第8話
カフェでのアルバイトは長期連休を除いて平日だけにしている。入学前に思い描いていた学生生活とは少し違って、課題やレポートの提出など毎日が忙しいからだ。家の掃除や買い物などは土日にまとめて終わらせる。忙しいなりに充実していて、これはこれで楽しい。時間が空けば、仲の良い
人懐っこく
これだけ人気があるのなら、彼氏がいてもおかしくないと思うのだけど……。
「南はどんな人がタイプなの?」
「タイプ? そうねぇ……。心が強くて、自分に素直な人。あと、テンションの低い喋り方なのに大人っぽい声で、細くて長い綺麗な指をしていて、顔は中性的な人」
「ずいぶん具体的な好み……」
「テンちゃんのことだよ」
「ええっ? なんで私?」
「前に言わなかった? 『テンちゃんがもし男の子だったらよかったのに』って」
「男の子っぽく見えるってこと?」
「性別なんて関係ないよ。好みを挙げてみたら、思い当たるのがテンちゃんだったの」
「テンションの低い喋り方とか言ってなかった? 自覚はあるけど……」
「あはは。気付いてたんだ。そういうとこは男の子っぽいよね」
「そ、そう?」
「で、テンちゃんの好きなタイプは?」
聞かれると言葉に詰まる。
思い浮かんだのが南だったから。
「特にないけど……。南の向上心があって努力家なところは素敵だと思うな」
「ほんと? じゃあ両想いだね」
南が嬉しそうに抱きついてくる。
本当に男の子だったら、よかったのに……。
今年の夏は、早い時期から暑い日が続いていた。待望の夏休みが近づくにつれて、学生たちも浮足立っていた。ここ、カフェ
「海にでも行きたいな……。ねぇ、南ちゃん一緒に行かない?」
「えー、日焼けしたくないもん。パス」
「じゃあさ、屋内プールにしよう。
「そんなこと言って、本当は水着姿が見たいだけでしょ?」
「もちろん水着がメインです!」
「しょうがない、陽翔と二人で行くか」
「しょうがない、付き合ってやるよ」
結局、男子は男子との結束力が強いらしい。
仲良し男子を横目に、南が耳打ちしてくる。
「私たちは、夏休みになったら旅行に行こうよ」
「旅行?」
「1泊くらいならいいでしょ? たまには羽根伸ばそうよ」
それぞれの想いとは違う組み合わせになったけれど、親友同士で過ごす時間も楽しいものだ。
大学生活3年目の夏が来る――
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