幕間 ~精霊王の武器~

 風の精霊王アルは、朝起きると神棚に祀ってまつってある、真人に模した人形に挨拶と祈りをすることから始まる。

 真人型人形は20センチ程で、アルゴンスパイダーの糸から自身の手で裁縫し、中身はアルの魔力の風の塊が入っているため、手触りも感触も最高の仕上がりになっている完全な非売品だ。

 もちろん寝室には、等身大の真人型抱き枕もある。

 クリスはクリスで真人型人形を作っていることだろう。

 挨拶と祈りを終えると、顔を洗い歯磨きをして、エプロンを着けたら朝食作りだ。

 朝食はいつも果物やサンドイッチなどの軽めの物を取り、食べ終わると外出するために着替え、いつもの巡回コースを回る。

 まずは、キラービーのところ、次にアルゴンスパイダー、最後に果樹園に行き、問題の報告や意見がないか確認する。

 問題の報告があれば対処するといった感じだ。

 一番多い問題は、収穫間近の物を食い荒らされることだ。

 この場合、荒らすというよりは、綺麗に無くなると言った方が正しい。

 犯人はわかっており、捕まえようと罠を張るも、逃げ足だけは早く捕獲に至っていない。

 に幾度となく注意するのだが、私じゃない!と、いい匂いを漂わせながら言い逃れをしている。

 ディーネのことはさておき、見回りが終わると、48階層の中央にある建物へ赴き、ここでも問題の報告がないか確認する。

 ここは役所のような場所で、イルムド帝国の奴隷から解放された者の住人登録や働き口の斡旋、アイテムや備蓄品の管理などをしている。

 ここの街は、税は発生しないが、困ったことがあれば役所に報告すること、必ずお互いを助け合うことなどをルールに生活している。

 ここまでを大体午前中で終わらせて、食堂で昼食を取り、自宅へと戻る。

 そして昼からは、春風を手に訓練だ。

 真人から春風をもらい1年が経過するが、未だに完璧とはいかず、春風もアルの魔力に順応し、どんどん成長している。

 魔力の通り、魔法の展開速度、規模も大きくなりつつあり、できるだけ人がいない所で毎日訓練し、集中力を高めるために、真人から教わった座禅をして、最後に心を落ち着かせたら訓練終了だ。

 訓練が終わり自宅に戻ると、ソファーに座り、一息ついたら春風の手入れだ。

 綺麗に拭きあげ、愛情いっぱいに撫で回し、頬擦りも忘れない。

 この時のアルは、うっとりとした表情で春風に見惚れて油断していたため、1人の人物が近づいていることに気づいていなかった。

 アルは春風を手に、ニヤニヤしながら言った。

「はぁ~。主様から頂いた春風は素晴らしいですわ。日に日に美しくなっていってる気がしますわ」

 そして、ついに!見つかってはいけない者に見つかってしまった。

 アルの背中からひょっこりと顔を出したディーネが言った。

「アル~?何一人言言って・・・そ、それは!?」

「っ!?・・・・・」

「えっ!?ちょっと!待って!わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 アルはディーネの声を聞くと、ビクッと体を震わせ、無言で立ち上がり、ディーネに向かってウィンドボールを放ち、その場から逃走した。

 壁にぶつかり倒れこんだディーネは、アンデッドのようにゆっくりと立ち上がり、すぐにアルを追いかけたが、当然見つかるわけもなく、必死になってルタとサラを呼んだ。

 ルタとサラは、ディーネのボロボロになった姿と、焦った様子を見て緊急事態と判断し、ディーネの言う通り、急いでアルを探し始めた。

 まぁ、ディーネの言う内容は「アルが危険な物を持っていて誰かに狙われている」というものだったが・・・。

 危険な物とは、一瞬だけ見た真人の魔力を感じる物で、誰かにではなく、ディーネにの間違いだ。

 さすがに3人の手による捜索にはアルも勝てず、ディーネは空気中の水の魔力で、ルタは地面に伝わる魔力から、サラは温度変化から伝わる魔力でアルを探しだし、48階層にある広場へと、ついに追い詰めた。

 ディーネとルタとサラは、アルと対峙し、ディーネがアルに向かって言った。

「ついに追い詰めた!アル!さぁ!その手に隠してるのを渡しなさいっ!」

「何言ってるのよディーネ!私は何も持ってないわ!」

「ふーん。シラをきるつもりね!2人共!やるよっ!」

 そして、ルタとサラはディーネから言われていた作戦を実行した。

 まず、ルタはアルの足元へ手をかざし、土を操り足を拘束した。

「っ!?あ、足がっ!」

 アルが足元に気を取られてる隙に、サラが後ろへと周り、羽交い締めにした。

「うっ!?あっ!」

 すると、カランとアルの手から春風が落ちた。

 それをいつの間にか忍び寄っていたディーネが春風を拾いあげた。

 次の瞬間・・・

「風の精霊王アル!水の精霊王ディーネが討ち取ったりー!」

 と拳を突き上げ、わけのわからない勝鬨かちどきをあげた。

 その様子にルタとサラは顔を見合せ首を傾げた。

 そして、ルタとサラは、アルから魔力が漏れだし、プルプルと震えてることに気づいた。

 ディーネはその場で小躍りしており、アルには気づいてないようだ。

 アルの様子にルタとサラの2人は、これはマズイ!と判断し、いち早く逃げ出した。

 しかし、時既に遅く、アルの風の結界により閉じ込められていた。

 ディーネはまだ気づいていない・・・。

 2人が戦々恐々としていると、アルは叫んだ。

「『春風っ!』」

 すると、その魔力の込められた声に春風は反応し、ディーネの手からシュッ!と消え、アルの手におさまった。

 ディーネが春風が消えたことに気づくと、ようやくアルの結界に閉じ込められていることに気づき冷や汗を垂らした。

 この結界内の空間は、アルの絶対領域になっており、いくら同格の精霊王といっても領域内に引き込まれてしまうと、不利になることは間違いない。

 本気になれば破ることはできるだろうが、そうなると、48階層は悲惨な状況になってしまうだろう。

 それは4人共把握してるため、真人に怒られることを考えれば、自分の怒りなど些細な問題だ、と理性を取り戻すのが毎回のやり取りだ。

 ディーネは、しばらくしたらアルも落ち着くだろうと思っていた。

 しかし、この日は違った。

 アルは春風を広げ右手に持ち、縦に構え、そのまま、右手、右足を後ろに引いた。

 左手はディーネに照準を合わせている。

 そして、春風に膨大な風の魔力を注ぎむと、春風はキィーンという甲高い音とともに微振動し始め、次第にバチバチという音に変わった。

 ディーネは焦り、アルの後ろの方にいるルタとサラに顔を向けるも、2人は必死に首を横に振った。

 どうやら止めることは無理らしい。

「えっ。ち、ちょ、ちょ、ちょ」

 ディーネがなにもできずあたふたしていると、ついに、アルの右手がディーネに向かって突き出され、春風から魔力が放たれた。

「ハァァァァ!メイグウ流風神術一式ふうじんじゅついっしき風雷斬ふうらいざん!」

 すると、縦に3メートル程ある薄い刃のような光が発生し消えた。

 ディーネは、耳元でヒュンッ!と音が聞こえたあとに、体から20センチ程横に違和感を感じ、横をみると地面にはアルの方向から抉れたえぐれた跡がついていた。

「・・・・・」

 ディーネが唖然としていると、強烈な突風に襲われた。

「う、うゎぁぁぁぁぁぁぁぁぁぉぁ!うっ!?」

 ディーネは、速すぎて斬撃を認識することが出来ず、通りすぎてしばらくしてから斬撃の反動が風になり伝わってきたことに気づいて、恐怖でガクガクなりながら膝をつき、体をブルッと震わせるとペタンと地面にお尻をついた。

 ゆっくりと後ろを向くと結界も破壊されたのか消えており、斬撃の跡が続いていた。

 アルから放たれた斬撃は、運良く誰もいなかった大通りの道の真ん中を斬り進み、遥か先にある門に当たりドォーン!という激しい轟音と振動とともに止まった。

 ルタとサラは口をポカーンと開けてその様子を見ており、アルがパチン!と春風を閉じた音で尻もちをついた。

 アルは背中側にいたルタとサラの方に振り返りながら

「今日はこのへんにしといてあげるわ!どうせルタとサラはディーネに巻き込まれたのでしょう!」

 2人は必死に首を縦に振った。

 アルはチラッとディーネの方を見ると、目を見開き、顔を青ざめさせた。

 そこには一直線に続く斬撃痕があったからだ。

 もはやディーネのことはどうでもよくなり、頭を抱えて座りこんだ。

 ルタとサラは呆然となり尻もちをつき、その5メートル程離れて、頭を抱えて座るアルがいて、さらに5メートル程離れて、ディーネが唖然となりぺたん座りをしているという、非常に理解し難い現状だ。

 そこに、先程の衝撃に気づいた、真人とクリスが現れた。

「大丈夫か!?何があった!?な、なんじゃこりゃ!?」

「マスター。他の魔力は感じないから襲撃じゃない。これはアルの魔力が残ってる?」

 2人はアルの方を見るも、頭を抱えて座りこんでおり、反応がない。

 次にルタとサラの方を見ると、尻もちをついており、首を横に振っている。

 不思議に思い、首を傾げながらディーネを見ると、声をあげないものの、正座のような格好で、片手を真人に向かって差し出してきた。

 真人はディーネに近づいていき、立ち上がらせようと手を取った。

 ディーネは真人の手を握り、立ち上がろうとしながら

「ま、真人しゃま・・・」

「な、なんだ?」

「も、漏らしちゃった・・・。いたっ!」

 真人はディーネの言葉を聞き、びっくりして手を離してしまった。

 ディーネはお尻を地面に打ち付けたようだ。

「す、すまん・・・」

「ディーネ。マスターに寄るな。シッシッ」

「な、何があったんだ?」

 ディーネは自身にクリーンの魔法をかけ、立ち上がろうとしたが立ち上がれず、真人の腰にしがみついた。

 そして上目遣いで言った。

「アルにいじめられました」

「っ!?」

 すると、アルはバッと顔を上げて立ち上がり、真人に詰め寄った。

「あ、主様!違うんです!ディーネが・・・」

「ま、まぁ、2人共、落ち着け」

「ほら!アルもディーネもマスターから離れる!早く!」

 クリスはまるでボディーガードのようだ。

 しばらくして4人が落ち着き、広場の一画に座りこみ、話しを聞き出した真人は

「よし!4人共!正座!」

「「「「は、はいっ!」」」」

「今回はアルが悪いだろう。だが、俺もアルにだけ春風を渡して、3人に話さなかったことにも原因がある。そこは配慮にかけていたから謝ろう。そこに出来た斬撃痕は4人で直すんだ。ルタはコンクリートの製造、サラはそれを運ぶ、アルとディーネはコンクリートで道を修繕する。わかったか?」

「「「「は、はい・・・」」」」

 4人はシュンと項垂れた。

「そのかわり。3人にも何か作ってやろう。正確にはリアとリムの分もだがな」

 3人はバッと顔をあげて目をキラキラと輝かせた。

「「「はいっ!ありがとうございますっ!」」」

「それにアルも春風も大分成長したな。これだけの斬撃痕が残るなら最上位魔法に勝るだろう。ヴィアのより威力があるかもしれんな」

 アルはゆっくりと落ち込んでいた顔をあげて答えた。

「はい。主様。無我夢中でしたが、世に出しても恥ずかしくない仕上がりだと思いますわ。ヴィアに負けてられませんもの」

「そうか。よし。アルにはこれを渡しそう」

 真人は空間収納から春風と同じ物を取り出し、アルはそれに気づくと正座を止め、片膝をつき、両手を掲げて受け取った。

「主様。ありがたくちょうだいいたします」

 そして、先程の顔は嘘のように、ニマニマとしただらしない顔になった。

「これの名前は夏風だ。緑色の春風に対して黄色なんだが、夏風は新しい属性を作って付与してある」

「あ、新しい属性を作った?私が新たに属性を得るということでしょうか・・・?」

「ああ。そうだ。斬撃痕に焦げた跡があるだろ?あれは摩擦で生じた雷のはずだ」

「雷属性・・・。直感で頭に浮かんだ技の名前とも合いますわ。ですが主様はこうなることをわかってたんですの?」

「まぁ、元々風の派生は雷だと思ってたからな。アルが訓練を怠らなかった証拠だ。だから渡すことにした。よく頑張ったな」

「あ、主様・・・。ぐすっ」

 アルは感動して涙を流した。

 しかし、真人はニヤニヤしながら言った。

「もしかしたら、新たに雷の精霊王が誕生するかもしれんな~。そうなると夏風は・・・」

 アルは焦り始め、真人にしがみついた。

「っ!?あ、主様!それはないですわ!私が絶対雷属性も使いこなしてみせますわ!」

「お、おお。そ、そうか。ん?クリスはどこいった?」

「マスター。ここ」

 真人はクリスがいないことに気づき、周りを見渡すと、正座してるディーネたち3人の後ろにいた。

 3人は先程のキラキラした顔とは違い、再び俯いてプルプルしていた。

「クリス。何してるんだ?」

「ん。痺れてるはずだから刺激を与えてる」

「・・・やめなさい」

「むぅ。しょうがない。おもしろかったのに」

 3人はハァーと息を吐き、足を崩した。

「ディーネ、ルタ、サラはどんなのが欲しいんだ?希望の形はあるか?」

「真人様に作ってもらえるならなんでもいいですっ!」

「ご主人様に作ってもらえるならなんでもいいよっ!」

「主に作ってもらえるならなんでもいいっ!」

 3人は声を揃えて叫んだ。

「そ、そうか。だが1ヶ月程待て。その間にちゃんとここを直すんだ。アルもいいな?」

 4人は勢いよく首を縦に振った。


 1ヶ月後、真人はディーネ、ルタ、サラを47階層の闘技場に呼び出した。

 3人はソワソワと落ち着きがなく、気になったのか、クリスとアルもいるようだ。

 真人が3人に近づくと、膝をつき頭を垂れた。

「ディーネ」

「はい。真人様」

「ディーネには水の中でも振るえるように、三叉槍だ。名前は水泡すいほう

 真人は顔を上げたディーネの両手に、1メートル程の先の方が3方向に別れた槍を渡した。

「真人様。ありがたくちょうだいいたします」

「これは魔力をこめると伸ばすことが可能だ。斬ることもできるが、突くをイメージするといい」

 言ったそばから、ディーネは水泡に魔力をこめ伸ばした。

 すると、水泡はディーネの両手の上でシュンと2メートル程に柄が伸び、隣で頭を垂れていた、ルタのピョコンと出ているアホ毛を斬り飛ばしてしまった。

 頭を垂れていたルタは、地面にパラパラと落ちてくる自分の髪を見て、何が起きたか把握した。

 そして、ディーネ。あとで覚えてろ。と呟いた。

 今のディーネにそんな呟きが聞こえるわけもなく、ディーネは満足そうに水泡を短くし、石突きを地面について水泡を立てた。

 真人はルタのアホ毛がなくなった頭を見て、笑いをこらえながら、先に進めることにした。

「次にルタ。ぷっ」

「・・・はい。ご主人様。今、笑いました?」

「ゴホンッ!いや笑ってないぞ。ルタには一番使い慣れてる槌だ。名前は撃震げきしん

 真人は、ルタの両手に1メートル程で

 先端に菱形の板状の物が何枚もついていて、柄は丸く、石突きは三角錐になっている槌を載せた。

「ご主人様。ありがとうございます。必ず役に立ててみせます」

「撃震に魔力をこめると、先端の菱形の板が刃に変形し、柄は鎖に変わり伸ばせるようになるんだ。もちろん先端を板状のままでも鎖にすることができるぞ。槌の時はメイス、鎖の時はモーニングスターのような使い方だな」

 相当な重量があるはずだが、ルタは片手で持ち上げくるっと回して石突きを地面ついて撃震をたてた。

「最後にサラ」

「はい!主!」

「サラには斧だ。名前は撃轟げきごう

 真人は、150センチ程の、八角形の棒をサラの両手の上に載せた。

「斧?主。ありがとうございます?」

 サラは受け取った斧を見て、不思議そうに首を傾げた。

「斧と言っても今は八角形をした棍棒だがな。それには二通りの使い方があってな。両端を引っ張ると三節紺になる。もう一つは魔力をこめると、斧の刃が出てくる。ある程度大きさも調整できるから、その場に合わせて使いやすい大きさにするといい」

 「主!ありがとうございます!使いこなしてみせます!」

 サラは説明を聞くと、キラキラした目で真人を見て大きな声を出した。

 そして棍棒を地面につき立てた。

「ダンジョンで何か起きた時は、お前たちにも対処してもらうからな。訓練を怠らないように!使えば使うほどお前たちに合わせて成長していくはずだ」

「はいっ!この身は真人様のために尽力します!」

「うんっ!この身はご主人様のために尽力するよ!」

「はっ!この身は主のために尽くす!」

 3人は一斉に立ち上がり右手を胸当てて叫んだ。

 そのまま解散するかと思いきや、ルタはディーネに寄っていった。

 真人が何をするのか離れて様子をみていると、クリスとアルも近づいて声をかけてきた。

 どうやら2人にも先程のルタの呟きが聞こえてたようだ。

「マスター。何すると思う?」

「さぁな。ただ、ろくでもないことは確かだ」

「まぁ、私たちも、やられたらやり返せが常ですわ。それに髪は女の命ですもの。謝るならまだしも・・・」

 ルタはディーネに近づくと、撃震の自慢をしているようだ。

 そしてディーネが言った。

「そんな言うなら貸して!」

「いいよ」

 ルタは返事をした一瞬、ニヤリとした。

 3人は不思議に思いながらも、その様子を見逃さなかった。

 ディーネがルタの方に両手を差し出すと、ルタは撃震を載せた。

「っ!?お、おお、おもっ!ぐっ!ぐぎぎ」

 ルタが軽々と渡した撃震の重さに、腕が下がりながらも、ディーネは必死に耐えた。

 次の瞬間、ルタは撃震に魔力を流した。

 すると柄の部分が鎖に変化し、支えを失った一番重い先端部分が下に落下し始め、急に軽くなったことに安堵していたディーネは、鎖を持つ力を緩めてしまった。

 軽くなったのも束の間、鎖と繋がっていた先端部分の重量が加わった。

「っ!?」

 ディーネはびっくりして手に力を入れるも、時既に遅し、手から鎖は滑りだし、先端部分は落下することとなり、ついにディーネの足の甲の上に落ちた。

「い、い、いぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 ディーネは涙声で片足で跳び跳ね周り出した。

 ルタはその様子にうんうんと頷いていた。

「まぁこんなもんか。今日のところはこれで許してやろう。サラ帰ろう」

「あ、ああ・・・」

 ルタは撃震を回収し、サラと共に闘技場を出ていった。

 真人、クリス、アルの3人はその様子を見て身震いさせながら言った。

「ル、ルタも中々やりますわね」

「ん。あれは痛い」

「あ、ああ。だがあれが刃の状態だったら、足が失くなってたな」

 そして、ディーネが足を引きずって真人にしがみついてきた。

「ま、真人しゃま~。痛いです~。ルタになんとか言ってやって下さいよ~」

「ダメだ。元々はお前がルタのアホ毛を斬り飛ばしたことが原因だ。ルタのアホ毛が戻るまで治療は禁止だ」

「そ、そんな・・・。ハッ!?わかりました!食堂でおとなしくしときます!」

「お、おいっ!なんで食堂・・・」

 ディーネは1日中食堂にいるつもりなのか、水泡を杖に立ち上がり、走って闘技場を出ていった。

「なぁ・・・?あいつ足を痛めてたよな?」

「きっと痛みより食欲が勝ったのですわ」

「マスター。ディーネには食べ過ぎたらお腹痛くなる呪いをかけよう」

「・・・本気で考えてみるか」

 3人は静かになった闘技場をあとにした。

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