学校欠席後の放任と容認 の巻②
◆◆夫「ネグレクトだと思う」発言◆◆
一週間子どもたちが家に居た。ホットカーペットの上に集まり、パソコン、switch、テレビ、すべてが朝から晩まで煌々と光り、ガチャガチャと音を発していた。
YouTube、ゲーム、Amazonプライムの稼働時間は一日に12時間を超えた。
夫が仕事から帰宅したのは19時半だった。
子どもたちはメディアから目を逸らさず「おかえり~」と言葉だけ夫に投げていた。夫の深いため息が、夕飯を温めながら聞こえる。
「食事の時は、メディアは消そう」という約束は、最近夫が提案したものだった。長男たこは、「良いよ」と了承した。長女ぴこは、「嫌だけど仕方ないね」と納得していた。次女のちぃは、「やだぁ!!」とゴネていた。
その日はちぃが、アマプラに夢中で食卓になかなかつくことが出来なかった。
「ちぃ、お腹すいてないから、ご飯いらない。テレビ見る!」と一歩も譲らない。
今まで、親が強制的にOFFのボタンを有無を言わさず押していたのだが、母には伝えたい思いがあった。
「家族がそろって食事をする時間を大切にしたい。みんなで楽しかったこととか、今日一日の事とか、お話しながら食べようよ。」と。
「ごはんの味をしっかり感じて、ゆっくり食べると、身体に良いんだって。何かをしながら食べるより、食べることに気持ちを向けると、食べすぎとか、食べなすぎとか、分かるようになるんだって。」と。
ちぃは、「はいはい、ちぃは、楽しいこと何もなかったです。お腹すいてないので、ご飯はいりません!」とテレビを消さない。
「ちぃ!!」と母の声が大きくなるのと同時に、夫が「いい加減にしなさい!」と大きな声を出した。
両親の怒りに触れて、ちぃは逃げ場がなくなってしまった。「消せばいいんでしょ!もういい!!」と怒って、寝室の扉を力を込めて閉めて、閉じこもって泣いてしまった。
家族が自分のお茶碗のみを見つめ無言で食べる、暗い夕食だった。
◇ ◇ ◇ ◇
食後、それぞれが晴れない気持ちで空を見つめていた。会話もない、何かをやるやる気もない、ちぃは泣いている。そんな雰囲気を打破しようとしたのだと思う。たこが、「バラエティー見てもいい?」と両親に聞いてきた。
母は、少し静かな空間で、気持ちの整理をしたかった。
「夕飯の後は、ちょっと本読んだり、お風呂入ったり、ゆっくりしたいかな。」とたこに伝えると、たこはつまらなそうな顔をし、ため息をついた。
すると、夫が、言いにくいことを言います。という重々しいトーンで話し出した。
「おれ、これ本当に良くないと思う。」夫が頭を抱えている。
「ゲームとYouTubeで1日過ごしてるんでしょ?帰ってきて、この状況見ればわかるよ。おれの仕事中、ずっとテレビやパソコン、なにかしらついてるよね。子どもたち、ずーーーっとYouTube漬けでしょ?」
そして言った。
「これ、おれ、ネグレクトだと思う。」
母は、ゆっくり目を閉じて、深呼吸をした。けれど、みるみる大きくなる感情を抑えることが出来なかった。
「そうだね、その通り。私はネグレクトをしています!!本当は外に出ればいいのに!本でも読めばいいのに!いっぱいいっぱい思うことがある!!けど、何も無理やり子どもを引っ張ってやらすことが出来ない!!私は、子どもたちに、自分で気が付いてもらいたいと思ってる!!」
夫は言った。
「この子たちに自分で気が付けって言うのは、無理だよ。幼すぎる。何も分かってないよ。何も知らないよ。大人が手を貸さなきゃ。導かなきゃ。気が付いたときには手遅れになってる。」
母は、「私にどうしろって言うの?私は声かけてるよ。『散歩にいこう』とか、『買い物行くけど一緒に来る?』とか、『洗濯物手伝って』って。でも無理なの。子どもたち誰も動かない。このままじゃダメなのにって思うけど、無理やりに3人を動かすことが出来ない。戦う気力が私にはない。」
夫は「何もしてないおれが、言えることじゃなかった。ごめん。」と母から目をそらした。
リビングで声を張り上げて、両親が喧嘩をしている。
こんなやりとりの中に居ても、たこはゴロンと寝転がって居たり、ぴことちぃは遊びの相談をしたりしている。
母は、この状況に体の芯から力が抜けてしまう。子どもの事を話しているのに、我関せずの子どもたちだ。そういうマイペースな子を1日中相手にしているのは、母だった。
母は、夫に言った。
「最近、ご飯は頑張って作ってる。私にできることはそれだけだ。」
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