第35話 田舎王子と女神のおまじない
色々あったが、何とか時間までに間に合った、彩羽先輩は家の用事で少し遅れるとの事だった。
竜崎さんも、俺の顔をみてカバンから5月号のNEWを皆の前にお披露目した。
表紙は俺の手を彩羽先輩が握っているベンチの写真だ(あの時のか!)
周りのスタッフからは【わぁ~】【素敵~】【はぁん、キュンとする~】など感嘆の声がするが、鳳さんと竜崎さんは真剣な目で中を見ていた。
今回は、俺と彩羽先輩の特集号で事務所的には俺と彩羽先輩を両エースとして全面に押し出すつもりだと以前言っていた、それを竜崎さんの所の雑誌が広報としてメディア展開するとの事だ。
「ねぇ茜、今月号で本当はもっと二人を前面に出すべきじゃなかった?」
鳳さんは竜崎の質問に対し
「青葉、私に考えが有るんだけど・・・ちょい耳を」
そう言うと並んで座る二人は耳打ちを始めた
「で、来月のお披露目以降で・・として・・・特集・・・ての・・・どう?」
「いいわね・・・父さんにも・・・おくわ」
二人は何やら、企んでるようだが表情見ると悪戯を考えてる大人子供って感じだ、楽しそうだし気にしないようにしよう
1時間ほどで雑誌の打ち合わせは終わった、少し休憩を挟んでると自販機の前に彩羽先輩が現れた。
「雅とは自販機の前で良く出会うわねw」
そういうと紅茶を選んで購入して、俺の横に座った。
「5月号はどうだった?表紙は私とアンタでしょ?」
彩羽は見ていたかのように、何気なく言い切ると天井を見上げて足をバタバタさせて紅茶を飲んでいた。
「で、雅はこの後の次の仕事の打ち合わせの内容知ってるの?」
「えぇ、次は映画の主演と聞いてます、この僕が演技とか不安でしかないです」
「正直、今のお仕事でも上手く出来てないし、この間も皆さんにご迷惑おかけしてるのに、今回のような大役をお受けして良いのかと悩んでいます」
「世の中には僕よりも、もっとカッコよく輝いていてもっと一生懸命役者としての道を歩んでいる方が沢山いらっしゃるのにこんな僕なんかが・」
そう話し項垂れる俺の横に彩羽は座りなおし、俺のももにそっと手を置いてエメラルドに輝く瞳で見つめる
「え、彩羽、せんぱ い?」
恥ずかしさから目を逸らしたら両手で顔を挟まれて強制的に目を合わさせてられた。
「ねぇ、私の婚約者様は自分にそんなに自信がないの?」
真剣な眼差しで俺を真っ直ぐに見つめてくる、まるで俺の心に直接語り掛けるように、そして何よりその手が暖かい・・
「あんたの事、最初に見た時から纏ってる雰囲気とか存在感とか凄く大きく感じて、パパ以外の男の人に初めて興味を持ったの」
「私、パパから婚約者の事を聞かされて悩んで、アンタにもその事愚痴った事有ったけどアンタと出会うまでは、自分の将来の事を諦めていたのよ」
「でも、アンタに惹かれて自分の気持ちも自分の未来も諦めたく無い!ってそう思えたから今の私が居るの」
彩羽のエメラルドの瞳は少し潤んでいた、その宝石のような瞳から一筋の流れ星のような涙が絹のような頬を伝う
「だから・・・そんな情けない事を言わないで、貴方は・・私の婚約者は世界一カッコよくて優しくて、純粋で皆を幸せに出来る力を持ってる凄い人なの!」
そう涙で濡れた瞳で彩羽は微笑み
【チュッ】
そっと、俺の額に口付けをした。
「ふふ、女神からの勇気の出るおまじないよ、世界中の全員があなたを認めなくても私だけは認めててる」
「だって、私の好きになった人で大切な婚約者だから」
そう言うと優しい笑顔で微笑んでくれた。
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