第2話白熊病院にて・・・

男を見舞いに来た若い女は、タイトな赤く長目のスカートを履き、右手で杖を持つ男の背中に手を遣った。


「ゴジラを最初に観たのは6歳の頃で、親父と観に行ったのだが、白黒映画があまり面白くなくて怖いと泣きわめいて映画館の外へ脱出出来たよ。」


余り歩けなかった。

置き忘れたのか・・・。

古い麦わら帽子が木製のベンチにココンと置いてある。

「あそこ・・・。」

指を差した向こうに帽子を手に取るがボロボロと、朽ち果てた。

「腐っているわね。」置き忘れえたのか・・・。

何もの歴史がそこに有った。


「もうすぐ還暦になるけど、50年も前の事だったネ・・・。」


白い歯を見せて笑っていた。


「観えないわ60歳に。」



若く見える顔・・・、と言い掛けたが、東方の幹線道路で、大型トラックのクラクションがそれを制しマジマジと見詰め眼をパチパチとさせた高橋真理亜(たかはしまりあ)と、それを見返す曲り角犬太(まがりかどけんた)は白熊病院が提供した夏虫色のパジャマを着ていた。

 

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