第19話 田舎王子と許嫁達の夜<雅、彩羽編>
●一堂 雅の夜
俺は凛や彩羽から送ってくれるとの申し出を「少し考えながら歩いて帰る」と断った。
帰宅した俺は軽くシャワーを浴びてリビングの椅子に腰かけると引き出しの中に仕舞ってあった村長からの手紙の封をあけ中身をみた。
『雅へ 都会に出て久しかろう生活には慣れただろうか?お前を都会に出す事をばあさんが不安に思っておったから早く慣れてくれてるといいんじゃがな』
『これから書き留める内容は冗談でも嘘でもない事実として受け止めて欲しい』
『一堂 雅には6人の婚約者が居る』
『居るというのは、存在するという意味だお前が生まれて間もない時に近い歳の定めの家より6人の女性が選ばれている』
『これはたまたまでも偶然でもない、定めだ』
『初めて出会う女性に対しお前は不安だと思う・・・しかし心配は無用だ』
『お前の6人の許嫁は必ずお前に好意を抱く・・・そしてお前も彼女らに必ず好意を持つ』
『何故か・・・・それは今は語れないがその内真実にたどり着くだろう』
『おそらく許嫁の中には、この手紙を読んだお前より真実に近づいてる家の者もおる事だろう・・・しかしその者もお前にも・・いや誰にも内容は語れない』
『理不尽におもうかもしれんが、それも決まってる事なのだ』
『最後に一つだけお前に託したい・・・・自分の気持ちに正直になる事だ、それと許嫁達を悲しませるな!それがお前の定めであり運命と知れ!』
そう手紙に書いてあった。
ある程度は詩織の話した内容に沿った形だったが、俺に課せられた定めについてかなり重たい話だった。
俺は丁寧に手紙を封筒に戻し机にしまうと、その日は寝る事にした・・・これが夢だった!って事・・ないかなー
〇四葉 彩羽の夜
雅は私が送ってあげようって言うのを断ってきた。
一言いってやろうかと思ったが、彼の思いつめた表情を見ると何も言えなかった。
私は家の車で帰宅するとその足で、パパの書斎に向かった。
【コンコン】
軽くノックすると『入りなさい』との声に従いドアを開けてまずは一礼をする。
「パパ忙しい中、時間を作ってくれてありがとうございます」
顔を上げると父はすでにソファーに腰かけており私に対面のソファーで座る様に手で促した。
私は少し浅めにソファーに座りパパの目をそらさず見つめた。
「パパまず確認したいのだけど答えてくれるよね?」
父は肯定も否定もしない
「お前らはすでに二階家の娘と接触しているはずだ、であれば私の口から言える事と言えない事がある事は知ってるはずだ」
父はどこまで知っているのか?親子で腹の探り合いはしたくないがそうも言ってられない
「存じてます、言い方を変えます・・・私の質問に答えれるものは答えて答えれない事は答えれないと仰って下さい」
私の丁寧な物言いに変えた、切り替えの早さに少しうれしそうに頷いた
「では、パパは一堂 雅が許嫁として転入してくる以前に私と同じ茜さんの事務所のモデルになっていた事をご存知でしたか?」
「ああ、勿論だ雅君がモデル事務所にスカウトされた事を知らない家は無いよ」
たぶん、最初のパパの感じだと私だけでなく雅にも監視をつけるくらいしそうだし予想通りだ
「ではなぜ私に彼が婚約者だと伝えてくれなかったのですか?」
父は真っ直ぐに私を見て
「伝える意味があるのか?」
そう簡単に言われ少し感情的になってしまった。
「あります!私が彼と許嫁の事でどれほど悩んだか!ご存知無かったとは言わせません!」
そう腰を上げ父に詰め寄ると
「それでは聞くが、お前は彼がお前の許嫁だと知って彼への気持ちが変わったのか?」
父からの逆質問に戸惑う
「え・・それは・・・どういう・・・」
「質問を変えようか、許嫁を嫌悪していたお前は、雅君がその許嫁と知って雅君を嫌いになったのか?と聞いてる」
彩羽は父がどこまで自分を把握しているのか少し怖くなる
「彩羽、驚く事ではないよお前が雅君を好きになる・・いや愛しく思うようになることは判っていたことだ」
「そ、それは・・・どういう・・?」
その質問には父は答えない
「これからのお前次第だ、彩羽・・・お前の思う様に雅君と過ごしてみなさい・・そこでお前が何を感じ何を成すのか」
席を立つ父は振り向かずにつぶやく
「それが、四葉の・・・いや私の望みだ・・どうか幸せになってくれ・・彩羽」
そう言い残し父は書斎を後にした。
私はのこされた部屋で父の座っていた場所を見つめ決意を固める。
父は私の疑問にはすべて答えてはくれなかったしかしそれも予想の範疇だった。
肝心なのは私の心だ
父は私の幸せを望んでくれた。
もう遠慮も負い目もない私は私のやり方とこの強い彼への想いを正直に貫くのみ!
なぜなら私は、四葉 彩羽なのだから
【私、四葉 彩羽は必ず、いえ全身全霊で一堂 雅を射止めます!】
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