ささくれだった心には
みこ
ささくれだった心には
ささくれだった心を癒すのは何であろうか。
世の中は、世知辛いものである。
思い通りにいかない。
思い通りにいかないものだから、無難な感じでのんびり過ごせればいいやなんて思ってもみるけれど、それすらも想像よりも下になる事さえある。
自分の不甲斐なさに絶望する。
冷たい視線に耐えねばならぬ。
平日の昼間に見かけるサラリーマンらしきスーツの男性が呟いているのを聞いたことがある。
「なんで俺より若い奴の方が給料が上なんだよ……。俺だって必死に資格取ってさぁ……」
辛いものである。
男性に同調する。
今日などは、子供が私の事をじっとみて、ニッと笑った。
そして小さな声で、
「こいつさぁ……」
なんて言うのである。
なんとコイツ呼ばわりとは。
こちとら、この子供よりは長く生きているのである。
余りにも小声だったので聞き取る事は出来なかったが、それを聞かされた母親らしき人間がこっそりと苦笑したものだから、あまりいい事ではない事だけはわかった。
そういった細かい事が積もりに積もって、私の心はささくれだっていくのである。
さながら、森に打ち捨てられた折れてしまった木の様に。
そんなささくれだった心を癒すものはなんであろうか。
それはやはり、食事である。
向こうの木陰で、アイスクリームを食べるご婦人方が見えた。
なんと優雅な光景であろうか。
私などは、一つの食べ物にこだわるタチで、あまりああいった気取ったものは食さない。
いつも同じものを食べたっていいじゃないか。その方が落ち着く奴だって居るのである。
そんな風に同じものばかりを食べていて咎められない生活なだけいいというものだろうか。
さて、アイスクリームなどは食さないものの、私も少々腹が減って来た。
私はキョロキョロと辺りを見回す。
見回すと丁度、飼育員のヨウコさんがやって来るのが見えた。
のそのそとそちらの方へ向かい、ヨウコさんに愛情表現を示しながら、私は身体全体でこう訴えるのである。
「笹、くれ」
ささくれだった心には みこ @mikoto_chan
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