第9話「休日に訪問」
土曜日になった。今日はもちろん学校は休みだ。
昔は土曜日も学校があったとのことだが、どんな感じだったのだろうか。まぁ俺は勉強が好きだから、学校があるのはありがたいものだな。ひとりぼっちだけど。
休みの日だからとだらだらと寝ている……なんてことはない。いつもよりは少しだけ遅いが、俺は起きてスーッと深呼吸をして、勉強をする。今日は英語と物理にしようか。英単語を見ながら俺は思う。
(そういえば、リリアさんは英語もできるんだったな。ホンモノに触れる機会があるというのはありがたいというか)
…………。
いや、これは別に友達とかは関係ない。リリアさんという外国出身の人の発音というものは、日本人とはまた違って勉強になる。勉強をしているのだ、俺にとっては大事なことだ。
勉強をして、いつものように朝ご飯を食べて、食後のコーヒーを飲みながらしばらくのんびりしていた。
「翔太、友達ができたらしいな」
急にそんなことを言われて、俺はコーヒーを吹き出すところだった。言ってきたのは父さんだ。父さんも今日は仕事が休みだった。
「い、いや、友達はできてない……」
「そうか? この前女の子が朝うちに来たって母さんが言っていたんだが」
「あ、い、いや、あの子は友達ではない……」
「なんだ、翔太もモテるじゃないか。まぁ顔はカッコいい方だからな、当たり前か」
そう言って父さんがあははと笑った。い、いや、人の話聞いてないな……父さんはこういうところがあるから困る。
……友達、か。
俺は昔から一人でいることの方が好きだった。人との関わり合いがめんどくさくて、一人の方が気楽だ。友達は勉強で十分。やはり某サッカー漫画を思い出すな。
ピンポーン。
その時、インターホンが鳴った。誰だ? 母さんが出ているが、何やら話し込んでいる。しばらくして戻ってくると、
「翔太、リリアさんが来たわよ」
その言葉を聞いて、また俺はコーヒーを吹き出すところだった。り、リリアさんが来た? 今日は休みなのに、なぜ来たのだろうか。
とりあえず俺は玄関に行く。すると笑顔のリリアさんがそこにいた。
「ショウタ! おはよう」
リリアさんは日本語でおはようと言った。おお、覚えたみたいだな。俺も一応「お、おはよう……」と返事をしておいた。
『あれ? なんかショウタ、元気ない? もしかして寝てた?』
『い、いや、それはない。のんびりしてたところで』
『そっかー、よかった!』
『り、リリアさん、何しに来たんだ……?』
『あ、ショウタが何してるかなーって思って、遊びに来てみたよ!』
あ、そ、そうなのか、遊びに来てみた……まぁ、同じマンションだから来るのは簡単だが、そんなナチュラルに言われてもな……。
『あ、そ、そっか、まぁ……』
「――あれ? ああ! この子が新しい友達か!」
その時、後ろから声がした。見ると父さんがニコニコ笑顔で立っていた。
「い、いや、だから友達ではなくて……」
「なんだ、せっかく来てもらったのに玄関で話し込んで。上がってもらいなさい」
「ええ!? あ、いや、まぁ……」
『あ、もしかして、ショウタのパパ!? はじめまして……って、日本語で言わないと』
リリアさんはそう言って「わ、わたし、リリア。よろしく」と日本語で言った。
「おお、リリアさんというのか! はじめまして……って、日本語で言っても伝わらないかな、ハロー、マイネームイズ、コウタワタヌキ……」
片言の英語で自己紹介をする父さんだった。リリアさんと握手もしている。母さんと全く一緒だった。俺は泣きたくなった。
「ほら、翔太、上がってもらいなさい」
「ええ、わ、分かった……じゃあ……」
俺はそう言った後、『あ、リリアさん、ここじゃあれだし上がって……』と、フランス語で伝えた。
『いいの!? おじゃまします!』
リリアさんは笑顔でそう言った後、靴を揃えて上がった。フランスでは靴を脱ぐのだろうか、ふとそんなことを思ってしまった俺だった。
「ふふふ、さっきリリアさんと英語で話したけど、難しいものねー。リリアさん、コーヒー飲むかしら……って、英語でどう言えばいいのかしら、drinkだったかしら」
片言の英語で母さんが言うと、リリアさんに伝わったのか、『うん! いただきます!』とうなずきながら英語で言った。
「リリアさん、翔太の友達になってくれてありがとう……って、英語でどう言えばいいのかな、Thank you Shota's friendかな?」
な、なんか違うが、まぁいいか……友達じゃないと言っているのに、全く聞いてない父さんだった。
そんな感じで、俺の家に初めてクラスメイトの女の子が来たのだった。
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