第34話 田舎王子 公園を散歩する
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久しぶりの家族団欒といった雰囲気を感じれた。
凜の料理はお世辞抜きで美味しくて、出来立てのオムライスも完璧だった。
凜の両親からの話は伏せて、俺はこの暖かい家族の空気を少し堪能させてもらえ満足していた。
20時過ぎ・・・・
「本日は、ご馳走様でした」
悲しそうな凛とエレンさんが、いっそ泊まっていかないか?と言われたが自分には明日仕事があるのでと丁重にお断りをした。
洋一さんはせめて五十嵐の車で送るように申し出てくれたが、それも丁重にお断りさせていただいた。
「トレーニングか・・・・なるほど・・一堂流も甘くないね・・」
??あれ?一堂流の事を洋一さんに話したかな?もしかしたら凛と恵美を助けた時の話でしたのかも
「それでは、皆さん本日は本当にありがとう御座いました」
そういうと玄関の大きな門の横の勝手ドアを出て締めようとした時に凛も出てきた。
何事かと聞こうとしたら、凜はスッと背延びして
【ちゅっ】
と頬にキスをした。
「!え?凜さん!?」
恥ずかしそうにオッドアイを揺らし優しく微笑んで
「うん、また来てね~の、約束のキスだよ」
そういうと屋敷に戻っていった。
何故か最近こういうシーンが多いような気がする・・・気のせいか・・そんな事を考えながら走り込みとトレーニングをしながら寮に帰った。
帰宅後は素早くシャワーを終え明日に備えて就寝する事にした。
翌朝・・・
事務所への集合時間は10時頃なので早めに家を出て公園でも散歩しようかと思っていたら、隣の部屋にだれか来るのかドアが開いていた中は施工業者なのかせわしなく動いていた。
大工と言えば段次郎(師匠)じんちゃんは元気だろうか・・・そんな事を考えながら公園に向かうと不意に目の前を青いショールが飛んでいった。
誰かがショールを追っているようだ、俺は風で空に流されるショールをめがけて近くの木を三角飛びの要領で駆け上がり太めの枝の反動を利用して空に飛びあがってショールを掴んだ。
そのまま空中で回転して衝撃を緩めるようにして着地しショールを追いかけてきた女性に渡した。
「なんとか届いて良かったです、風が強いのでお気をつけください」
ショールを渡して立ち去ろうとしていると
「ちょっと、お待ちになって!」
そう呼び止める女性は、短めに切りそろえられた青っぽい髪に、長いまつ毛と大きな瞳が特徴で、薄い水色のブラウスと紺色の長めのスカートがとても良く似あう和風の美女だった。
やや細身だが恵美にも負けない女性らしい部分を持つ美女は渡されたショールを首に巻き付けると、目の前まで歩いてきて軽くお辞儀をした。
「大事なショールだったので、ほんまに助かりましたぁ、おおきに」
関西の人なのかおっとりした口調のお礼だった。
「いえ、たまたま通り掛かっただけで、本当にタイミングが良かっただけです」
そう答えると、優しく微笑んだ。
「!?」
何かに驚いた様子の女性は、自分の胸を押さえ少し顔を赤くして瞳を潤ませた。
「あのぉ、つかぬ事をたずねますけどぉ、お兄さんはもしかして一堂 雅はんですか?」
突然自分の名前を呼ばれて、驚くが前と違い先月の雑誌にも載ってたから知ってる人がいてもおかしくないのかもと、自分で納得する事にした。
「えぇ、そうです、一堂 雅と申します」
こういう時になんと名乗ればいいのか少し恥ずかしい気持ちもあったが、普通に名乗ってしまった。
「なるほど・・・これは確かに・・・お父様の仰る通りだわぁ・・この私が・・・一目で・・」
何か俯きブツブツと言っている様子の女性に、そっと近寄り腰をかがめて顔を見た
「あ、あのー大丈夫ですか?お加減がすぐれないようであれば誰か呼びましょうか?」
そういうと女性はハッとした表情で、俺の目を見て
「ひゃ、ひゃい、だ、だ、い丈夫ですぅ・・ち、ちかい・・」
その長いまつ毛の奥の黒い瞳が揺れている。
「そ、そうですか、、では、僕はこれで失礼いたします、貴方も気を付けて行ってください」
そう言って立ち去ろうとする後ろから
「あ、あのぅ!うち六橋 空(ろくはし そら)いいますぅ空とお呼び下さいぃ、今度またお会いした時にでも、お礼させて下さいぃ」
そういうと、足早にその場を去っていった。
(六橋??どこかで聞いた気もするけど・・・・あ!もう9時半だ急がなきゃ!)
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