第66話 田舎王子と打ち上げ花火
彩羽は静流の話しを聞いて、驚きと動揺を隠せないでいた
「あ、あんた・・雅と・そ、その・・キスを・したの?」
改めて指摘されると、恥ずかしさから顔が赤くなる
「キ、キスつっても、あ、あれは旦那さんを助ける為に必死で、そ、その・・」
話しの流れで、静流が雅を助ける為に必死だったことは彩羽にも理解は出来る、理解はできるが・・
「あたしには、気がどうとか気功がどうとか分からないけど、アンタが嘘をつけるような女には見えないから雅の事助ける為の行動だったという事で今回は何も言わない」
「ア、アタイだってそ、その、本当はちゃんと意識のある時に、そ、その旦那さんと、そういう事を、し、したいというか・・」
彩羽は何か考えてるようなそぶりだった
「それは、置いとくとして雅の事ね、あんたの話しだと今のままでは何れ暴走してしまうかもしれないって事ね」
静流は黙って頷く
「雅には、大事な物を守る事とはどういう事なのか、守るべき理由とその守るべき対象をハッキリと理解させる必要があるって言いたいのね」
「アタイはあんたや、空のように賢く無いし、小難しい話は理解できねえ、単純に旦那さんに好かれる女になって旦那さんの身も心も支えるって覚悟決めてるだけだ」
黄金の瞳に強い覚悟を宿し答える
「つまり、雅の妻になるって事は、雅の大事な存在になると同時に雅が暴走しないように全身全霊で支えて寄り添う覚悟がいるって事ね」
「ああ、お前ら他の許嫁には、この役は荷が重いか?・・アタイは、いつでも心も体も旦那さんに捧げる事が出来るぞ」
「あんたの、異常な距離感と強引な誘惑はそういう事だったのね・・」
何かを考えるように、故障で停止してる雅と空の乗るゴンドラの方を見つめていたエメラルドの様な瞳が動き、静流の黄金の瞳を射抜く
「なめんじゃないわよ!あたしも覚悟は出来てるの!身も心も捧げる?上等じゃない!なんならアタシの生涯も捧げてやるわよ!」
武術素人のはずの彩羽からの強い意志に、さすがの静流も一瞬怯むが
「東の家にもアンタのような根性のある女が居たとなると、アタイも手を抜けねぇな!まず手始めに今度の体育祭で旦那さんをアタイらがかっさらうぜ!」
「はっ!言ってなさいよ!アンタらの勝手にはさせないっての!」
二人は睨み合いながらも握手をすると
【ガコッ!】『えーー、大変お待たせしました、機器の点検が完了しましたので再開いたします、ご乗車のお客様におかれましてはご不便をおかけしました事心よりお詫び申し上げます』
ようやくゴンドラが動き出した
二人は、睨み合いながらも急に可笑しくなって「「プッ!」」と笑い出す
先に降りた雅と空だが、中で何かあったのか係りの人に笑われていた
彩羽と静流もあとから直ぐに降りてくると
「おい!空、まさか旦那さんと何かあったんじゃないだろうな!」
「ねぇさっきの係りの人の反応なんなの?普通じゃないよね?」
問い詰める二人に、空は
「いや~んw雅さん、二人がこわ~いw助けてぇ~」と雅に首に手を回して抱き着き自分の胸を押し付ける
「空!、てんめぇーー!」「空、あんたちょいやり過ぎ!」
雅は3人をなんとか宥めて、搭乗ゲートから降りると辺りはすっかり暗くなっていて周囲には人も居なくなっていた、俺達は出口に向かう為、中央広場に向かうと
「ほなぁ雅さん、うちらはこの辺でお暇しますなぁ」
「だ、旦那さんそ、その夜、そ、その女の肌が恋しくなったら、いつでも遠慮なくアタイに連絡を・
「はい!いくで!静流!」
そういうと、静流の肩をつかんで引きするように中央に向かうと、上空から大きなヘリが爆音と豪風とともに降りてきた。
「ええええ!ヘリコプター!?」
驚く俺の方を二人が向くと、ダダダッと駆け寄り左右の頬に
【【チュ!】】
とキスをして、嬉しそうに笑うと
「それじゃ、また来週~」
「だ、旦那さん、す、すこし実家に帰ってくるな!」
そう手を振りながらヘリに乗りこむと、空港目指して飛び立って行った
「はぁ・・本当に嵐のような一日だったね、彩羽・・」
そう振り向き彩羽の様子を伺う
【チュー】
突然首に手を回され唇を奪われた・・
唖然とする俺に、恥ずかしそうに頬を赤らめながら顔を離す彩羽は、ゆっくりと地面に足をつけ俺の方を見つめる
「ねぇ雅、あたしのファーストキスはアンタにって決めてたの、あたしはアンタの物になる覚悟出来てるから、これからはアタシをちゃんと女として見て欲しい」
そう宣言すると、強く俺の胸に飛び込み強めに抱き着くと
「今日は、あたしの運命の日、改めて覚悟と決意の日・・その誓いのキス・」
そう顔を上げて優しく微笑む彩羽の顔に色とりどりの明かりが差し込む
【ドーン、ドーン、ドーン】いつの間にかパークの上空に色とりどりの花火が打ちあがっていた
打ちあがる花火を見上げて左手で彩羽の肩をそっと抱きしめると
「彩羽、俺必ず皆を幸せにする方法を見つけるよ、そうしなきゃって心が叫ぶんだ」
俺の胸に頭を預けて
「うん、知ってる・・あたしも雅ときっと見つけるよ・」
夜空に打ちあがる輝く大輪の花達は、慌ただしく過ぎたゴールデンウイークの終わりを少し彩ってくれた。
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