90-新機能
食事を終えれば、刺すような視線に射抜かれ冷や汗が背中を伝う。
作った料理を綺麗に平らげているにもかかわらず、それとこれとは別の問題だと言わんばかりの圧を感じ思わず目を逸らしてしまった。
「今回、実装されたパーティー集合機能は中々に使えますね…。一日に一回なので使い所を見誤ったら大変ですけど」
掲示板を確認していた際に、何度もお問い合わせをした事でやっと取り入れて貰えた機能らしい。
新しく始めた友人を迎えに行くのにテラベルタまで徒歩か馬車で向かわなければならず、大変だと思う人々が団結したそうだ。
「まぁ、この話は置いておきましょう。ライア…なんでこう、なかなか人が遭遇しないような事件や出来事に巻き込まれてるんですか」
「いや、俺も想定してなかったし、そもそも裏ボスの出現条件を満たすなんて思わなくて…」
「そこは百歩譲って良しとしましょう…。どうやってライアのレベルで裏ボスを倒したかが重要なんですよ」
「うーん…俺じゃなくてマオ達が倒したようなもんでな…」
『ふぁ!?いきなりなんですの?あ、撫でたいだけですの?なら構わないんですの』
苦笑混じりに俺が返せば、神威の深い溜息と共に傍に居たヴィオラを抱き上げ優しく撫で始める。
苛立ちと言うよりも何をやらかしているんだという神威の表情にいたたまれなくなる。
ふと、ヴィオラを抱き上げた神威をアイオーンが睨むように見つめていた。
そう言えばマオ達がアイちゃんと呼んでいたなと思い出せば、見た目では分からないがきっと女の子なのだろう。
「はぁ…ライア。使い魔やペット達だけでボスを倒す事は、本来不可能と言っても過言では無いんですよ」
「そう、なのか?」
「えぇ。産まれたばかりのペットや使い魔は俺達よりも本来ステータスが低くて多少レベルを上げてからじゃないと戦闘なんてさせられないんです。普通は」
「白銀や黒鉄は普通に魔法で倒してたぞ?ウィンも、産まれたばかりだったがここの森に住んでいる獣達を難なく倒してたし」
『ふふん!わてらはむっちゃ強いから当たり前や!』
『姉上は肉壁寄りでござるがな』
『速度ならここの皆に負けないんだぞぉ!』
『僕だって強いんだからなぁ!見よ!この力こぶー!』
『マオ兄ちゃん、細腕にしか見えないよ…』
白銀がドヤ顔で告げれば、黒鉄が呆れたようにツッコミを入れると頭を尾で叩かれている。
ウィンが得意げに告げると、マオが地団駄を踏んだ後にマッスルポーズをするのだが、溜息混じりにセラフィが首を横に振っている。
そもそも俺のステータスを補うかのように産まれてきているなとは思うものの、その強さに関しては他のペットや使い魔を知らないのでなんとも言えない所なのだ。
テラベルタに居た頃も俺のようにペットを連れ歩いている人は居なかったし。
「…普通の人のペットは孵化に一週間から二週間掛かるんです。でも、ライアの場合はもしかしてもっと早い周期で産まれてませんか?」
「そう言われれば…?マオと白銀、黒鉄が産まれたのは一週間位だったがヴィオラ達は受け取ってからそんなに経たない内に産まれてたな」
『確かに?僕達よりヴィオやセラ、ウィンは産まれるの早かったね?』
『ママ、優しいオーラを持ってるから早く会いたくて頑張った』
『とと様の元に早く行きたく祈ってたら早くなりましたの』
『オレ様は皆が楽しそうだから居てもたってもいられなくなったんだぞ!』
「ウィンが産まれた時はな…。流石に驚いたよ…」
『しれっと遊びに混ざってたでござるしな』
『わて、気付いたけど普通に遊んでしもたわ』
アルマに事前にタマゴが早く孵る条件があったりすると聞いていたが、知らずに俺はそれをクリアしていたのかもしれない。
と言っても、今でも賑やかなのでこれ以上増えたらどうなるのかと一抹の不安はあるが。
主に食費の。
「その時点でかなりのイレギュラーなんですよ…。この時点で六匹居るなんて同じ日に纏めてタマゴを購入してないとまず無理ですし、それでは育成も間に合わないはずです」
「そうなのか…。同じように搭乗者でペットを連れている人を見た事がないからな」
「多分、秘密の店が公開されたのが翌日だった事もありますけど…初心者が買うにはハードルが高いですからね…」
「俺はアルマからのお礼として最初タマゴを貰ったからな…。後は奇跡的に金を使わずに過ごせてたし」
こう考えると俺も結構運がいい方なのかもしれないと思ったが、他の人から見れば嫉妬の対象になるかと思い立つ。
少し掲示板などを見てちゃんと他の搭乗者の事も調べないといけないのかもしれない。
何から何まで想定外だと言わんばかりの神威の表情に申し訳なさを覚えつつ、継いだ言葉に目を見張ることになる。
「今回の裏ボス攻略は、先を行っている攻略組が本格的にライアを探そうとしています。今回の報酬に何を貰ったかは分かりませんが、絶対に市場に流さないようにしてください」
「…わかった。と言っても、報酬まだ確認してないんだけどな」
「間違って売らないように仕分けましょう、ここで。俺も手伝いますから」
ヴィオラを膝の上から降ろすと、すかさずアイオーンが膝の上に乗る。
取り敢えず食器などを食洗機に突っ込んでからマオの収拾物も含めてテーブルの上に並べていくのだった。
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