第51話:次世代パーティと見習いパーティ

 前世の子供時代、アサケ学園で共に学んだみんなは、今はどうしているだろう?

 冒険者活動を再開することにした俺は、20年前にパーティを組んでいたメンバーを訪ねてみた。

 前衛のチャデ、攻撃魔法担当のクロエ、回復魔法担当のマリン、そこに俺も攻撃魔法担当で入るという火力魔法に偏り気味のパーティだったけど、特に困ることは無かった。

 メンバーは俺の学生時代からの縁で、今は高齢のため冒険者を引退したそうだ。

 学生時代の俺たちを指導してくれたOBのダイキチさんは、既に亡くなっているという。


 猫人たちの寿命は100年ほど。

 世界樹の民の10分の1しか生きられない種族。

 分かってはいたけど、もう一緒に活動できないことは寂しく感じた。



「エカ! おかえり!」

「俺たちは一緒に行けないけど、娘のクロネと行ってやってくれ」


 茶トラ猫人チャデと、黒猫人クロエが言う。

 2人が結婚したのは、俺とソナの結婚と同じ頃だ。

 子供が生まれたのは、チャデたちの方がかなり早かったけどね。


「娘のユウナよ。父親に似て弓が得意なの」


 白黒ハチワレ猫人マリンの娘は、チャデたちの娘と仲良しだった。

 パーティを組んではいなかったけど、マリンの結婚相手とも俺は面識がある。


 クロネとユウナのパーティは、回復魔法の使い手も女の子という、女まつりな構成だ。

 そんな中に俺が入っていいのか?

 前衛も女性で、今は産休中らしい。

 その間はフリーの剣士を雇っているとのことで、結成後最初の狩りには臨時メンバーとして俺の息子リヤンが前衛で参加した。


 転生後、初めて魔法を使ってみたら……


火球ファイヤボール! ……あれ?」

「父さん、下位火魔法が上位並みだよ」


 ……前世よりも威力が上がってる?


 見てた息子に苦笑された。

 そういえば、この身体は転生と転移のダブル効果で能力が上がってるんだっけ。

 とりあえず、獲物を消し炭にしないように気を付けよう。



  ◇◆◇◆◇



 クロネとユウナのパーティが女性だけで結成されていたのには理由があった。

 このパーティメンバーは、全員が子持ち(俺も一応)。

 その子供たちはまだ学生で、アサケ学園で寮生活をしているそうだ。

 子供の学校行事は親が参加するものが多く、パーティはそんな時に活動を気軽に休めるように主婦のみで結成したらしい。

 俺は主婦じゃないけど親の縁ということで入れてもらい、休みの時は適当に暇つぶしをしている。



「エカさん、見習い冒険者の引率をお願いできますか?」


 パーティメンバーが子供の学校行事などで休みをとった日。

 暇を持て余してギルドハウスへ行ったら、受付嬢から話を持ち掛けられた。


「OK。ちょうど暇だし、引き受けるよ」


 見習い冒険者と聞いて咄嗟にイオが頭に浮かんだけど、引き受けた引率相手は猫人たちのパーティだった。


「エカさんに御指導頂けるなんて光栄です!」


 と言うリーダーもメンバーも、まだ仔猫っぽさが残る若い猫人たち。

 狩りの様子はまだ未熟さが目立つけど、時折冴えた動きを見せるので、将来有望そうだ。

 そんな彼らは、イオと同じ日に冒険者適性検査を受けたらしい。


「適性検査のイオさん凄かったんですよ」

「完全回避って世界に1人だけのスキルなんですよね?」


 彼らの話によれば、適性検査でイオはその場にいた全員に総攻撃させて、その全てを回避してみせたという。

 完全回避は魔王軍の総攻撃を無傷で突破するためのスキルだから、当然ではあるけど。


「それで、いろんなパーティに勧誘されてたんですけど、自分のペースで活動するからって全部断ってましたよ」


 そういえば、アズも同じような理由で勧誘を断ってたな。

 日本にいた頃のイオは、みんなで賑やかに過ごすのが好きな奴だったけど。

 記憶や心を継承しなくても、似てくるのかもしれない。

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