第1話 転生

「そうか・・・。やっぱり俺は死んだのか。最後の最後に気になることを言い残したな。せめて最後まで聞きたかったが・・・。でも綾先輩が助かったみたいだからよかったか。しかし、どういうことだこれは?地獄だとしても色が無さすぎるだろう!まぁさすがに地獄はないか。だが天国でもなさそうだ」

 辺りを再度見回すと、やはり暗闇に包まれており、意識だけのせいか手足を動かすこともできない。

 というより手足が存在してないようだ。

 自分の体はどうなっているんだ?と考えたところ、視界にパッと半透明の板のようなものが現れた。


 迷宮魔人めいきゅうまじん(???) LV1 Fランクダンジョン

 

 HP――― MP―――

 

 称号 転生者、ダンジョンマスター

 

 スキル 鑑定(LVMAX)

 

 固有スキル 創造魔法、言語理解、迷宮掌握


「な、なんだこれは・・・?もしかして俺のことか?名前が変わってる?迷宮魔人?確かにめいぐうまひととも読めるが・・・。それに名前の横の???はてなはなんだ?ダンジョンマスター?転生者ってあるから転生したってことか?」

 どうやら俺は名前で判断されたのか、ダンジョンというものに転生したらしい。意味不明だ。

「転生するならせめて人間に転生してスローライフでもしたかったが・・・。いや、冒険者になって世界を旅して回るってのもありだな。それも叶わぬ夢となってしまったが、まぁなってしまったのは仕方ない」

 しばらく呆然として落ち着いてから受け入れることにした。

「転生モノはラノベで何度も読んだが、ダンジョンに転生なんて新しいパターンだな。こういう異世界転生ってのは普通、真っ白な空間に連れられて神様から説明があるんじゃないのか?まさかの説明なしの真っ暗なパターンなんてひどくないか?」

 いかにもなテンプレをつぶやきながらあることに気づいた。

「あれっ?声は出せるのか。1人で話してるなんて周りに人がいたら不審者扱いだったな」

 ダンジョン自体に転生したこともあり、体が存在せず意識だけがある状態なのはわかったが、どこから声が出ているのか不思議だ。

 しかし、わからないものはわからないので諦めることにした。

「とりあえず、さっきの半透明の板を呼び出して何が出来るか確認だな」

 おそらく異世界では定番のステータスというものだろう。

「ステータスオープン!おっ!出てきた。でも声に出すのはなんとかならないものか」

 これは絶対に後から改良しようと思いながらステータスを眺める。

 まず名前についてだが、これは前世の名前に基づいて迷宮ダンジョンというものに転生したフシがある。

 なんのために転生したのか理由は不明だが。

 「しかしなぁ~。魔人だなんて強そうだけど、なんとも厨二病っぽい名前だ。少し恥ずかしくなってきた。名前の変更はできないものか・・・」

 期待して呟くも、勝手に名前が変更されるという都合がいいことは起こらなかった。

 次にレベルだ。

 レベルがあるのはランクと連動しているのだろう。

 レベルが上がるとダンジョンのランクも上がるはずだ。

 レベルの上げ方、どこまでランクが上がるのかは不明だ。

「それにしてもレベルがあるということは、何かを倒すと考えるが普通だろうが、俺はダンジョンだからな。まさか人間を倒すとか取り込むとかそういうことになるのだろうか?」

 それにHPやMPの項目はあるが数値がない。

 生命力や魔力だと思うが、ダンジョンだから死亡しないということだろうか?

 「しかし、ダンジョンと言ったら核があるはずだ。もしこの世界にラノベで読んでいたような冒険者という者がいるとしたら、冒険者たちは核を狙ってダンジョンに入ってくるんだろうな。その冒険者たちを倒せってことか?今の俺は何もできないんだが・・・。これってもしやピンチでは・・・?」

 どんどん調べなければいけないことが出てくる。

 称号の転生者はともかく、ダンジョンマスターとなっているから核のことは間違いなく最優先だ。

「スキルの鑑定も異世界では定番だな。人間に転生できてたら商人にでもなれたのにな」

 しかし、MPがないからなのか、鑑定が出来る物がないのか、使い方がわからないため次の固有スキルを見ることにした。

「言語理解もこれまた定番だな。というか言語理解がなければ確実に詰むだろ!」

 転生した理由は不明だが、言語理解というスキルをつけてくれたことから、もしかしたら親切な神かもしれない。

 神というのがいるかどうかはわからないが一応感謝はしておこう。

「それに創造魔法は使いこなせればチートなヤツになりそうだ。やはりこの世界には魔法というのがあるんだな。少し楽しくなってきたぞ」

 迷宮掌握はダンジョンの状況を把握するものだろう。

 まさしく俺だけの固有スキルだ。

 しかし、迷宮掌握を使ってみたが暗闇から変わることはなかった。

 一通り目を通したところで気になっていた創造魔法に鑑定を使ってみることにした。

 ステータスの時のように、頭の中で念じて唱えれば大丈夫だろうと思い

「鑑定!おっ、やっぱり出てき・・・たっ!?」

 半透明の板が出てくると思っていたが、頭の中に文字が浮かんでるように表示されたため少し驚いた。

「確かに板の状態で表示されたら周りに見られるな。いや、もしかしたら俺以外には見えない可能性もあるのか。それにMPを消費しなくても使えそうだ」


 創造魔法・・・MPを消費してイメージしたのを作り出せる。複雑になるほどMP消費が多い。


「やっぱりチートなヤツだな。俺はMPがないけどそれでも使えるのか?普通は何かしら制限がありそうなもんだが・・・」

 とりあえず使ってみるかと思いつつ、何も作る物がなかったので断念した。

 こういう時に限って思い付かないのが不思議だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る