新作ゲームでまったりソロ活始めました~気付いたら有名になってた、なんで?~

神喰 羅刹

序章

つまらない日常

スマホのアラームが鳴り響く音で目を覚ます。

寝起きのぼやける視界の中で何度か瞬きをしてからベッドの上で大きく伸びをする。

カーテンの隙間から入り込む陽射しの眩しさに僅かに眉間にシワを寄せながらベッドから身体を起こす。

スマホの時計を見ればAM6:00と表示されているので、仕事に向かう支度をするべくベッドから降りる。

欠伸を噛み殺しながら寝癖の付いた頭を掻きつつ洗面所に向かう。


「つまんねぇなぁ…」


洗面所に辿り着き鏡に映る自分の顔を見ながら、誰の耳にも届かない独り言を呟く俺の名前は東雲しののめ 雷亜らいあ

よくあるキラキラネームのような当て字で命名された28歳の男である。

俺自身はこの名前に不満もなければ健康体に産んでくれた親には感謝しかない。


「今日で最後の仕事か…まぁ、いつも通りやりますかね」


顔を洗い歯を磨きつつ猫っ毛で跳ねやすい髪を、ワックスを使って整えてから度の入っていないレンズが厚めの眼鏡を掛ける。

親と数少ない友人から俺は必ず掛けろと言われたのだが、眼鏡をしていないと見れない顔なのかとたまに思う。

そんな雑念を払いつつクローゼットへ向かい出社用のスーツに身を包み鞄を持つ。

朝食は会社の近くのコンビニで買えばいいので着ていたものを洗濯機に突っ込み、帰宅の時間を計算してタイマーをする。


「荷物は確か夕方に届くんだったか…。まぁ、半日分残ってた有給使えば楽勝だろ」


カレンダーを確認し業務が比較的早く終われる可能性を感じるが実際は何が起こるか分からないのが現実、と言いたい所だが俺が勤務している部署は日によって差が激しいタイプの場所だ。

週の中日ともなれば尚の事である。

今日終わらせておかなければいけない案件と引き継ぎが必要なものを思い浮かべながら玄関へ向かい革靴に足を入れる。

忘れ物がないかチェックをしてから玄関のドアノブを捻り外へ出ると鞄から鍵を取り出す。

閉じた扉の鍵を掛けしっかりと施錠されているか確認をしてから会社へと足を運んでいく。

まだ少しばかり肌寒さが残るからか息を吐くと少し白さが見える。


『明日よりリリースとなりますArcaアルカですが、全世界が注目しておりまして…なんと接続用の筐体購入者が1億人を突破しているらしく…』


駅に差し掛かり信号で待っていると大音量でニュースを見ている車が車道で同じように信号が変わるのを待つ。

耳に入ってくる内容を聞いていると案外早く信号は変わり車と同時に俺も動き出す。

VRMMOがそれなりに世界に存在する中で先程耳に入ったArcaに関しては前代未聞の注目が集まっている。

その謳い文句は「現実リアルとは別の世界へ」だ。

突然VRMMO市場に出てきた会社だが、宣伝用に撮影されたゲーム内の映像が、どれもリアルで他社とは比べ物にならないリアリティがあった。

故に、これまでにリリースされたVRMMOにドハマりしているプレイヤー達の注目を一気に集めたようなものである。


「俺も買っちまったんだよなぁ…来月以降どうすっか…」


かくいう俺もこのゲームをプレイする為に筐体を買った1人である。

ゲームの通貨を現実の金に変換することの出来るシステムが搭載されている為、ある一定の等級以上のアイテムなどを手に入れゲーム内で捌けば、ちゃんと現実の生活を普通に送ることが可能になるのだ。

謳い文句としている言葉に対して少し首を傾げる事になるが、逆に別の世界を楽しみながら片手間に不要な物を売りながら楽しく生活ができると思えば、そこまで気にならなくなる。

そのフレーズが嘘だった時に泣く事にはなるのだが、今の仕事を辞めてやり込んでみたいと思い衝動のまま動いた者たちが過半数を占めるだろう。


「ま、騙されたとしても生活出来ればいいし、まったりやれたら尚いいってやつだ。ペットとかも飼えたら楽しそうだよな」


電車を乗り継ぎ会社に辿り着くと、再度独り言を零してから頬を叩いて気合を入れてから出社する。

この時の俺は明日、届いたArcaをプレイする事を考えやる気に満ち溢れていたと思う。


まさか…他にもArcaをキッカケに辞める社員が沢山居て、半休を使うタイミングも無くフルで働いて帰る事になったのだけは誤算だった。

休憩も取らずに引き継ぎが必要な物から、確認が終わっている物などを全て別々にファイリングをして上司に提出した。

それでも、なんとか自分が任されていた物を処理し終えたので数時間早く帰る事はできた。

家路を走りながらArcaの宅配業者が来る前に帰宅出来て安心するも、全てを終えてソファーに座りメガネを外すとうつらうつらとした後に意識を手放すのだった。

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