ダンジョン徘徊

@hly

ダンジョン徘徊

目が覚める。

ああ、そういえば俺はダンジョンに取り残されていたんだったか。

懐かしい夢を見ていたせいで一瞬現状を忘れていた。

今日も出口を探してダンジョンを彷徨う。


幸いなことに、このダンジョンにはたいして強いモンスターは出ない。

しかも毒もないらしくそのまま食べても一度も体調を崩したことがない。

人間、食事と睡眠が摂れれば思ったよりも生きていられるものだ。


おっ、トカゲのモンスターだ。

こいつは俺の腰ほどの体高があるが、そこまで強くない。

殴って殺して肉を貪る。


//


「隊長、見てくださいあれ」

「何だありゃ…ドラゴン、か?」


目の前には出会えば俺達Aランクパーティーでも犠牲を覚悟しろと言われる最強格のモンスターであるドラゴンと思われる肉塊が転がっていた。

人間など容易に一飲みに出来る大きな頭は潰れ、首は引きちぎったかのような不自然な断面で切り離されており、胴体は内臓と皮と骨が少し残るばかりだ。


「一体何がドラゴンをこんなにしちまったんだ? というかこんな風にできるもんなのか?」


隊長の問いは独り言になって消えた。


「…何にせよこれをやったのが今回のダンジョン異変に関わっていそうですね」

「そうだな」

「撤退しますか?」

「いや、危険は承知の上だがもう少し進みたい。せめてドラゴンをこんなにしたなにかが分かれば、今回の異変の対策も立てられるかもしれないからな」

「分かりました」


「5分後に出発する。全員に伝えておいてくれ」

「はい」


//


たまには人間に会いたいなぁ。

長い事ダンジョンの中を彷徨っているが、出口も人間も未だ出会えていない。

見かけるのはモンスターと…うわまた出た。

こいつら小人だけだ。

小人は大体の場合複数人で現れ、衣類を着用し言語を操り武器を用いる。

人間によく似ているが、全く知らない言語の上、モンスターや俺にいきなり襲いかかってくるほど敵対的な存在だ。

ほらまた出会い頭になにか叫んで攻撃してきた。

こいつらの武器はちくちくしてて痛いんだよな。

先頭にいた男の小人を蹴り飛ばす。

あと3匹。

残りの小人が後ろを向きなにか叫ぶと、最後尾にいた女の小人が逃げ出した。

これはいけない。

ダンジョンで群れる生き物を逃がすと後々大群になりまたやってきて非常に面倒になる。

手前にいた小人を素早く掴むと逃げる小人に向けて投げ放った。

ストライク!

2匹とも砕け散り逃亡の阻止に成功した。

残り一匹も捕らえ、よく観察した後に首を捻り殺す。


ああ、今日も何も成果が得られなかった。

いつになれば俺はダンジョンから出られるのか。

家族や友人たちと会えるのか。

拠点に戻りいつものように眠る。

いつか昔に戻れることを夢見て。




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