第78話 田舎王子 五十嵐家の団欒に加わる
案内されたダイニングは、厨房の大きさから想像してるよりはコンパクトな室内だったがそれでも一般的には広いと思う
「さぁ雅君、私の前の席に座っておくれ」
先に席についていた洋一さんに着席を促されて目の前の席に座ると、俺の横には凛が座り、洋一さんの横にエレンさんが座る
そして上座・・俺と洋一さんの間の真ん中の席に洋美祖母ちゃんが座ると
【バタン!】俺の背面の大扉が開き、数人の使用人の方によって各料理が運ばれてきて目の前にテーブルにはあっと言う間に美味しそうな料理が並んだ
「今日は母と凛が作ってくれた夕飯だ、雅君遠慮なく食べて行ってくれ」
少し誇らしそうな洋一さんの横でニヤリと笑う洋美祖母ちゃん、エレンさんはマジマジと料理を観察していて何かに気付いた様だ
凜はというと、横目で俺の事をチラチラ伺いながらオドオドして落ち着かない
「では、皆いただこうかね」洋美祖母ちゃんの声に
「「「「いただきます」」」」と皆で手を合わせた
最初に白身の焼き魚を頂く、箸を入れるとスッと身がほぐれる
「おお、美味しい!塩加減もそうだけどなんか複雑な味わいもする!」
横で凜が顔を赤らめて肩をビクンと振るわす、良く見ると机の下で何やらモジモジしてるようだ
「??凛どうした?凄くおいしいよ?食べないの?」
「あはは、そういや言ってなかったね、雅の分だけは凛が一人で作ったんだよ!」
他の人の料理を見ても全く見分けがつかない、そのくらい凛の料理は美味しかった。
驚く俺と照れてる凛を横目で見ながら、少し自慢げに洋美祖母ちゃんは言う
「イヤー流石私の孫だ!これで本格的に料理を始めてまだ1ヵ月とは、洋一、エレンあんたらもうかうかしてレれないよ!」
少し困った顔の洋一さんとエレンさんだが、素直に凜が褒められるのは嬉しいのかお互い顔を見合せて笑っていた
それから、俺は凜の料理を堪能した落ち着いた凜は時々料理について簡単な解説をしてくれてより料理がおいしく感じれた
夕食を終え、凛とエレンさんと祖母ちゃんは片づけと、料理の講評をする為キッチンの方に行った、洋一さんも仕事を少し片づけると言い自室の書斎に向かった
俺も片づけを手伝うと申し入れしたが、皆に苦笑いで遠回しに断られた・・・
ダイニングを出ていく洋一さんに深々頭を下げる使用人の女性に洋一さんは何やら一言話していたが此処からでは聞こえなかった
使用人の女性は俺の近くに来ると、再び深々と頭を下げて俺を客間に案内してくれた。
案内された客間は、ダブルサイズのベッドにアンティークの調度品が飾られた落ち着きのある部屋だった。
「若旦那様、御用の祭は遠慮なく御申しつけ下さい」
そう再び深々と頭を下げる、使用人の女性に慌てて同じくらい頭を下げる、その様子に驚きながらもフフフと嬉しそうに笑うと使用人の女性はリモコンの呼び出しボタンを渡してくれ、俺が部屋に入ったのを確認すると部屋の外でもう一度お辞儀をして静かに扉を閉めた
「ふぅ、緊張したな・・若旦那というのちょっと恥ずかしいんだけどな・・まぁ気にしないでおこう」
ふと部屋を見渡すと、ベランダが見えたので窓を開けベランダに出て星空を見上げた
「今日も色々あったけど、凜の料理は本当に美味しかったな毎日でも食べたいよ」
「本当ですか?それって・・プロポーズですか?」
「うわぁ!」
急に横から声がしたので驚いたが、気付くと薄手のパジャマに着替えた凜が横から俺の顔を覗き込んでいた
「凛!?ビックリしたよ!?ていうかどうしてここに?」
俺が気付かなかった事に不満げな表情をする凛は口を尖らせて
「私の部屋はこの部屋の隣で、ほらあそこ」
そう指差すとベランダが続きでもう一つの奥の部屋に繋がっているのが判るどうやら、さっき居た凛の部屋の様だ
「雅くんは私が居たら邪魔ですか?」悲しそうに訴え、青と黒の瞳を潤ませて俺の腕を掴むその表情と愛らしいしぐさにドキドキして慌ててしまう
「い、いえ!?そんな事ありません!僕も一緒に居れてとても嬉しいです!」
そう答えると、満面の笑顔で俺の首に抱き着き胸に飛び込んでくる
「うれしい、私も一緒に居れて幸せです!」
暫く俺の胸に頬ずりする凛の背中をそっと撫でていたが、流石に5月とは言え夜になると気温が下がってきて肌寒さを感じてきたので凜の事が心配になり声を掛ける
「ほら、凛夜は寒いから部屋に入った方がいいよ」そういうとバッと顔を上げて決意をしたような目で見つめると無言で俺の手を取り部屋に向かう
?????
「り、凛??ここ俺の泊ってる客間だよね?」
俺の目の前にはベッドで布団を口元まで被って潤んだ目をこちらに向けて恥ずかしそうにしてる凛が居た、そしてベッドの下には凜の着ていた寝巻が脱ぎ捨てられている
「・・・・・・」
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