鉱熊の習性をすっかり伝えるのを忘れとったわい』
『笑い事やないでじっちゃん!めっちゃビックリしたんやからな!』
『流石に僕も壁はぶち破れないなぁ…』
『ぶち破れたら大惨事なんだぞ…ちっちゃい兄者』
『某や姉上のやらかしがまだ可愛く見えるでござるな…』
『何言ってますの。黒兄様と白姉様のやらかしはこんなもんじゃすまないですの。下手すれば死人が出てもおかしくないので変なこと言わないで欲しいですの』
ぶち抜かれた壁を見ながら話をしているマオ達を見つつ、ルフの傍で監督のように頭の上に乗って作業を見ているセラフィが楽しそうである。
綠も壁を直すまではと監督のつもりで見守ってくれるらしいので任せていれば、時折セラフィに声を掛けると緑色の光を纏いながら壁の石に触れているのが見える。
浄化をする際に纏っている光をなぜ使用しているのか不思議に思いつつ、今だと言わんばかりに俺に抱っこを要求するダスクを腕に抱えながらメイド達に指示をしているポスカに声を掛ける。
「すまない、ポスカ。ルフがとんでもない事を…」
「いえいえ!お気になさらないでください!何時かは改装しようと思っていたので丁度いいくらいですよ。ライアさんには怪我は無いですか?」
「俺は大丈夫だ。ノーティスさんに連日迷惑を掛けて申し訳ないと伝えておいてくれ」
見事にぶち抜かれた壁を見てノーティスが涙をながしながら髪の毛までハラハラと抜け落ちていく姿を見てしまった手前、流石に申し訳なさと育毛剤をプレゼントしたい気持ちが募る。
薬剤を集めて作ってみようかと思いつつ、腕の中にいるダスクがもぞもぞと動いて俺の方を向くと前足で時計を指し示す。
促されるままに時計へと視線をやれば、朝食を食べて向かわなければ姫を待たせかねない時間であることに気付き冷や汗が背中を伝う。
『パパ殿。幼馴染に会うの間に合います?』
「ここから向かうことを考えると…朝飯を食べてる時間がなさそうだな…」
「何かお約束でもあるんですか、ライアさん」
「ああ。今日の昼に幼馴染と会う約束があってな。アイツらもペット達を連れてくるから全員連れていくのはどうかと思ってもいるんだ」
「連れていく数が増えると移動も大変ですからね。それでしたらお預かりしますよ?メイド達も隙あらば皆と遊びたそうにしてますし」
「有難いな。でも、マオ達がどう言うかだな…」
『皆ー!聞いてたでしょー!パパとのお出かけ枠を賭けた勝負するよー!』
俺とポスカの話を聞いていたマオ達がやる気満々で勝負の内容をどうするか話し合っている。
『ふむ、皆が公平に勝負を出来るようにワシからお題を出してやろう。なぁに、簡単じゃて。ルフが着ておる炭鉱熊専用の異次元ベストの中に採掘道具が幾つ入っているかを当てるゲームじゃ』
『それだったら僕達には平等な条件だねー!』
『よっしゃ!ピタリ賞狙ったるで!』
『ニアピンでも誇れそうなんだぞ!』
『パパ殿に付き添うのはぼくです!』
『一番下の弟には絶対に負けないでござるよ!』
『ママ、ボクはルフさんのお手伝いするからココに残るね』
『セラ、いいんですの?とと様とのスキンシップタイムを持てるチャンスですのに』
『うん、今の内にポスカに借りを作るチャンスだから』
セラフィが争奪戦に参加しない意向を示すと、驚いたように目を見張るヴィオラが声を掛ければ素直に頷き返し何か他に意図があるのかほくそ笑んでいる気がする。
綠がセラフィを見て小さく何度か頷くと、他の面々を見て予想を募る。
持っている道具の数から一番近い数を予想出来た者から付き添い権が割り振られ、先着で三名を選ぶらしい。
『さて、ライア殿に手伝ってもらいたいんじゃが参加者の予想をメモに纏めてくれるかの?』
「分かった。勝負が終わったら直ぐに食事を食べに行くからな?」
『はーい!じゃあ僕はねー。これくらいかなー?』
『次はわてやな。んー、よう分からんけどこれぐらいにしておこか』
『某はもう決まっているでござるよ!ズバリ、この数でござる!』
『黒兄様…盛大に外してたら面白そうですの!私はこれくらいにしておきますの』
『オレ様はこれぐらいにしておくんだぞ!』
『パパ殿!ぼくはこの数でお願いします!』
『よし、出揃ったようじゃの。ほれ、ルフ…お前さんの採掘道具を見せてやるんじゃ』
『了解だべよ』
それぞれの予想した数をメモに書いて綠に渡せば内容を確認してからルフへ視線を向けると、浴室の壁を直し終えた所だったらしく額に付いた汗を拭いながらベストの中から採掘用の道具を床に並べていく。
持っていたツルハシを始めに、ハンマー、シャベル、スコップ、箒、ルーペなど諸々合わせて十二種類が出て来た。
熟練度が上がると更に道具が増えるらしいので、採掘場や伐採の出来る森林に進んで出向くことも考える。
並べられた道具を見て予想をしたマオ達がそれぞれ喜んだり悔しがったりと様々な反応を示す中、朝食を食べに食堂に向かうのだった。
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