第3話 不器用に溺れて

「俺さ、彼女できたわ。」


今日マック行った、的ななんてことないノリでとんでもないことを口走ってみれば、目の前に座る彼女は白けたような目で俺を見た。


「あっそ、で?」

予想以上に冷たい返事に軽く、いやそこそこ落ち込む。

俺なりにアピールしてたつもりだったのに、彼女は気にも止めていなかったらしい。


どう考えても脈なしな返事に、嘘をついたことを後悔した。

というか、彼女より隣にいた友達の方が良いリアクションをしてくれている。

うっそだろお前、信じてたのにぃ!!、とかなんとか言っているそいつを黙らせて、俺は

言葉を口にした。


「なんてな、嘘。」

俺の言葉に明らかに安堵し喜ぶ友人と、ほんの少し目を見開く彼女。

あれ?実は結構効いてた?なんて少しの期待をしていると、彼女はガタッと音を立てて席を立った。


「最低。」

小さく、でも確かに言われたその言葉。

俺は彼女を怒らせてしまったのだと今更気付いた。


狼狽えて、立ち去ろうとした彼女の手首を思わず掴む。

何、と冷たく睨んでくる彼女に、あとかうとか、そんな言葉しか出てこない。


「ごめん。」

やっとのことで言葉にしたその三文字を聞いて、彼女は勝ち誇ったかのようにふっと笑った。


「仕返し。私を騙せるなんて思わないでね。…次やったら絶対許さないから。」


そんな彼女の顔を見て、俺は悟った。

彼女には絶対に敵わない、と。


どうやら俺は、君に溺れるしかないらしい。

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