不登校児の親と薬 の巻②

◆◆夫の大病・母の病欠◆◆


親も子も、一息つける夏休みに入る。


夫は、1学期、子どもの行き渋りに付き合い、会社をかなり遅刻していた。更には、学校リタイアのお迎え要請にも、夫が仕事を抜け出して対応していた。

夏休みに入り、夫は登校・お迎えの縛りから解放され、仕事に邁進した。


しかし、夏休みのさなか。夫が脳出血を起こした。


その日は、子どもの不登校の原因を探るための、発達相談に家族で来ていた。

「なんか、フラフラする。」と体力自慢の夫がベンチに腰をおろす。

「熱中症にでもなったかな?」と母はポカリを買いに走る。ポカリを手渡し飲んだ夫の唇の左側から液体がこぼれていく。

「え??大丈夫?こぼしてるよ。」言われて気が付いた夫に、危機感を覚えた。「ねぇ?脳じゃない??」


夫はそのまま入院となった。

医師から告げられた原因は、「過労とストレス」

そんなもん、ずっとそうじゃ!夫も私も、泣きそうな気持を押さえて、「ほんとだね。」と笑った。


◇ ◇ ◇ ◇


2学期になった。夫は無事に退院していた。

夏休みの良い習慣を残そう!と、9月も家族でラジオ体操をしていた。

嫌々起きてくる子どもたちに、「ラジオ体操しないやつが一人でも居たら、連帯責任で1日メディア禁止!」と強制執行していた。


9月も終わるころ。

ラジオ体操も6時半には行うことが出来ず、YouTubeで7時半ごろ行っていた。結構みんな気力の限界で、ラジオ体操で振り上げる腕も、低い位置でなんとなくこなしていた。

ラジオ体操第一の終盤「♪開いて閉じと閉じて123♪123♪」のジャンプして腕と足を開閉していた時。


母は、猛烈な吐き気に襲われた。動くことが出来ない。

ジャンプができずに座り込んでしまった。何だ?何が起きた?母は混乱したが、仕事に行けないことは明白だった。そこから2日間休みをもらった。


3日目の朝、やはり具合が悪い。吐き気と頭痛がひどい。寝ていても治らない。母は病院へ行くことにした。


そこでの医師の判断は、「病欠を取った方が良いね。」というものだった。


母は、パニックになった。母は、仕事に行っている時間だけが、唯一『不登校の子どもの親』という呪縛から解き放たれた、子どもの事を考えない時間だった。母にはそれが必要だった。


母は「仕事に行ける薬をください!!」と詰め寄った。

しかし、医師は言った。

「あなたはストレスで壊れる寸前だ。仕事にも必ずストレスはあるでしょう。子育ては休むことが出来ないけれど、仕事には休める制度があります。少し余裕を作りましょう。」


医師は更に続けた。

「このまま頑張ってしまったら、行きつく先は、“鬱”もしくは“胃潰瘍”もしくは“心筋梗塞”です。そうなってしまっては、治すのに時間もかかります。今、休むことをオススメします。」


『睡眠薬』と、『頭痛薬』。緊張でガチガチになった身体を緩める『筋弛緩薬』、グルんグルん巡る思考を落ち着かせる『抗不安剤』を処方された。


母は、病欠申請を職場に提出した。

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