第24話 田舎王子と彩羽の撮影
雑誌の撮影中・・・竜崎さんからの指示が飛ぶ
「ほら、雅君!彩羽の手を取って立ち上げらせる所!もっと、優しい感じで微笑んで!」
このシーンは何度目のNGなのか・・・先ほどの雰囲気とはまた変わって鮮やかな緑の髪をおさげにし、少し年下の彼女を意識した彩羽を優しくエスコートするシーンを撮ってる所だ。
俺が差し出した手にそっと手を乗せて上目づかいで見つめ合う彩羽と俺、正直恥ずかしさとドキドキで微笑んでなんかいられない。
そんな、俺の様子をみて溜息を吐き、軽く首を振る竜崎さん
「ちょっと休憩ー10分ねーー」
竜崎さんは彩羽を呼びつけ何やら耳打ちしていた、彩羽は俺に背を向けた状態で何度か頷い一言二言竜崎さんと話すと竜崎さんに軽く肩を叩かれ俺の方に向かって歩いてきた。
「ねぇ雅、少し向こうで話さない?」
いつもの呼び捨てだったが、口調は穏やかだった、俺達は公園の自動販売機の横のベンチに向かった。
俺は無意識に彩羽の好きなジュースを買おうとスマホをタップしようとしたが以前の彩羽の言葉を思い出して。
「彩羽先輩、なにか飲まれます?」
そういうと、彩羽は嬉しそうにしたが軽く首を振った。
おもむろに自分のカバンから小ぶりの水筒を取り出して、中身を注ぎ俺に差し出した。
「私が雅に入れてきたの、紅茶なんだけど・・・・紅茶嫌いかしら?」
心配そうに俺の方を見ると、先ほどと同じように優しく微笑んだ。
「いえ、紅茶も好きです、有難く頂きます」
そういうと、彩羽の淹れてくれた紅茶を一口飲んだ。
口に含むと、とてもいい香りが紅茶の風味に併せて広がった。
「これ!とてもいい香りがします!それに美味しい!」
俺は目をキラキラさせて彩羽の方に紅茶を見せて絶賛した、彩羽は嬉しそうに頷きながら、おかわりいる?ともう1杯注いでくれた。
「彩羽先輩、とても美味しかったです!俺こんなおいしい紅茶初めて飲みました!」
彩羽は水筒を両手でコネながら少し照れたように
「雅の好みで良かった、私紅茶淹れるの好きなの、今のはジャスミンを少し入れてのよね」
「彩羽先輩でもそうして照れたりするんですね・・・以外です」
俺の失礼だったかもしれない言葉に彩羽は軽く首を振る
「照れてるのは雅だからだよ?やっぱ好きな人に褒められたら嬉しいって思うよ」
彩羽からストレートな気持ちを伝えられて少し面食らった。
(そういえば、隣のばあちゃんも<ツン>だったけど、亡くなった爺さんと出会ってからは<デレ>になったとか言ってたな?<デレ>の意味分かんないけど・・・)
「でも雅も凄いよ・・モデルになってまだ1ヵ月でこんなに場に馴染んで私素直に凄いと思うよ?」
そういうとフフフと笑いながら、俺の頭を軽く撫でた。
「!?彩羽先輩!ちょっとこれは・・・恥ずかしいですって!」
チラチラこちらを見るスタッフは微笑ましそうに頷いていた。
「雅は、頑張ってるよ?それは皆思ってる、勿論青葉さんも茜さんもね」
でも何度もNG出してる自分が情けなくて落ち込んでいるのも事実、励ましてくれる彩羽先輩にもなにか申訳ない
「あ、そうだ!私緊張を和らげるルーティンあるの!やってみようか!」
彩羽は俺に体をくっつけると、さっきのジャスミンの香りより甘いいい香りがする。
「それじゃ私の左手を見て」
そういうと俺の目の前に左手を広げ掌を向けて軽く振っていた。
「え?あ、はい・・」
俺は彩羽のいわれるままに掌を追っていると急に俺の頬に添えられた
【ちゅっ】
急に彩羽先輩は頬にキスをしてきた。
「え!?急に!彩羽先輩!?」
彩羽は驚く俺を見て人差し指を唇に当てて優しく笑う
「おまじない・・・緊張が吹っ飛んだでしょ?w」
そう言うとベンチを立ち上がり俺に手を差し出した。
俺は彩羽先輩の手をそっと取り彩羽の笑顔にそっと微笑み返す。
【カシャ!カシャ!カシャ!カシャ!・・・・・】
その時俺たちの横から本日何度も聞いたシャッター音がしたので、そちらを向くとカメラを構えていた竜崎さんが親指を立ててOKの合図をした。
俺は茫然としていた。
彩羽の手を握ったまま・・・・・
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