第2話 田舎王子スカウトされる

時間は大丈夫か?と聞かれたので寮の門限が21時だからそれまでは大丈夫だと伝えると、鳳さんは安心したのかさっきまでの不安な表情から明るい表情に変わった。

近くの緑マークの喫茶店(都会ではカフェというらしい)で、鳳さんが何やら呪文を唱えると店員から見たこともない飲み物が手渡され、店外に設置されたテーブルに向い合せで座った。

村に居た時は、村長の奥さんでもある音野(おとね)ばあちゃんと庭先でお茶を飲んだがその時とは違う不思議な感じがこみあげてきた。

気恥ずかしさ?照れ?よく分からない感情に背筋がゾクゾクする感覚に戸惑いながら目の前の美女と同じタイミングで飲み物を口にした。

「!?なんですか?これ!すごくおいしいです!コーヒーのようですが・・・初めての味わいです!」

呑んだ瞬間にいろんな複雑な味がして、素直に感想を言ってしまった。

そんな俺を、鳳さんは笑顔で頷いてみてる・・・この笑顔・・どことなく音野さんの面影があるんだよなぁ・・

そんな事を思っていると、鳳さんは早速っと言いながら本題に入る。


そこから色々な説明をしてくれた、鳳プロの成り立ちからどんな仕事をしているのか、モデルとか芸能とか、勤務時間や頻度、お給料の面の事とか事こまかく話してくれた

「それじゃ雅君はご両親はいらっしゃらないのね?・・・ごめんなさい立ち入った事聞いてしまって・・・」

申訳なさそうに俯く鳳さん、もう物心つくころから両親は居ないので俺には特にきにする事ではないし何より井の中には沢山のおじいちゃん、おばあちゃんが俺の事を本当の子供・・いや孫の様に大事にしてくれていたので親が居なくて寂しいと感じる事もなかった。


「鳳さん、気にしないでください。両親はいませんでいたが、それ以上に大切な人たちに、こうして育てていただきましたから」

そう伝えると、幾分かまぎれたのか鳳さんは続きを話だした。

「そうなのね、うん・・・あっ、それでは雅君の法律上の保護者ってどなたになるの?」

今も昔もおれの法律上の保護者は村長でもある、おじいちゃんだ

俺が住んでる所も村長の家の近くにある別宅でご飯も全て音野さんや他のおばあちゃん達が毎日毎日用意してくれた。

俺の貯金や保険の事を考え【保護者】は名義上、村長のおじいちゃんになっている事を鳳さんにつたえると

「そう、では契約書は貴方の地元の村長さんに送るから、住所と電話番号を教えてる?」

そういうと、カバンからメモ帳を取り出し、村長の住所と電話番号そして名前を書いて鳳さんに返した

「ありがと・・・・ん?この名前もしかして・・・・でも・・まさかね・・」

鳳さんは俺の返したメモ帳の名前をみてなにやらブツブツ言っていたが、軽く首を横に振ると俺に飲み終えたか確認して腕時計の時間を見ると次の場所への移動を促した。

カフェから出た二人は、駅に併設されてる駐車場に入ると、見るからに高そうな真っ赤なスポーツカーに乗るように言われ助手席に座った。

「あまり、時間が無いから急いでいくわねw」

そういうと、シートベルトを締めた鳳さんは車に置いてあったサングラスをかけるとニヤリと口元を吊り上げ発進させた。

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