第14話:爆発と防壁と回避★

 俺は夢のことは考えないようにして、日々を過ごしている。

 日課の自爆&蘇生を続けるうちに、江原が新しい魔法を覚えた。



「♪今日~も元気に……」

防壁バリア!」

「……はいっ! 自爆メガンテ!」


 復活して周囲を見回すと、教室がどこも壊れてない。

 なぜ? 意識が飛んだから爆発した筈なのに。


「よし、成功だな!」


 声がした方をみると、得意気な松本先生がいる。

 その隣には、同じく得意気な笑みを浮かべる江原。


「江原、これからはそれでいこう」

「これの方が小さい範囲で済むから、魔力消費少ないですね」


 先生と江原がそんな会話を交わしてる。

 後でイオに訊いたら、自爆魔法を発動する前に俺を防壁バリアで覆い、その中で爆発させたらしい。

 結果、俺だけが爆発して教室も人々も爆発には巻き込まれなかった。


「あれ? 教室壊れてない?」

「フッフッフ。いつまでも壊されてたまるか」


 キョトンとする俺に、ドヤ顔で言う松本先生。

 隣の江原は苦笑している。


「え~っ、どうせ修復するからいいじゃないですか~」

「そんなに経験値が欲しかったら、魔物に特攻しろ」


 建物の破壊も経験値になるのに。

 俺が不満そうに言ったら、教室破壊より危険度が高いことを言われた。


「夏の森のイノシシに、特攻していいぞ」

「それ、特攻する前に特攻されません?」


 無茶振りする先生。

 イノシシなんて、特攻のプロじゃないか。

 自爆する前に死んじゃうよ?


「それは、イオに標的になってもらえばいいだろう?」


 なるほど、1人じゃなくイオも連れて行けと。

 イオならイノシシ100匹特攻しても大丈夫だもんな。


「江原、お前も行ってやれ」

「……そう言われる予感はしてました」


 先生に言われて、江原は想定内だというように承知する。

 イノシシの流れ弾対策に、防壁が使えるようになった江原も同行か。


「イオがイノシシを集めて、モチが自爆でも攻撃魔法でも適当にやれば狩れるだろ。江原は戦闘中は自分の身だけ守って、後からモチの蘇生をすればいい」


 江原の防壁、俺には使わない方向?

 先生は異空間倉庫ストレージから剣を取り出して、イオに手渡した。


「ほれ、これをやるから前衛っぽい事してこい」

「前衛っぽい事って……」

「斬るとか突くとか適当にやっとけ。モチの魔法で倒せるから標的になれれば何でもいいぞ」


 イオ、本物の剣なんて初めて持つ筈だけど。

 適当でいいと言われて苦笑しながら剣を受け取っていた。



 ◇◆◇◆◇



 翌朝、剣を背負ったイオを見た俺は、その姿を昔も見たような既視感を覚えた。

 心の奥底で、痛みのような感覚と共に、懐かしさが込み上げる。


「ん? なんか変か?」

「あ、いや、似合ってるなと思って」


 俺はじーっと見てしまっていたようで、イオが首を傾げる。

 とりあえず当たり障りのない返事をして、懐かしいような感覚は心の底へ押し下げた。



 イノシシ狩り。

 イオを先頭に、3人で進むのは【夏の森】。

 初夏のような深緑、半袖で過ごせる気温。

 木の葉や草の香りを運ぶ風が心地よい。

 森の中は、木漏れ日が差していて、明るくて気持ち良い場所だ。

 しばらく進むと、地面が掘り返されて土が散らばっている場所があった。


「イノシシのヌタ場かな。土が乾いてないから近くにまだいるかも」


 イオが言う。

 ヌタ場とは、身体の表面に寄生した虫を落とす為に、イノシシなどが転がった跡地だと教えてくれた。


「さすが本好き、詳しい~」

「というか、俺の実家もイノシシ多い地域だからね」

「僕の実家の近くも多いですよ。友達が愛車にイノシシアタックされて泣いてました」


 イオの故郷が田舎だと言う話に続いて、江原の故郷の話も出た。

 友達の愛車の悲劇、状況を想像すると怖いんだが。


「イノシシアタック……」


 ガサッ


 噂をすれば影というやつか。

 呟いたらイノシシ出た!

 想像よりデカイ!


 俺と江原はササッと後ろに下がり、江原は早々と自己防衛のため防壁バリアを張った。

 それ、俺にも張ってくれない?

 あ、でもそうすると魔法を撃てないか。

 江原の防壁は魔法も物理も完璧に防ぐ代わりに、中に入っていると敵に攻撃魔法を飛ばせない。


「じゃあ~やってみよっかイノシシ狩り」


 完全回避があるから防壁不要のイオが、ノンビリした口調で言う。

 剣を抜いて構える姿は、素人の割に格好が付いていた。


「ブヒッ!」


 イノシシがイオを見た。


 ダダダッ!


 足音をたてて、イオに突進して……


 スカッ


 ……見事にはずれた。


「ブヒッ?!」


 イノシシは驚いたようだ。

 再度イオに突進するが、やっぱり当たらない。


「ブヒーッ! ブヒーッ!」


 イノシシはお怒りのようだ。


 あ、仲間呼んだのか。

 新たに3匹出て来たぞ。


 合計4匹でイノシシアタックするが……


 スカッ

 スカッ

 スカッ

 スカッ


 ……全部はずれている。


「「「「ブギィィィー!!!」」」」


 おっと全員激怒したようだ。


 4匹でがイオ取り囲み、距離を詰める。

 イオが俺を横目で見て合図した。


爆裂魔法エクスプロージョン!」


 俺は対象指定型の爆裂魔法をブッぱなした。

 イノシシ4匹、おまとめ撃破!

 爆散しない程度に加減はしてある。


「イノシシアタック、当たらなければ、どうという事はない」


 倒れたイノシシたちの真ん中で、イオがカッコつけて、剣を鞘に納めながら言う。

 やはり完全回避、チートスキルじゃないか?



※イメージ画像

https://kakuyomu.jp/users/BIRD2023/news/16818093075519963790

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る