①-2 相談者Aさんの話

これを読んでいるあなたと同じように私は、とある世界から大きな光に覆われて魔法のあるファンタジーな世界に訪れた。

この世界では科学は全く通用せず、私は途方に暮れていたが昔から自信のあった持ち前の頭脳を使うことで生きながらえていた。

生き方としては、不安なことの相談などいわゆる何でも屋みたいなものである。

仕事の内容は、さまざまな魔法の使い方や生き方など多彩な内容ではあったがやはり魔法の相談が大半を占めていた。

何でも屋で相談を受けていくことで魔法という力の仕組みを論理的に考えることができ、それを言語化することで解決の糸口としていた。段々と私の活動は影響力を持っていき、今では多くの予約を持つほどになっている。

そんな中、とある魔法の相談が一時期、流行ったのだ。それが、「人を幸せにする魔法」である。

すぐにでもこの魔法の結論を話したいのだが、これを読んでいるあなたには期待しているので私が1番印象に残った相談者Aさんの話からしていきたい。


「人を幸せにする魔法が流行ってるんです」

Aさんが私に対して少し不安げな声でそう相談してきた。この手の魔法は、この世界ではオカルト的な魔法と言われている。なぜなら、無いものからあるものを生み出すのが魔法であるため、幸せをないと定義することが困難なためが存在しない魔法と言われているからである。


「そうなんですね。相談しにきたってことはその魔法が本当に効果があるのか聞きたいってことですかね?」


「はい。幸せになりたいというより今のこのつらい状況を変えたいと思っています。魔法に効力があるならすぐにでもこの魔法ができると言っている術師の方に相談したいと思っています。」


「わかりました。ついでに、あまり聞かれたくなかったら良いのですが、魔法にすがるほどに今の現状をつらいのですか...?この手の魔法はオカルトに近いので、効果がない可能性が強いです。魔法よりもどうするべきかの方針を立てますよ?何でも屋なんで」

そう決め台詞したが、Aさんは静かにうつむいた。


「あまり具体的にこうと言えないのですが、何だが全て自分のせいで悪いことが起きているんじゃないかなって感じています。学校に行っても、忘れ物もそうですし物をなくすことが多くて....みんなから大きな笑顔を向けて話しかけられるんですが、それも怖くて...何年もその調子で...だから、少しでも魔法で緩和して欲しいなって思ってます。」


「そうなんですね、かなりお辛い状況であることは伝わりました。家族や友人にも相談したんですか?」


「家族には相談したのですが、大丈夫大丈夫って言われるだけで...それがまたつらくて。友達は、いつも笑ってくれるのですが相談するとどこかいってしまうんですよね。」

Aさんはそういうと本当に万策尽きた状態であることが伺えるような表情をする。


私は言葉選びに注意しながら、

「学校では....その....いたずらみたいなのされているとかはなかったりしませんか?」

私は話を聞いてAさんが学校でいじめられているのではないかと感じてしまいそう言ってしまった。


「そうなんですかね...でも、やっぱり私が全部悪いと思います。本当に本当に...」


「本当にお辛い状況なんですね。わかりました。Aさんが納得できるためにも『人を幸せにする魔法』について専門家の方など通して調べていきますね。明日にまたこちらにお伺いしていただいても良いでしょうか?」


「はい、本当に申し訳ございません。ありがとうございます。」


「申し訳ないです。一つお伺いしたい事がありまして...Aさんはどう言う時に幸せを感じますか?幸せって人によりけりで難しいなって思って...参考程度に!」


「そうですね、とりあえず幸せになりたいって思ってここにきました。だけど、いざこう幸せになりたいって言うのは”ない“かもしれないです。と言うかわからないです。」

そう言ってAさんは、相談所を後にした。



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