ゴリラの心はささくれている

ぱぷぅ

けば立て突き刺せさかむけろー

 今回はいつにもまして荒れていた。

 毎回唐突に行われる異世界召喚。

 最初の方は元の時間に帰還する事も出来ず、行方不明扱いで高校も中退。

 高卒認定の勉強も大学受験も途中で年単位の時間が空けば忘れてしまうのは当たり前である。

 それでも普通の大学生活というものを送ってみたかった俺はあきらめなかった。


 就職活動も何度も邪魔をされた。

 正直異世界産の金や宝石を売りさばいて遊んで暮らそうかとも思ったけど、出どころを探られると捕まりかねないと断念したぐらいである。


 そんな何度も何度も異世界召喚によってぶつ切りにされた人生、今回は特に頭にきた。


 ───何故ならば。



 明日からH〇NTER×〇UNTERの連載が再開なんだよおおおおおおおおおおおおお!!!


 わかるか!?

 ただでさえ年単位で休載きゅうさいする上に、途中で異世界に呼ばれるとそこで数年かかってたんだぜ?

 近頃ちかごろは魔王倒すのに1か月どころか最短2分でいけるけどさ、休載きゅうさい+数年たったらもう話忘れてるっつうの。

 何度1巻から読み直したと思ってるんだコノヤロウ。


 そんなタイミングで召喚されたのである。

 心がささくれ立ってしょうがない。


 よし、今までの経験から考えて、魔王を倒すと同じ世界に呼ばれる事は無くなるはずだ。

 今回はささくれで魔王を倒そう。


「よくいらっしゃいました勇者様」


 目の前にはおごそかな雰囲気の女性が杖を手に微笑ほほえんでいた。

 コック帽のような高い帽子に、ワンピースの上から貫頭衣かんとういを被ったような僧侶っぽい服。

 どちらも中央には花をモチーフにしたシンボルが入っている。

 そういう宗教なのだろうか。

 その子の周りには同じシンボルの入った服を着たオッサンが並んでいる。

 デブ・デブ・デブ・デブ・テム・デブ・デブ・デブ・デブ・デブ。


 ……デブしかいねえな!

 いや、なんかテムが混ざってんな!!!!!

 テムって誰だよ!


「オレ、マオウ、タオス。

 マオウ、ドコ、バショ、オシエル。」


 おっと気がはやって片言になっちまったぜ。

 すぐに魔王の全身をささくれにしてやる。

 そしてそれを流れとは逆にでまわしてやる。


「ま、魔王の居場所はまだわかっていません。

 この世界のどこかにはいるはずなのですが……」


 聖女っぽい人が恐る恐る答えてくれる。

 片言だけど知能が低いわけじゃ無いのよ?


「こんな頭の悪そうな奴が勇者だと?

 召喚の議をやり直した方がいいのではないか?」


 テムこいつ態度悪いな。

 人の楽しみを奪っておきながらその言いぐさ、許せん!ささくれまみれにしてやろう!


Bamboo late afternoon暮れ difference fence example sand Sacreサクレ……」


 ポンッ!


 テムのつま先から頭まですべてがささくれになった。

 まるでモ〇ゾーである。


「よーしよしよしよし」

「ぎゃああああああああああああああああ!」


 ムツゴ〇ウ師ばりのよしよし攻撃に悶絶絶叫するテム。

 テムって名前だったのだろうか。よくわからん。


 徐々に浄化されて光の粒子となっていくテム。



 ……あれ?



 よくわからない内に足元に帰還の魔法陣が浮かび上がる。

 どうやらテムが魔王だったらしい。なんじゃそりゃ。

 ちゃんと元の時間に戻れるように調整していじっておかないとね。


「こいつが魔王でした、倒したので帰ります。

 HUN〇ER×HUNTE〇も読みたいし。」


「あ、はい。ありがとうございました……」


 唖然とした表情をしたまま俺を見送る聖女っぽい人。

 あれ、今回最短記録だったんじゃね?

 ささくれだった心もすぐに帰還出来たことで少しはマシになりましたとさ。

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