パンダに戦いを挑む猫

鳥頭さんぽ

第1話

 俺は隣に住む幼馴染と動物園に来ていた。

 俺はデートのつもりだが、あっちはそう思っているか不明だ。

 もちろん、確認したりはしない。

 俺達は動物園の人気者、パンダの檻の前にやって来た。

 その時だ。

 笹をムシャムシャ食べているパンダの前に颯爽と猫が現れた。

 その猫には見覚えがあった。

 幼馴染は手にしたキャリーバッグを覗くと中は空だった。


「あら、いつの間に?」


 やっぱり、あの猫は幼馴染のペットかよ!


「まったく困った子ね」

「そんな事言ってる場合じゃないだろ!」


 猫の登場に周りの客が騒ぐ中、緊張感の全くない呑気な幼馴染に小さな声で言った。


「おい、どうするんだ?」


 俺の問いは幼馴染には聞こえなかったようでトンチンカンな事を呟く。


「あの子、パンダに何か言ってるわね。『ささくれ』って言ってるのかな。あの子食いしん坊だから」

「そんな訳ねえだろ!!って、そんなこと言ってる場合じゃないだろ!」


 思わず声を上げてしまったが、幸いにも皆の目はパンダと猫に向けられており、俺に関心を持つ者はいない。


「あっ」


 幼馴染の呟きで俺も猫達に注目する。

 ちょうど猫がパンダに向かって足を上げて、くいくいっ、と手招きするところだった。

 かかってこい、と挑発しているようだ。

 その姿はパンダの目に入っているはずだが、全く動じることなく、笹をムシャムシャ食べ続ける。


 そこへ飼育員が現れた。

 パンダを刺激しないように猫に近づき、捕まえようとするが猫は難なく回避してパンダの檻から脱出してどっかに消えた。



 しばらくして猫がひょっこり俺らの前に現れた。

 見事、動物園の追手?から逃げ切ったようで、その顔はなんか誇らしげだった。

 って、お前、迷惑しかかけてないぞ!


「もう心配したわよ」

「みゃ」


 幼馴染は猫を抱き上げ、キャリーバッグへ入れる。

 猫は素直に従った。

 きっと遊び疲れたからだろう。


「よしっ、さっさと脱出、……じゃなくて出るぞ!」

「何よ、それ。まるで逃亡者みたいじゃない」

「誰のせいだ!?」

「誰かしらね?」

「みゃ?」



 動物園を出てほっと安堵の息を吐く。

 もちろん、幼馴染に文句を言う。

 

「お前、ペットの教育がなってないぞ」

「あなた、それしか言えないの?その言葉聞き飽きたわ」

「お前が全く反省しないからだろ」

「酷いわねえ」


 幼馴染が猫に同意を求める「みゃ」と鳴いた。


「で、次いつ行く?」

「二度と行かねえよ!」


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