ささくれの心
遊月奈喩多
星だったあの子
忘れられない恋は、ささくれに似ている。
何もしていなくたって時々何かのきっかけで思い出して胸が痛くなるし、だからって無理に忘れようとしたって自己嫌悪みたいな気持ちが募るだけだ。
もう、あの子はわたしのもとを離れたっていうのに。あの子はわたしの世界から消えてしまったというのに。
* * * * * * *
何をするのにも一緒で、愛奈と一緒にいられるならわたしは何だっていいと思っていた。だってわたしには愛奈と意見を
『いこう、
愛奈がそう笑いかけてくれるだけで、あの頃のわたしならきっと空の果てにだって行けた。実際愛奈はわたしに無理難題なんて要求しなかったけど、わたしは愛奈になら何だって要求してほしかった。
小学校の頃は、何かと男子にからかわれるわたしを助けてくれた。輪に入れないばかりに女子からも意地悪されていたわたしに構ってくれた。それでも愛奈自身はみんなと仲良くしていて、そんな愛奈越しならわたしもみんなとちょっとだけ話せて。
あのとき、愛奈はどんな気持ちでわたしを見ていたんだろう? 今となってはそれを訊くことすらできないけど、あのときの愛奈はわたしにとって導きの星で、わたしを救ってくれるヒーローだったんだよ?
『あたしは夏鈴の友達だからね!』
『夏鈴可愛いんだから、もっと笑ったらいいと思うな!』
『この服とか夏鈴に合いそうじゃない!?』
きっと、愛奈にとってはなんてことない言葉だったのかも知れない。友達だと思った相手なら誰にでも、当たり前に言えてしまうような何気ない言葉だったのかも知れない。
それでも、そのひとつひとつがわたしにとっては宝物で、暗い夜空に光る星のように瞬いていた。
だからね、愛奈。
わたし、信じられなかったんだ。
愛奈があんなに簡単に変わっちゃうなんて。あんなに簡単に、遠いところに行っちゃうなんて。
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