第32話 田舎王子 凛に夕飯に誘われる
それから、木曜まで毎日恵美との打ち合わせ?という名のスキンシップが続いた・・・
次の日、生徒会室に入ると【薄さ0.1mm】と書いてある黒っぽい箱が机の上に置かれていて、添えられたメモに【足りなかったら補充するよ★】との書いてあった、流石にそれを見た恵美の笑顔も引きつっていた。
あの生徒会長は生徒の模範になるつもりが有るのだろうか・・・・
週末は恵美が習い事が有るからと、打ち合わせ無しで解散する事となった。
学校正面ロビーに向かうと、俺の下駄箱に女子生徒の人だかりが出来ており、状況から近づけないでいると
「あなたたち!こんな所で、固まってると他の生徒が帰宅できないでしょ!帰宅する人は帰宅する!部活の人は早く部室に行く!とにかく早急に解散しなさい!」
腰に両手を置いて、いつもの凛々しい姿で生徒を一喝する風紀委員。
「たっく・・・なに人の婚約者に色目使ってんのよ・・・ただでさえ・・」
と思ったら、自分の都合も混じってるみたいだ・・・でもようやく帰る事ができるので凜のところにお礼を言いに行く
「凛さん、ありがとうございます、正直困っていたので助かりました」
そう頭を下げてお礼を言うと
「え?見てたの・・・(まさか・・さっきの聞いてたとか?・・・)」
「はい、凜さんが注意してくれたお陰で面倒な事にならずに帰れます、ありがとうございました」
そう頭を下げてお礼をいうと
「(聞かれてなかった?)えぇ・ええ・こういうのは誰かが迷惑するから早めに注意しとかないと、だから雅君が気にしなくてもいいのよ」
そう苦笑いをして手を振る凜の顔は先ほどの凛々しさが見る影もなく真っ赤になってオロオロしていた。
「それでは、凜さんまた来週、お先に失礼します」
そう自分の下駄箱に向かい上履きをぬいでスニーカーを取り出す、上履きを下駄箱に仕舞い下駄箱の扉を閉める所で凜さんに左手を掴まれた。
「ね、ねぇ雅君は今日は真っ直ぐ帰るの?」
急に腕を掴まれて少し驚いたが、何やらウルウルしたオッドアイが不安に揺れてる凛をみると不思議と気持ちが落ち着いた。
「はい、明日は事務所で明後日発売の雑誌の確認と次の仕事の打ち合わせが有りますが、今日はこのまま夕飯を買って帰るつもりです」
そう言うと、凜は満面の笑顔で
「じ、じゃさ・・・私の家で夕飯食べて行かない?最近料理するの楽しくて・・・・その・・雅君に食べて欲しい・・から・・・その・・・ダメ・・かな?」
不安気なオッドアイをキョロキョロさせながら、人差し指をチョンチョンとして凜は夕飯に招待してくれた。
そんな姿を見たら勿論
「ええ!良いんですか!凜さんの料理をいただけるなんて嬉しいです!是非お願いします」
凜のチョンチョンしてる手を両手で包んで俺も笑顔でOKした。
「うぁー、やった!ありがと!雅君!それじゃ直ぐに帰る準備してくるから少しだけ待っててくれる?」
凜はそう言うと慌てて2Fの階段を駆け上がって行った(風紀委員が廊下や階段走ったらダメなのに・・・)
凜を待つこと・・・2分(早すぎない?)
「お、お、おま、、、たせ、はっ、はっ、はっ・・・」
肩で息をしてる凛の背中を撫でて落ち着かせる
「そ、そんなに急がなくても・・・」
「はっ、い、いいえ。はっ、早く、、はっ行かないと っ 邪魔がっ気にしないで っ 行きましょうっ」
そう息を整える凛は俺の手を取り足早に、校門を後にした。
<教室の窓辺から二人が走り去る所を見てる女子生徒>
『凜さん・・・今日のところは譲ってあげるw・・・さてお父様がお膳立てした様だし私も準備しなきゃw』
【駅前の大型チェーン店のスーパー〈リオン〉店内】
「えーと・・・凜さん?これは一体どういう状況なのでしょう・・・」
「・・・雅君は気にしないで良いのよ、ただ食材を買いに来ただけよ」
(ただ夕飯の食材を買いに来ただけ・・・・ねぇ・・・)
後ろを見ると、十数人の店員がカートやら荷物やらを持ってゾロゾロ付いてきてる・・そして凜の目の前で変な汗をダラダラかきながら商品の説明を必死にしてる中年の男性の胸には
【支部長】の名札・・・後ろのカートを押す男性は【店長】荷物を持ってる女性は【エリアマネージャー】のそれぞれ名札が付いており、全員が緊張していて一言も発せず俺達に付いてきている。
たまに振り返り目が合うと、皆さん引きつった笑顔を返していた。
「雅君の好きなオムレツに使うのに、宮城県産の〇〇養鶏所の卵が欲しかったんだけど・・・・」
そう凜が呟くと、支部長は鋭い目線で店長とエリアマネージャーに目配せをした、するとお互いがインカムとスマホで何やら小声で怒鳴りながら指示をしていた。
そんな様子を見ると申訳なくて
「り、凜さん、僕は別に音野ばあちゃんのオムライスじゃなくても、凜さんの作る料理ならなんでも嬉しいよ!」
そう告げたが、余計凜が落ち込んでるのを見て支店長の顔は益々引きつって何度も凜に謝っていた。
しかし、奥でエリアマネージャーが頭の上で両手を使い〇を作ると、支部長もホット安心して凜に「お嬢様!宮城県産の〇〇養鶏場の卵、ご用意できます!」と告げた。
それを聞き凜は嬉しそうに、両手を叩いて喜び俺の方を振り返ると
「よかった!雅君にどうしても出来たて食べてもらいたかったの!」
その凜の笑顔と引き換えに、周りの数人の寿命は数日縮まったに違いない・・・申訳ございません。
無事買い物を終えると、スーパーの前には黒いリムジンが待っていた。
スーパーの皆さんでリムジンに荷物を積み込むと、俺たちは車に乗り込もうとする前に、支部長を先頭に全員が頭を下げて【ご来店誠にありがとうございました!】と大合唱した。
「あ、僕たちお会計してなかった!おいくらでした?」と財布と取り出すと、支部長は今にも殺されそうな顔をして両手を振りながら「め、め、め滅相もございません!お代は結構です!」
というと、他のメンバーを連れてバタバタと店の中に逃げていった。
ポカーンとする俺の腕を車の中から凛が引っ張り強引に車に乗せた、俺が乗ると自動で扉がしまり凜の自宅に向かった。
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