不登校児の親と先生の言葉 の巻④
◆◆校長先生の思い◆◆
校長先生は、不登校の問題をとても親身に聞いてくださった。
今まで私たちの学校にはなかった、『別室登校』というシステムも、職員会議室を開放し、あの手この手で作ってくれた。
授業時間に教室が辛くなったら、担任の許可の元、図書室へのエスケープも許可してくれた。
校長先生は、校舎に入れないぴこと、教室に入れないもう一人の男の子を連れて、校庭を散歩してくれたこともあった。
「私、この学校で一番ヒマですから。」と笑顔でぴこを引き受けてくれた。
校長先生は、ぴこと男の子と3人で、校庭の植物を観察し、図書室で名前を調べたそうだ。
「(校長自身が)楽しかったんですよ。」と後日母に話してくれた。
校長先生の思いは、ずっと変わらない。
『学校の中で、子どもたちを救いたい。』というものだった。
校長先生は、近隣の児童館や、学童職員、放課後の校庭開放スタッフ(地域)と会議をする機会を作り、情報共有と連携を図った。
そんな取り組みを、学校側が仕切ってやることは、私の知る限り珍しかった。
学童職員がアポをとり、学校に情報をもらいに行ったり(それでも個人情報がどうのこうの言って何も得られない事も多いと聞く。)地域からの要望を、その場限りの挨拶で受け流す、そんな学校が多かった。
校長先生は、我が家にもとてもお心を寄せて下さり、心配していた。どうしたら、3兄妹が学校に来られるようになるか。どう環境を整えることが子どもの為になるか、親と一緒に真剣に考えてくれた。
しかし、我が子たちは学校に行き渋った。
その一つには、情報共有の漏れもあった。校長の思いや、我が子の状況を、担任以外の先生が知らない。良かれと思って子どもにかけた言葉が、子どもを大きく傷つける場合も少なくなかった。
何も知らない先生が、
「わぁ!久しぶり!教室行くの?みんな待ってたよ!」
なんて声をかけようものなら、子どもの顔はみるみる曇る。
(教室行かなくて良いって言ったくせに。うそつき。学校に挨拶だけって約束したのに。やっぱり連れていかれるんだ。怖いって言ってるのに。ママが“大丈夫”って言ったくせに。)
怒ったような、泣きたいような、そんなギラついた目で、母が睨まれていた。
子どもたちは学校に行けなくなった。
それでも社会との交流は持ってほしいという親の強い思いがあった。近隣児童館に一旦子どもを特例で預けて、遊んでほぐれた所で学校に誘導出来ないだろうか、と。
児童館館長は、それなら行けるかもしれないですね、と同意してくれたが、校長先生がストップをかけた。
「児童館は子どもが遊ぶところなんです。きっと、学校より児童館が良い、となってしまいます。学校に益々足が運ばなくなってしまうと思います。学校の中で、解決したいのです。学校に、子どもの安心できる場を、私は作りたいのです。」
と。気持ちはありがたい。けど、そもそもの登校が出来ない。校長先生の温かい思いを受けているのに、頑なに学校に行かないという子どもたち。
母は、校長先生のお気持ちと、それを無視し続けている我が子の態度に板挟みになり、とても苦しかった。
両親は、子どもが徒歩で通える児童館ではなく、車で隣の市まで行き、その児童館に子どもを下ろし、少し仕事をして迎えに行ったこともあった。なんか、変なの。と思いながら。
◇ ◇ ◇ ◇
子どもがしばらく学校へ行っていない。
親も冷静になって、思う。校長先生の『学校の中に居場所を!』という一貫性は、校長と言う立場も含め、ありがたい考え方だな、と。
もし、校長先生があの時、「良いですよ。児童館行ってください。」と言っていたら、きっと本当に、“帰る場所”がなくなっていたと思う。
「学校に来なくても大丈夫なら、良かったですね」と言われていたら、小学校を親自身が諦めていただろう。
校長先生が、いつも『学校に戻っておいで。』というスタンスでいて下さっているからこそ、今も親は葛藤しているし、子どもも悩んでるが、それで良い。
校長と言う立場の人が、自分の学校に自信を持って子どもを迎えられないなら、そんな学校は誰にとっても要らないものになってしまう。
校長先生は、“学校”というものにすごく思いがあるし、“教育”や、“子ども”にすごく思いがある。あぁ、この校長先生で良かったな、と思う。
◆◆自分への教訓◆◆
◎励ましに傷つくこともあるけど、今キツイって言葉に“思い”を受けとることもある。
◎人と関わっているからこそ、“葛藤”ってある、と思えば、“葛藤”も悪くないかも。
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