45.保護色ってよくみると分かるらしいですよ
「カンペー、なにか見える?」
「結局俺頼りかよっ⁉」
「そりゃあ『選定の魔眼レンズ』の機能が十分に生きるタイミングでしょ?」
「そうですよカンペーさん、貴方だけが頼りなんですから」
いきなり他力本願かこの探検隊は……!
考えてみれば、騎士団が探しても見つからない母バジリスク(母バジ)をどうやって見つけて対処すんだと思えば魔眼レンズの出番である。
「カ、カンペーさんならきっと見つけられましゅっ!」
鼻息荒めのソニアにも応援される始末。魔眼持ちに魔眼レンズ持ちまでいるのに、全員戦闘用かそれに近い性能しかないってどうなのよ……
騎士、弓手、医者兼魔法使い、魔眼持ちの子供……そして眼科の検査員である。あ、あと魔物だな。
パンピーAじゃねぇか俺。
「そうは言ってもなぁ」
「もぅ、しょうがないなぁカンペー。無事見つけられたら金貨1枚あ」
「うっし、まずは大通りじゃなくて路地を探すか?」
金はいくらあってもいい。
ぜひ選定の魔眼レンズには頑張っていただきたい。
「現金だなぁ」
「言うほどお金にがめつい印象はないんですけどね」
「カンペーさんってどうしてお金欲しいんですか?」
「少子高齢化、増える税金、上がらない給料……考えれば考えるほど金が欲しい理由なんてあるもんよォ……」
言ってて悲しくなってくるな……
異世界まで来て社会情勢の不安を語りたくねぇー!
「カンペー、元気出して」
「ネルちゃんは優しいねぇ~」
子供の励ましに涙が出そうだ。がんばれ社会人。
微笑ましいやり取りのはずだが、我らが雇用主はそんなことはどうでも良くて。
「まぁ嘆くのはいいから、さっさと手がかり見つけてよ」
「お前ぇ俺の扱いだいぶ雑になったよな…………!」
やるけども。
とはいえ手がかりなしにどう探せというのか。魔眼レンズも反応はないし。
「なんかこう、母バジの特徴とかねぇの?」
「おっきい」
「フワフワしてんなぁ」
「あとかくれんぼが上手い」
なるほど分からん。
幼体のピーがヘビとトカゲのミックスした感じなんだから、推測するに母バジはこれが大きくなったバージョン…………ハリウッドゴ〇ラ? 街中で大怪獣バトルは勘弁だぞ。
「水道管にでも隠れてんのか?」
「カンペー……まだ井戸使ってるんだよ?」
「アイナ先生から教えてもらって、予定は組んでますけどね。今後の衛生面を考えて」
さらっと技術面で凄い事を言ってる気がするが……今はツッコまないでおこう。
「かくれんぼ……もしかして保護色かも?」
「それってタコみてぇなやつ?」
「さすがに海の生物とはちょっと違うと思うけどね」
「街ン中で保護色なんてすぐ見つかりそうだけどなぁ」
「でも実際見つけられてませんからね……」
「ネル、ピーが匂いで母親見つけたりはできねぇの?」
「むり」
即答である。
確かに、こうして会話しながら歩いているものの、街の中は至って平和だ。いつもの賑やかな大通りでいつも通り商売繁盛。
「魔眼レンズも反応しないし、こりゃ保護色をよーく見つめないと見つけられないな」
「変だなぁ、今までの働きを考えれば導いてくれると思うんだけど」
「魔眼も完璧じゃないんだろ、ハハハ」
大通りを外れる。歩き回ったせいか、少し疲れて壁にもたれる。しかし石壁がやさしく俺を受け止めると、一緒にいた面子はやや退く。
「か、カンペーしゃん……!」
「な、なにに寄りかかってるんですか……⁈」
「なにって、壁だろ」
城郭都市外壁、ざらっとした石造りの壁でちょっと温かみがあって……
間が悪いのかタイミングがいいというか、両目の『選定の魔眼レンズ』は、ようやく金の糸を伸ばす。
「ピーのお母さん!」
保護色は解かれ、やや緑がかった爬虫類が姿を表す。二つの瞳は子供のピーよりも強く、琥珀色に輝いている。
「下がってカンペー、大手柄だ!」
「わかるかこんなもんッ!」
思わぬところでご挨拶だ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます