悪魔の晩餐

羽弦トリス

第1話黒井川警部の苦悩

愛知県西区浄心のマンションで、遺体が発見された。

発見したのは、被害者の家族。管理会社に電話して、警察の人間と共に部屋に入ると裸の女性の死体を発見した。

死後、1週間である事が判明した。

この事件を担当したのは、愛知県警の黒井川だった。

「黒井川さん」

と、声を掛けて来たのは若い川崎巡査であった。

「こんな、真冬に全裸で。こっも寒くなるな。で、遺体の状況は?」

黒井川は、遺体の若い女性のクビに出来たアザを見詰めていた。

「絞殺ですね。このコタツの捻じれコードで絞めた跡があります。それと……」

川崎は低い声で、

「舌が切り取られています」

黒井川は怪訝に、

「舌?」

「はい。舌を根元から切り取られています。こちらにどうぞ」

川崎はキッチンに黒井川を案内した。


そこにはフライパンで何かの調理跡があった。

「切り取った舌を、ニンニクと鷹の爪で炒めています。ここが、ちょうど舌の先っぽに見えたので、鑑識に舌だと説明されました。これは、後で詳しく調べますが……」

黒井川はこの事件が泥沼化することを恐れていた。

「警部、取り敢えず聴き取り調査してますが、これと言った情報は無くて」

「防犯カメラがあるだろ?」

「外部からのケーブルを切断されていて、1週間ほどカメラは映っていませんでした」

死体の舌を切断して、調理した犯人の人物像が浮かばない。

現場を後にした黒井川は、ハイライトに火をつけた。

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