主人公を追放する無能勇者に転生したけど、パーティーメンバーに主人公みたいなやつしかいない
カラスバ
第1話 誰が主人公か分からない
大変申し訳ない話ではあるが、俺はこの世界の事を何一つとして知らないのだ。
あの、俺をこの世界に転生させた女神曰く、ここはWEB小説「無能勇者に追放されて人間に愛想を尽かした私は魔王軍の四天王最強になる」という物語の世界らしい。
物語のタイトル的に追放ものの物語なのは間違いなく、そして主人公はどうやら人間に対してあまり良い感情を抱いていないようだ。
そしてそんな主人公はどうやら勇者から追放された事を転機として魔王軍に寝返ったと思われる。
恐らく、物語の流れ的にそれから人間相手に無双するのだろう。
WEB小説に詳しくない俺でもそれくらいは分かる。
さて、ここで問題点は二つ。
厳密には三つだが、とりあえず二つとしておこう。
それは俺がその主人公を追放する勇者であるという事。
つまり俺の判断一つで主人公はそのまま人間を蹂躙することになるという事である。
責任重大である。
そして、もう一つの問題。
それは……俺はその主人公の事を何一つとして知らないという事だ。
タイトル的に女性なのは間違いない。
そして「実は最強でした」系の物語なので主人公は強力な力を持っているけど、それは一見分かりにくいか、あるいはまだ覚醒していない可能性がある。
……ただ、悲しい事にそれらの観点でも俺はいまだにその主人公の特定には至っていない。
何故なら、今のところパーティーメンバーは全員女性であり、そして彼女らの能力は覚醒の余地がある、あるいは発揮されている事が分かりにくいものであるからだ。
まず、一人。
幼馴染のセシリア。
彼女は百発百中の弓兵であり、今のところ外したところを見た事がない。
攻撃威力も高めであるが、彼女の活躍はかなり地味だ。
もしかしたらそれが原因で本来の俺は彼女を追放したのかもしれない。
一人。
魔女のアンバー。
彼女は老齢でありかつ不死の魔女であり、若々しい見た目をしている。
多彩な魔法を扱えるが、他人からは老害と言われる事が多々あるらしい。
それを真に受けて、本来の俺は彼女を……
そして、もう一人。
斥候のルクス。
彼女は基本的に戦闘には参加せず、見回りや情報収集、会計などもしている。
俺としては彼女に何度も助けられている訳だが、しかしながらこれもまた分かりにくい活躍なのは否めない。
最悪、いなくなって初めてありがたさがわかるタイプだろう。
どうしよう、どいつもこいつも主人公っぽい。
そして何より、その主人公は俺が追放した時点で人間に対して反旗を翻しているので、という事は既に人間サイドに対して幾らかの不満を抱いている可能性が高い。
だから俺は精一杯彼女らに対して尽くして、そうしつつ主人公の特定を急いでいる。
別に主人公じゃなければどうでも良いという訳ではないが、精神安定の為に誰が爆弾なのかは知っておきたいのだ。
しかし……
「ねえ、アーサー? 私、貴方がいなければ世界がどうなっても構わないの」
「アーサー、ウチはお前さえいれば全てどうでも良いのじゃ」
「あはは……だいじょぶ、あたしは貴方さえいればだいじょぶ。それだけで報われるの」
全く、誰が主人公だか全く見当がつかねえぜ!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます