第25話 田舎王子と手作り弁当
彩羽との週末の雑誌撮影を終えて、月曜の登校・・・俺の下駄箱には相変わらず【ラブレター】が大量に投函されている。
しかし、4人の婚約者のインパクトが強いのかその殆どが俺のモデル活動への応援メッセージだ。
授業間の休憩時間に目を通してると隣のクラスから凛が現れて少しクラスがザワザワしていた。
相変わらず、詩織と彩羽の周りは人だかりだが凜の登場で人だかりが移動し彼女達の姿がお互いに確認出来るくらいに開けた。
【ピシッ】
なにか張り詰めた空気を感じギャラリーは許嫁達から距離を取った。
凜は他の二人の方から目を逸らすと真っ直ぐ俺の席の前にきた。
「雅君、今日のお昼なんだけど・・・・」
「ああ、うんいつもの食堂で皆で食べるんだよね?判ってるよ」
そう学校での昼食は俺達5人で席を囲んで食べるのが日常となっていた、最初は周りの視線やヒソヒソ話が気になっていたが最近は何やら【推し】という仮想ペアが密かに学校で流行ってるらしい、良く知らんが。
そんな事もあり視線はヒシヒシ感じるが、皆好意的な目線で嫌な感じはないので最近は気にしてない。
しかし今回の凜の話は少し違った、凜は後ろに隠していた小ぶりなカバンを俺の前にそっと出した。
「あ、あの・・私あれからずっとお料理練習してて・・・その雅君に食べて欲しくて・・・その今の私の精一杯のお弁当・・」
顔を赤らめて、モジモジしてる凛は凛々しい風紀委員の面影は微塵も無く、年頃の女の子だった。
「ありがと!凜さん、是非頂かせて下さい!」
そっとお弁当の入った袋を受け取ると、それを見た凜は安心した笑顔で微笑んだ。
「うんうん!一緒に食べてる時に感想きかせてね!それじゃ!」
そう言うと自分の教室に帰っていった。
何やら前方二人の目線が突き刺さって痛い気がした・・・・・・・
昼休み・・・食堂・・
俺の両隣には当然凛と恵美が陣取り、正面に詩織と彩羽が座る
詩織と彩羽は相変わらず不満気だ。
「みーくん!いつになったら私の事お部屋に呼んでくれるのかなぁ?私が晩御飯作るって言ってるよね?!」
詩織は不機嫌な気持ちをナポリタンにぶつけ皿のパスタを全部巻き取る勢いでクルクルフォークを回してる。
彩羽は購買で買ったサンドイッチを「フン!」と顔を逸らし頬張る
二人の機嫌も気になるが、それよりも恵美の方からの圧にとてもじゃ無いが左を向けない
「へぇーー凛ちゃん、料理するようになったんだぁーーー、あんだけ嫌がってたのにぃーーー?」
優しい口調の中に、押しつぶされる様な圧を感じるのは俺だけだろうか?
「え、えぇ・・その・・雅君に・・食べて欲しくて・・先週から家で練習を・・・してるの・」
恵美から圧を全く意に返さず、凛は恥ずかしそうに頬を染めて俯きながらモジモジと指を持て余していた。
その指先には幾つもの絆創膏が貼られており、凜の努力の跡が見て取れる。
しかも俺の為にと言われると、その気持ちに俺迄顔が赤くなるのを感じた。
恵美も凜の指先を見たのか、ふぅと溜息を吐くと。
「そっかぁ・・じゃ雅君に感想聞かなきゃだねぇ?」
どうやら、圧の矛先が俺の方に向いてしまった。
「そ、そうだね・・・それじゃ有難く!いただきます!」
そうお弁当の前で手を合わせ、凛の努力に感謝をしてお弁当の蓋を開ける。
「「「「な!?」」」」
そこには、オムライスがドンと入っており周りにはプチトマトやブロッコリー等が彩程度に添えられていた。
何よりそのオムライスには
【すき】
と、ハートの中にケチャップで書かれており、凛以外の皆を固まらせていた。
照れてる様子の凜は皆の様子に、我に返り両手を振りながら慌てて言い訳を始めた。
「ち、ちがうの!、雅君ってケチャップで書くのまだ難しくて!その・・」
((((いや!言い訳すんの、そこかい!))))
そんな凜の言い訳?に皆が心の中でツッコんでると横から凛がそのケチャップの個所をスプーンですくい俺の口に持ってきた。
「はい!雅君w・・・あ~んw!」
もう凜の羞恥心は別のベクトルに向かってるのか、周りを気にする事なく嬉しそうに俺に【あ~ん】を、してくる。
俺は羞恥心を他の3人のジト目に耐え口を開ける。
「あ、あ~ん・・ん・・・・ん?!」
おれは凛のオムライスを食べると、懐かしい味に驚く!この味は!?
「!?音野ばあちゃんの、オムライスだ!?」
俺の言葉に、凜は手を叩いて満面の笑顔で頷いていた。
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