【KAC20244】1000回ささくれてスキル『ささくれ』を獲得して親に試しに使ったら親の『ささくれ』レベルが20244だった

竜頭蛇

第1話 ささくれ



ささくれは親不孝の象徴とされている。

理由は生活習慣の乱れでよくできるものらしく、それを見た親が心配をするらしいからだ。


「あ! またささくれできてる!」


自慢じゃないが、俺にはささくれがよくできる。

この17年という人生の積み重ねの中でもう1000回くらいはできてるのではないだろうか。


「フン!」


端を爪で挟み、思いきり引き抜く。

綺麗に取れた。

できすぎているが故にささくれを取るのも、もはやプロの領域と言ってもいい。


『ささくれを除去回数1000回達成。スキル獲得条件を達成しました。スキル「ささくれ LV1」を獲得』


「何だこれ?」


いきなり機械音声のようなものが聞こえたと思うと目の前にクソデカフォントでささくれという文字が出現した。

触れてみると詳細が表示された。


「なになに、任意の場所にささくれが作れる。へえ-」


ーーー


「グアアアアアア! ささくれ! グアアアアアア!」


試しに居間に寝転がっていた親父に向けて使ったら、本当にささくれができたようで悶え始めた。


「おお! すげえ!」


アニメとかで出てくるスキルを使うのにちょっとした憧れがあったのでテンションが上がる。


『スキル「ささくれ」のLVアップ条件--親への使用を達成しました。スキル「ささくれ LV2」を獲得』


「おお、レベルアップした! 一気に二つささくれを作ることができるのか! 母さんで試してついでにLVアップするか!」


ーーー


「あら。 ささくれ。 しかも二つも。 フン!」


『スキル「ささくれ」のLVアップ条件--親への使用を達成しました。スキル「ささくれ LV3」を獲得』


「おお! レベルアップして、ささくれが一気に三つも!」


レベルアップを喜んでいると背後に気配を感じた。

前を見るとささくれだった床が見えた。


「床をささくれ立ったせて背後に移動を?! もしや母さんも!!」


「どうやら血は争えないようね」


頭をヘッドロックされると背後から母さんの声が聞こえた。


「母さんもちょうどあんたの年頃にスキル『ささくれ』を手に入れたの。その時お父さんと結ばれたのも『ささくれ』で出会うたびに足止めをしていたおかげよ。つまりあんたが生まれたのは『ささくれ』のおかげ。『ささくれ』から生まれたあなたは存在自体が『ささくれ』と言っても過言ではないわ』


「う、嘘だ!? 俺はささくれじゃない!!」


「ふふふ、そうじゃなくとも今からそうなるわ。……最後に教えてあげましょう。私の『ささくれ』のレベルは20244よ」


驚きの事実と共に俺の全身がささくれ始めた。


「グアアアアアア! ささくれ! グアアアアアア!」


肉体だけでなく心までささくれ立ち始めた。

俺はささくれ……。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【KAC20244】1000回ささくれてスキル『ささくれ』を獲得して親に試しに使ったら親の『ささくれ』レベルが20244だった 竜頭蛇 @ryutouhebi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ