第46話 田舎王子 鬼道館長と対面する

------------------------------------------------






・・・・ここは?頭が暖かい・・誰かに撫でられてる?これは・・・懐かしい・・そうこれは・・


「稲ばあちゃん!」


「どぅあーーーぁ!」


急に起き上がった俺は後ろを振り返ると、稲ばあちゃんに良く似てるが若い・・・??


「おい、雅!大丈夫か?!」


俺の後頭部にそっと触れるその手は間違いなく稲ばあちゃんの手だ・・

「あの、俺・・段次郎じいちゃんと修行中に、小熊に襲われて・・でも!小熊は悪くないから!だから稲ばあちゃん怪我の事は内緒にしてくれないかな!」


そう言うと目の前の女性の手を握った


「はっえ!?え?・・うん?」


「やったーーーありがと!稲ばあちゃん大好きーーー」


そう言うとその手を離して思いっきり抱きしめた


「ちょっちょっと、雅ぃ!これは流石に・・・」


次第に頭が鮮明になってきた、抱き着いた稲ばあちゃんから離れて、ぼんやりした視界が鮮明になってくると


「あ、えぇえ、み、雅・・そ、その、平気か・・」

目の前の女性は稲ばあちゃんでは無く、七星 静流さんだった。


「どぅあーーーぁ!」

俺は先ほどの七星と同じ奇声を上げ離れようとすると、七星から「危ない!」と頭を抱えられた

七星は顔を真っ赤にして、何やら目が泳いでいるように見える


「あ、あのぉ七星さん、これは・・・みやび?ん?七星さん僕の事、名前で呼んでましたっけ?」

七星は慌てた様子で

「はっ?はぁ~ぁ?最初から、そうだったそうが!本当に頭大丈夫か!?」

そう言うと俺の後頭部を撫でてくれた、俺はその手にそっと自分の手を重ねた

「すいません、出来たら何があったのか詳しく教えていただけませんか?逃げてる途中で【解放】したようで、記憶が混濁してるようです」


複雑な表情をする七星はためらいながらも、少しづつ話してくれた。

どうやら俺は、悪漢とは言え人として度を越えた酷い仕打ちをしてしまったらしい・・・

「ぼ、僕は、、何てことを、、」

自責の感情に胸が苦しくなり、自然と涙が零れてきた・・

「自分を責めないでくれ!確かに相手に対しやり過ぎたとアタイも思うけど!」

俺の頭を抱きしめそっと撫でながら

「それでも雅が来てくれて助けてくれなかったら、アタイは・・・アタイは・・」


この感覚・・やはり懐かしさを感じる・・子供の頃に稲ばあちゃんに、なだめて貰った時のような・・


少しして落ち着くと、奥から【鬼道館】と刺繍された道着を着た男性が目の前に来て俺の前に片膝をつき頭を下げた。

「お初にお目にかかります、私【鬼道館】という空手道場で館長と務めております、鬼道 魁の父親で鬼道 道弘と申します。」


その名前に、先ほど七星から聞いた鬼道 魁に対する仕打ちを思い出し顔が青くなる。

俺は、すぐに鬼道さんの目の前で土下座をすると謝罪をした。


「申訳ございません!この度は息子さんに対し酷い仕打ちを、この償いは必ず!」

俺の謝罪に慌てた鬼道さんは、俺の肩を抱いて起こして再び七星さんの横に座らせると、先ほどの位置に戻り再び頭を下げた。


「この度の件は、我が愚息とそれに踊らされた不詳の弟子共が起こした事に対する罰です、幸い誰も命に別状はありませんし多少リハビリは必要ですが後遺症が残るような者も居ませんでした」

鬼道さんは、紳士的な話し方で淡々と語った。

「し、しかし、他の方にも、いや本人もですが御家族にも、、その申訳無く・・」

鬼道さんは、頭を下げた状態で首を振る

「雅様、愚息達が七星総代のお孫様にしでかした悪事は、明白です複数の映像と音声が証拠として提示されております、恐らく警察も雅様に対し不当な対応は出来ないと思います」

「今回の加害者達の家族にも、この内容が通知されておりますので、逆に七星総代のお孫様が処分を希望されるのであれば、我が愚息と共にこの度この愚行に参加した全員をまとめて処分する事も可能です」





「何より、雅様に対する不敬な態度は万死に値します・・仮に雅様がお許しになられても他の6家の御大達が黙っては居ないと思います」


鬼道さんはさらに頭を下げて言葉を紡ぐ


「現に、我が【鬼道館】は廃館が決まりました、近日中に全国の道場をたたみ、全国空手連盟からも除籍となる予定です」


悔しそうに話す鬼道さんの表情は伺う事が出来ない


「そ、そんな!僕の仕出かした事で、僕が責められるならまだしも!どうして鬼道館長が責任を負うのですか!おかしいですよ!」

何とかならないのか?と焦る俺の表情を不安気に見ている七星が鬼道館長の背後の気配を感じてぎゅっと俺の服の袖をつかんだ



「雅よ、それが親の責任の取り方だからだ・・」

「みやちゃん、皆の怪我は大丈夫よ私の方でなんとかしたからね」



そう暗がりから現れたのは













「師匠!稲ばあちゃん!「じいさん!ばあさん!」」




頭を下げたままの鬼道館長が小さく呟く「七星総代・・・」



-------------------------

追記

近況報告にメインキャラクターのイメージ画像を載せました、良ければご覧下さい。

いつも読んで下さりありがとうございます(^-^ゞ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る