第7話:動植物学部と魔工学部★

 次に案内してもらったのは、動植物学部。

 生徒の中に我が社の女性陣が多いぞ。

 異世界のモフモフ目当てか?


 白いフサフサした仔犬がいる。

 猫の知的生命体の学園で犬が飼われてると思ったら、神獣フェンリルの子供だと?

 創作の世界で人気のモフモフだ。

 動物に懐かれる体質のイオが、早速撫でて懐かれた。

 白い仔犬が、6歳児に抱っこされながらシッポをフリフリする。

 そのキュルンとした、つぶらな瞳は何?

 神獣の威厳? ……無いぞ。

 ひたすらカワイイだけの最強生物だな。


 俺は様々な標本が並ぶ棚を眺めて回ってたら、ある物を見つけてしまった。


 こっ、これはっ!


 図鑑で見つけて漫画のネタにした、あの生物に似ている?!

 ウネウネ動く、植物のような動物のような、怪しい生き物。

 あとで図鑑を探してみよう。


「モチ、それ何?」

「へ?! あっ、いや、なんでもない……」


 俺がそれを凝視していることに気付いたイオが、背後から聞いてくる。

 慌てて我に返り、俺はなんでもないと答えた。

 イオは俺が何か隠してるな? って顔をしたものの、それ以上は聞いてこなかった。



 ◇◆◇◆◇



「あらぁ~、モチとイオじゃなぁい」


 次に案内されたのは魔工学部。

 声がした方を見たら、プルミエタウンのメンテ部長・詩川さんがいる。

 オネエな部長が、教室の窓を開けて顔を出していた。


 詩川さんは姿が変わっていない。

 日焼けマシンでこんがり焼いた褐色の肌、フィットネスマシンで鍛えた細マッチョな体格のままだ。

 なんで社員さんたちは姿がそのままなんだ?


「詩川さん、なんで社員さんたちは元の姿と変わらないんですか?」

「アタシたち社員は、異世界こっちに来た瞬間にスキルや魔法を覚えたからよ」


 イオが質問したら、詩川さん改め詩川先生が答えてくれた。

 スキルや魔法を、転移ついでに習得するとはお手軽だな。

 異世界転移した時にスキルや魔法を覚えられるのかよ。

 なら、他のみんなも子供になる必要ないような?


「え~? 社員さんたちだけ? 俺たちも最初から覚えられたらいいのに」

「バイトや契約社員たちは、まだキャラ薄いからね~」


 俺が言ったら、詩川さんから謎の答えが返ってきた。

 キャラ薄いって、なんぞ?

 キャラが濃ければ、スキルや魔法が付くんかい。


「それに最初から覚えるものは選べないから、ハズレもあるわよ。笹谷くんなんて【虚弱の極み】ってパッシブスキル付いちゃって、前より体弱くなってるし」

「「それは嫌かも」」


 笹谷さんのパッシブスキルを聞いて、俺とイオがハモった。

 自動で覚えてハズレ引くぐらいなら、自力で地道に習得しよう。

 異世界転移で虚弱が極まった笹谷さん、お気の毒に。

 俺は学園で勉強して、魔法やスキルを覚えよう。


「でも、アンタたちは前世で異世界こっちの人間だったから、その頃の魔法やスキルが残ってるかもね」


 詩川さんは、教室の棚からタブレットに似た平らで四角い物を持って来てた。

 差し出されたのは、俺。

 ん? 前世って言った?

 詩川さん、俺たちの前世関連を知ってるのか?

 いつの間に? みんな昨日こちらに来たばっかりだよね?


「これ、アタシの製造スキルで造った魔導具なんだけど、覚えた魔法やスキルが何か分るのよ」

「試してみたらいいよ。私やリユちゃんみたいに魔法かスキルがあるかも」


 詩川さん、魔道具作成ができるらしい。

 アタルくんが故障したとき、よくお世話になってたもんな。

 プルミエタウンの魔道具をメンテナンスしている間に、作成技術を得たのかな?


「じゃ、ここに手をかざしてみて」

「はい」


 詩川さんがタブレットみたいな魔導具をタップすると、画面が白く光る。

 その光に、俺は片手をかざした。

 すると、魔導具の画面に文字が現れてくる。


【爆裂系魔法】*実装前


 ……え?


「爆裂系魔法?! で、実装前って何?」


 なんぞそれ?


「占い師のジャミに聞いてごらんなさーい」


 詩川さんに言われたので、俺たちはジャミさんのところへ向かった。



※フェンリルの母子イメージ画像

https://kakuyomu.jp/users/BIRD2023/news/16818093075494316011

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