浮島沼のばんばあ

せりもも

プロローグ


 「浮島沼」をご存知だろうか。

 静岡県富士市から沼津市にかけての海沿いの地域を、往時は「浮島沼」と総称した。昔、この辺りは大変な湿地帯で、田植えの際は胸まで水に浸かることもあった。


 今では治水工事が奏功し、ほぼ普通の陸地となっている。


 2010年には自然公園が開園し、植物や野草、水生生物などが観察できる。中にはレッドリストに載っているものもあり、巡らされた木道のみ、立ち入りを許されている。

 物語は、この浮島ヶ原自然公園が舞台となる。



 母が亡くなり、母の実家である市内の祖父母宅に預けられた陽向ひなた。新しい環境に馴染めないでいる。


 夏休みに入ると、東京から会いに来た父が、陽向を浮島沼の自然公園に連れてきてくれた。久しぶりで会った父だが、母が生きていた頃と違って、二人の間はどこかぎこちない。

 水場でザリガニ釣りを始めたが、すぐに餌のスルメがなくなり、父は売店まで買いに行った。一人になった陽向はつまらなくなり、湿地帯の木道を奥へ向かって歩きはじめる。


 実はかつての浮島沼には、悲しくも恐ろしい伝説が伝わっていた。

 ……。







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