完結済、気分で書いたエロ

朝田ゆつ

イチャラブ

「ねぇ、トシくん。私したいな」

 右隣で課題を進めていたはずの明日香が蠱惑的な声で囁いてくる。

 いつも通りの放課後、俺は彼女の明日香の家にいた。

「……何度か言ってることだろう? 俺たちまだ高校生じゃん」

「でも知ってるでしょ、中西君と丸山さんもやってるって」

 確かにその噂は学年中に知れた噂だ。中西が自分で言い出したせいで今破局の危機だとかなんとかという噂と合わせて。

「所詮は噂だろ? それにあいつらがやってたからって俺たちがやる理由には……」

「ねぇ、トシくん……」

 明日香はこちらに寄って、俺の右腕に左腕を絡めてくる。袖の無い腕で擦れ合う素肌の感触は毒そのものだった。

「私はね“私が”したいの」

 その声はか細く、しかし力強く放たれた。

 優しく求める声、うるんだ瞳、優しく触れる腕、柔らかな甘い芳香。理性の枷を外せば、魅力的な甘みを味わえることは確実だった。

 それでも俺はその妄言と左腕を振り払って彼女に向き直る。

「俺は課題をやりに来たからさ、とりあえずそっち済ましたい」

 渦巻く欲望を脇に置いて、俺は告げた。

「だからごめんだけど……」

「え、あっごめん……私も」

 そう言って彼女は申し訳なさそうな、悲しそうな顔をしながら机の上に広がった課題に向き直った。

 間違ったことを言ったつもりは無いが、それでもバツの悪い気持ちになりながら俺も自分の課題に戻った。


 秒針とペンが紙を走る音だけが聞こえる。部屋中の空気がピリッと詰まるような雰囲気を持っている。

 そんな空気も、ひとたび背を反らして伸びをしながら「終わった~~」と言ってしまえば一度に霧散する。

「私ももうちょっとだから」

「ういうい、なんか飲み物取ってくるよ」

 俺は空になって久しいコップを2つ掴んで部屋を出る。ありがとうとだけ聞こえる部屋を背に、半ば逃げるようにしてリビングまで来た。

 人の家と言えど、何度もお邪魔してればいい加減位置は覚えているものだ。手早く冷蔵庫から麦茶の入ったポットを取り出し、2つのコップに注ぐ。

 にしても彼女がそこまで俺に対して欲を抱いていたとは、なんて思ってみる。正直これまでも何度か誘われるようなことはあったのだが、ここまで直接的に欲求をぶつけられたのは初めてだった。好意の形としては嬉しいことこの上ないが、所詮高校生の俺たちはヤるべきではないという考えは間違っていないはずだ。

 そんなことを考えて、自分の思いに自信を持って俺は部屋に戻った。


 部屋に戻ると明日香はグググと伸びをしていた。

「終わったか?」

「うん、終わった」

「お疲れ様」

 俺はいたって普通を装って返す。正直伸びをされると胸が強調されて男的に困るのだ。明日香は大きい方ではないと思うが、それでもしっかりと胸があると言えるくらいのサイズ……なはずだ。

 そんなことを悶々と思っていると、俺は不自然なことに気付いた。伸びた胸がいつもより下に垂れているように感じる。それと共に2つの小さな粒が見えるような……

 桃色の思考を抱えながら時間を過ごした俺は、直感的に彼女がノーブラなのではないかなんて思ってしまうが、少なくとも彼女はそんなはしたない口ではない。

「? どうしたの、固まっちゃって」

「あ、いや。何でもないよ」

 俺はできる限りの平静を装って素早く明日香の横に胡坐を組んで座る。

「何、そんなサクサク動いて」

「え? いや別に……」

 ただその挙動不審さを隠しきれないのが俺の弱さそのものだ。

「それで、どうなの。課題終わったけど」

「どうなのって?」

「言わせないでよ、シたいんだって私は」

 俺はその言葉に「あー」とだけ返す。

「……トシくんは、シたくないの?」

「いや俺は……」

 正直に言えば俺だって滅茶苦茶シたいのが本音だ。ただどこまで言っても高校生でするのは気が引けてしまう。

 俺は言葉を濁したまま、沈黙で答えてしまう。

「んも~~~!!!!」

 明日香は突如として怒ったような声を上げたかと思えば、そのままスクッと立ち上がり、胡坐を組んだ俺の上に向き合うようにして座り直した。そのまま俺を強く抱きしめる。

 突如として襲い来る彼女の柔らかさや、柔軟剤を思わせるフローラルな芳香が、ダイレクトに脳が直接感じ取っているかのように襲い掛かる。

「ちょっと明日香、どうしたの?!」

「私たちさ!」

 明日香は俺の言葉を聞かず、怒ったような声を上げて続ける。

「手も繋いだ、ハグもした、キスもしたじゃん」

「う、うん」

「でもまだ足りないの」

「うん」

「まだ足りない、どこまで行ってもまだ足りないの」

「うん」

 明日香の声は段々と弱まっていくが、強い意志だけは感じるしっかりとした声だった。

「分からない、どうしたら良いのか。トシくんのことが好きすぎて」

「うん」

「だから分からないから、抱いてほしいの」

 明日香の顔をふと見てみると、潤んでいるのを超えて涙を流していた。

「ごめんね、無茶言って。トシくんの言い分も分かっているの」

「うん」

「でも私耐えられない」

「そっか」

 そう言うと、明日香は俺の右腕を掴んで、その右腕の先を自身の胸に押し付けた。

「ごめんね、でも触ってほしい」

 敏感になった右手の平からは柔らかな感触が余りにも直接的に伝わってくる。マシュマロに触れるような柔らかさが、腕を通じて強い電気が流れたかのように雪崩れ込む。

 明日香は右手で口を隠しながら、小さな小さな嬌声を漏らす。その1音1音が俺の耳を震わし、理性の基盤をグラグラと揺らす。

 明日香は、可愛かった。優しく触れて揉んであげれば、甘い声が返ってくるそのシンプルな構図にも関わらず、俺は彼女の虜となっていた。

 悩んでいたのが馬鹿らしいとすら思える。素直になってしまえば、答えはシンプルで、俺も所詮は彼女が好きでたまらない猿に過ぎなかったのだ。

「トシくん……キス……しよ?」

 俺は明日香に軽く首肯を返し、膝の上に乗る彼女と唇を重ねる。

 このキスは俺たちの間の2回目のキスだったのだが、ただただ何があったのか気持ち良かったのか分からなかった1度目のキスと違い、触れた唇の肉感が生々しく、しかしそれが何物にも代えがたい幸福を運んでくる。

 理性すらももはや、ただ彼女が可愛いという事実を認めるばかりになってしまう。

 息の続く限り重ねた唇が離れてしまえば、息切れゆえの荒く深い息が漏れるが、最早それすらもふたりの間にはスパイスでしかない。

 どちらからともなく再度唇を重ねてしまえば、2度3度とそれを繰り返す。

 グラグラと煮え立つような感覚。視界が暴れ、焦点が定まらずクラクラするような感触。

 最早視界などあってないようなものな俺たちは、互いの存在を確かめる為に口づけを交わし続けた。最早それが何度目のものなのか分かった物じゃない。

 唇を重ねながら、胸もいじめてあげればやはり小さく喘ぎ声を響かせるが、その息苦しそうな声を漏らしながらでも明日香はキスをやめなかった。

「もっと色々しようよ~、トシくん……」

 聞いたことも無いくらい軟らかくとろけた声を出す明日香に、気の利いた言葉を返せる余裕があるほどの男ではなかった俺は、また黙って首肯を返し、彼女のブラウスのボタンに手をかけた。

 脱がしてあげるという経験が生憎無かったわけだが、緊張で震える手でも1つまた1つとボタンが外れる。全てボタンが外れたところで、彼女が自分でブラウスを脱ぎ始める。

 お腹の方から段々と見える肌色が目に毒で、視界の中で何度も閃光がはじけるような感触すら覚える。

 全て脱ぎ切ってしまえば、綺麗な球を象る乳房が露わになる。やはり下着は着ていなかったようだ。

「ごめんね、トシくんに、その、シてほしかったからブラ脱いじゃってて、あのお茶取りに行ってくれてた時に」

「……そうだったんだ」

「ごめんね、私こんなに変態になっちゃって。でもこれもトシくんが好きすぎるせいだから」

 明日香は絶え絶えな息で言う。

「こんなになったのもトシくんのせいだから、ちゃんと責任取ってもらう」

 明日香の欲が自分由来であるという、本来無茶苦茶なはずの発言が、今はこの上なく嬉しく心に響く。

 ただただ明日香が愛らしくて、目の前にいる幼気な上裸の女の子が可愛いということだけに脳が支配されていく。

 あうあうと返す言葉が見つからず、口をパクパクさせていると、明日香が続ける。

「どうかな、私の身体、トシくんを興奮させられるかな」

 浅い息で絞り出すように、震えるように言う明日香に、コクコクと必死に首で答える。

 綺麗にぷっくりとした形の果実からはピンと跳ねるように乳首が飛び出しており、思わずむしゃぶりつきたくなる。

「あんまり、見られると恥ずかしいよ!!」

 そういって明日香は俺にしっかりと抱き着く。俺のシャツと肌着だけを隔てて伝わってくる明日香の胸の感触に、ドギマギを超えたどうしようもない多幸感と焦燥感のようなものを覚える。

揺れる視界と彼女への愛欲にクラクラしていると、首筋からぞくりと全身が震えるような快感が襲い来る。どうも首筋に明日香がキスした様だった。その感じた事の無い耽美な快感に、最後まで抗い続けた理性が、ブツリと、その役目を終えたような気がした。

「……明日香、布団行こうか」

「! うん、そーしよ?」

 荒い息で肯定する彼女を見ているだけで、心の中の男が激しく高ぶるのを感じる。

 明日香は俺の膝上からすくっと立ち上がると、その上裸のままいつも彼女が寝ているベッドに倒れ込んだ。

「良いよ、来てくれて」

 そういう彼女の求めに応えるように、俺は彼女の上に覆いかぶさる。

 明日香の肩を少し過ぎたくらいのブラウンの髪が、布団の上に柔らかく広がる。

 俺は顔に掛かったその綺麗な髪を少し払って、期待と不安をぐちゃぐちゃに混ぜってしまったような顔をした明日香と唇を優しく合わせる。

 幸せそうに赤く火照った頬にも唇を落としてみれば、次は耳、首筋、肩、胸と降りていく。

 明日香は嬌声を漏らすばかりだが、抵抗する様子は全く見せず、その声がただただ扇情的に耳に響いていた。

 薄氷に触れるかのように優しく胸に触ってみれば、明日香のスベスベした肌の感触と共に、俺の手をすべて受け入れると言わんばかりの柔らかさが伝わってくる。

 その極上の果実の吸い口にしゃぶりつく。途端に明日香から「んん~~……//」とこれまでよりひと際大きな嬌声が放たれる。

 吸ってみたり、舌先で転がしてみたり、指先でこねくり回したりしてみれば、そのたびに甘い声が返ってくる。

 俺はこの世のものとは思えない程の多幸感、いや最早全能感とすら言える感情を抱いた。好きな人が自分の手で無茶苦茶になっており、それを彼女自身も望んでいるというこの状況に、あまり感じていなかったはずの明日香に対する支配欲がどんどんと満たされていくことを感じる。

 ただ不慣れなもので、体重をかけずに彼女に覆いかぶさる体勢に、俺の身体は急速に疲れを訴え始める。俺は仕方なく覆いかぶさる状態を解いて後ろに座り込む。

「あれ……トシくん、疲れちゃった?」

「あ、ごめん」

「いやいいの、私も初めてだから勝手が分かってなくて……」

 そう言うと彼女はまた俺の膝の上に座り込んだ。素早い行動に抵抗できずにいると、明日香は俺にキスをひとつ落として言う。

「でも、その良かったから続けてほしいな……」

 好きな人にそんな風に言われて抗えるはずも無く、俺はすぐ眼前にある明日香の乳房に触れる。軟らかい胸とのギャップとも言えるほどに凝り固まってしまった乳首を転がしてみれば、明日香は俺の頭に回した腕を軽く絞めてそれに答える。

 最早それだけで終わってしまっても良いくらいに幸福な時間だ。自分のやってあげたことで彼女が喜び、しかもこんなにも可愛い姿を引き出せている。これで終わってしまったとして、どんな文句が言えようか。

 しかしまだこれ以上があるというのだからどうしようもない。

 抵抗なくいじめられていた彼女が、その身を俺から引く。急に離れたものだから、不安になって思わず顔を覗き込む。荒い息を漏らし、火照った赤い顔を見せる彼女を見ているだけで、ありったけの明日香への思いが、拍動の音と共に漏れ出る。

「私ばっかじゃ、ダメ。トシくんも脱いで?」

 そう言うと明日香は俺の胸元に手を伸ばし、シャツのボタンをひとつひとつ外していく。

 不慣れなようでたどたどしい手つきが、寧ろ愛らしさを加速させる。

 その集中している頭を撫でてやれば、明日香は蕩けたようなだらしない笑顔を返してくる。口づけをひとつ交わせば漏れる「ふふっ」という笑い声も、今では昂ぶりの為のスパイスにしかならない。

 そのままシャツを脱ぎ捨て、肌着もベッドの外に放り出してしまえば自分の、生憎色気も筋肉も何もない上半身が露わになる。自分では微塵のエロさも感じられない上半身だが、胸に当たる荒い息がどうも問題は無いらしいという事を教えてくれる。

 このままどうしようかなんて考えていたら、急に明日香は俺にとびかかってベッドに押し倒した。男なのに組み敷かれてしまったことに情けなさを感じる一方で、何をされてしまうのかという期待を素直に抱いてしまう。

「ごめんね、トシくん。トシくんえっちすぎて。もう下も脱いじゃお?」

 そういうが早いか、俺のズボンのベルトに手をかけ、先ほどのシャツを脱がした時からは考えられない速度で下着が露わになってしまった。

 今更ではあるのだが、俺のブツはこれまで経験したことが無いほどに大きく凝り固まっており、下着には情けなく染みを形成している。

 明日香から見ても、不自然にとがった下着で俺の勃起を悟ることができよう。

「トシくん大きくなってる……楽にしてあげるから……」

 そう言って明日香は太ももの方から下着に手を入れ、そのままズリズリと引き下ろす。

 知らない脱がし方、鼠径部に触れる指先、そして陰茎の先が布地にすれて、痛みを伴う快感をもたらす。

 露わになった自分のブツをマジマジと見る明日香。湿った亀頭に吐いた息が当たり、むず痒い。

 明日香の綺麗な指で、その綺麗さに似合わないそれを包み込む。そのままゆっくりと上下に明日香は腕を動かし始めた。

 その動きは自分でやるそれよりもは、はっきりと言って気持ちよくは無い。ただ綺麗な腕、綺麗な彼女が自分のせいで、しかしながら彼女自身の望みで汚れていくという背徳感が得難い快感となって一点から全身に広がっていく。

「これで合ってるかな……?」

 そんな風に俺を見つめながらも動きを止めない明日香が愛おしくて、俺は「うん」とだけ返し、頭を撫でてやる。明日香はにへらと笑い、その腕の動きを加速させた。

 自分に献身的に尽くそうとしてくれる明日香が可愛くて、仕方がなく荒れた息に交じって、俺も思わず声を漏らしてしまう。

 明日香は俺の顔をじっと見つめて、こちらの反応ひとつひとつを楽しんでいるようにすら思う。

「……ねぇ、咥えてみてもいい?」

「んあ……流石に、そこまでは……」

「良い、よね?」

 明日香はそう言って、最早俺の話も聞かずにそれを口に入れ込んだ。

 口内の一切のヒダ、そして粒を感じられるくらいに敏感になったそれからは限界に漸近する快感が流れ、腹からそれへ突き抜けるように快楽が走る。

 俺は情けなく彼女の口の中で果ててしまった。

「ごめんごめん、早く吐き出しちゃって!」

 俺は反射的にそういったが、当の本人はしばらく口の中で転がした後に、コクンと、大きな何かを飲み干した。

「……にっっが」

「飲みこんじゃったの?!」

「だって気になるから……」

「口の中洗ってきなよ」

「ふへへ、飲んじゃった」

「定番ありがとう」

 俺はそれだけ返して頭を撫で、明日香を洗面所へと促した。

「あ、おい軽くでも上の服は着ていけよ」

「えー、私まだする気だよ?」

「マジかよ」

「だって私足りてないもん。大丈夫勃たせてあげるから」

「ああ、そりゃ……どうも」

 そう言って明日香は俺のシャツを軽く羽織り、部屋から出て行った。



 取り敢えず下着は既に履いてしまった俺がいる一方で、図らずも彼シャツしてしまった彼女の眼は、彼女が満足していないことを訴えるように確かに爛々と輝いていた。

俺も満足したわけではないと思うのだが、それ以上に賢者になってしまっている。

「ここまでしたんだし、お互い初めて卒業はしたいよ」と明日香は言う。魅力的な提案だが、萎んでしまったそれではもう続きは無さそうに思える。

「ごめん、多分俺今日もう……」

「大丈夫だよ、任せて」

 そう言って明日香は、その指を俺の腹から胸にかけて撫で上げる。こそばゆい感じだけでは説明が付かないゾクゾクとした感触が、触れ合ったところから走る。

「……嫌だったら言ってね……?」

「……いや……俺も明日香とシたい」

「……そっか、なんか言われると照れるね」

「少しはこっちの気持ちも分かった?」

「お陰様でね」

 そう言って明日香は俺の胸に唇を落とし、そのまま舌を走らせる。

 その柔らかなものが走る感覚は……あんまり気持ちいいという感覚は無かった。ただこそばゆいだけだった。

「ちょ、ちょっと明日香? くすぐったいんだけど」

「ん? あれ。男性はこれが気持ちいいってネットで調べたんだけど」

「正直こそばゆいだけだったわ」

「そっかー、うーん」

 そう言って明日香は俺の脇腹をくすぐり始める

「あ、ちょっ、明日香、何して」

「何って、くすぐってるだけよ~」

「やめろ、ちょっと、あはは」

「うりうり~~」

「もう、これ関係な、あはは」

 俺に覆いかぶさるように乗る明日香に抵抗できずくすぐられる。

 ただずっとくすぐられても男が廃る。俺は一瞬の隙を突いて、明日香を押し倒し返す。

 明日香は驚いたようにパチクリと瞬きを返してくる。まつげが長いな、綺麗だ。

「……怒った?」

「まさか、ずっとくすぐられていたら敵わないってだけだよ」

 そう言って、俺も脇腹に手をかける。

 そのままくすぐってみるが、明日香は何も反応しない。

「ごめん、私、効かないんだ」

「マジかよ」

「でも乙女のお腹はそう簡単に揉むもんじゃないよ」

 そういって明日香は身体を起こす。鼻と鼻がぶつかるくらいのところに明日香の顔が来る。

「トシくん、私の事好き……?」

「え、もちろん。大好きだよ」

 当たり前だ。今更濁すようなことでもない。

「私も、トシくんのこと大好き、すごくすごく」

「ありがと」

「どういたしまして。でも、どこまで行ってもやっぱり足りないの」

「うん」

「さっきトシくんが私で出してくれたのも、すごくすごく嬉しかったんだけど、やっぱり私は最後までシたいな」

「……うん」

 恥ずかしそうに、しかしそれでも俺の目をジッと見つめて言う彼女の目から視線を外せなくなる。俺も恥ずかしいやら照れるやらで、逃げるようにキスをする。

 息が続かなくなるまでシたその口づけが終われば、あんなに冷めていた脳味噌も再び沸き立ち始める。

「トシくん少し大きくなってきた……?」

 下着の上から艶めかしく明日香が触れば、俺が返答するよりよっぽど素直にソレがいきり立つ。

 明日香は俺の膝上から降りて、俺の下着に手をかけて脱がす。

「別に履き直さなくても良かったんじゃないの?」

「いや、ホントに復活すると思ってなくて」

「任せてって言ったでしょ?」

 そう言って明日香はまた手で優しくソレを握る。復活したとはいえ、未だ過敏な俺の陰茎はたまらずビクビクとした反応を返す。

「あんまりされるとまたあれだから……」

「しょうがないなぁ、じゃあ脱がして~」

 そう言って腕をめいいっぱいに広げる明日香。その滑らかな腕に沿って俺のシャツを脱がしていく。

「男子とかって、もしかしてこんな機会が無かったら女子のスカートどうなってるか知らないんじゃないの?」

「確かに」

 そうとだけ答えて、俺は明日香の示すままスカートにも手をかける。一人っ子の俺からすれば同世代のスカートに触れる機会なぞ存在しえなかっただけに、とてつもなくイケナいことをしているような感覚を覚える。

 スライダーをずらせば、簡単に脱げるようになってしまっているそのスカートをそのまま下に落としてしまえば、上裸に下着と言うとんでもない格好になってしまった。かく言う俺はとっくに全裸なわけだが。

「ちょっと流石にここから先はまだ恥ずかしいから、上から触って……?」

 スカートをベッドの外に丁寧に置いた後、ベッドの上で膝立ちになった明日香につかまれた右腕がそのまま彼女の秘所にあてがわれる。

 既に軽く湿った布地に触れると、小さく「んっ……」と明日香が息を漏らす。勝手の分からない上に、興奮の所為で焦る気持ちも乗じて不安に満ち満ちた感情で触れるが、彼女の求めたことをしているのだと訴えかけてくる。

 指の形を変え、触り方を変えてとしていれば、だんだんと漏れる息も「はーはー」と大きく肩でするような息に変わる。湿った下着は、最早その役目をはたしていないとすら言えるほど、こちらの指先にも湿り気を残している。

「もうだめ……直接さわって……?」

 夢中で下を弄って見ていなかった明日香の顔は、まるで泣き腫らしたかのように朱に染まり、だらしなく顎に向かって流れる唾液すらも魅力と思える。

 そんな明日香はベッドに寝転がって「脱がして~」なんて無邪気に言っていた。ただでさえ経験の無いことの連続なのに、そんなことされてしまっては敵わない。しかし明日香がそれを求めるのであれば俺に選択肢はハナから無かったようなものだ。

 彼女の腰に手を当てて、下着に手をかければ、明日香が腰を浮かせて脱がしやすくしてくれる。下着から既に軽く糸を引いており、見える陰毛に思わず息を呑んでしまう。

 案の定と言うべきか、クロッチはまるで最初からその責務がなかったかのように大量の粘液に包まれてしまっている。

「ほら、好きにしてくれていいからさ……?」

 そんな風に言う彼女の口に唇を重ね、彼女の秘所に手を伸ばす。AVなんかでも何度も見ていたものではあるが、当然彼女のものを見るという機会は今日が初めてなので、少々面食らってしまう。

 軽く指で撫でてみれば、強い粘り気を伴う愛液がつーっと糸を引く。小さく喘ぐ彼女が愛おしくて、秘所に触れながらキスをする。息苦しそうに喘ぐのに、無抵抗にキスを受け入れる彼女が、俺の情感を激しく刺激する。下の動きを大胆にしてあげれば、喘ぎ声も大きく部屋に響くが、その出処をふさぐことを彼女は止めない。寧ろ俺の首に手を回し、口づけを繰り返すよう促してくる。

 しばらくそのままピンと固くなったクリトリスをくにくにと苛めてやれば、あんなにキスを求めていた明日香が口を開く。

「そろそろ中も弄ってほしいな……?」

 俺は「痛かったらすぐ言えよ」とだけ返し、人差し指を立ててさっきまでより少し下にあてがう。

 にしても指が完全にぐっしょりと濡れてしまっている。濡れてなくて痛くないなんてことは絶対に無いだろうなと思いながら触れていると、ぬるっと指が入り込むところがある。それに任せて指を押し込んでやると、愛液に満ち満ちた明日香の中に俺の人差し指は飲み込まれる。

「ふあぁ」と思わず声を漏らして、すぐ口を手で覆う彼女が可愛らしい。

 彼女の中はどこに触れても余さず濡れており、蜜壺という表現を直感で理解させられる。

 彼女の入り口から少し入ったところに、指にザラリとした感触を残すところがある。なんだろうと思って触れてみると、明日香の身体がピクリと小さく跳ねた。

「そこすきなの…… もっとして?」

 第二関節まで飲み込まれた位置で、くにくにと優しく動かしてみれば、明日香が不規則に「あっ……はぅ……ん……」と嬌声をこぼす。

 少しずつ指圧を強めてみたり、動きを大胆にしたりしてみても、幸い彼女は痛がらずただただ可愛い声を漏らしている。

 入れて出してしてみれば「~~~!!」と言葉にならないような声を上げる彼女が愛おしくて、もっとしていたいと思わせられる。同様にさらに多くの蜜を持たすようになった彼女のそれのお陰で指の滑りがより滑らかになる。

彼女の漏らす声や動きが愛くるしく、自分の右腕は止まることを知らない。

合間合間に彼女の口元に顔を近づけてみれば、彼女は荒れた息が俺の鼻にかかることも気にせず顔を近付け返し、俺のキスを受け入れる。

 あふれ出る彼女の愛液がゆっくりと雫を形成し、まっすぐベッドのシーツに下りる。

 それを見た俺は「汚い」でも「汚してしまった」でもなく、ただただ「勿体ない」と感じた。彼女自身の欲望の写し鏡とすら言えるそれが溢れてその場を汚すなど、そんな勿体ないことがあってはいけない。俺は彼女とキスしながら触れられる明日香の真横から、彼女の浅く開かれた股の間に動く。

 明日香が疑問と寂しさをにじませたような顔を見せるが、構わず俺は明日香の蜜壺に顔を近付ける。そうしてピッと少し出した舌でそこに触れてみた。瞬間ヒクッとそこが動き、明日香が「んあっ」と驚きと快感を綯い交ぜにしたような喘ぎ声を漏らす。

 もう一度、今度は舌全体の面を使うようにしてなめとってみる。ヒクヒクと震え、明日香が「トシくん、それやばぁ」と小さく漏らす。

 外に漏れた愛液はもう全て口に収まったと思ったのだが、桃色に律動するそれから無限に滲み出して止まらない。

 堪らず舐めるにとどまらず、今度は吸い付いてみれば、明日香は「ふあぁぁ」と消え入るような声を漏らす。

 濃い桃色でピンと張っている彼女の陰核を唇で覆い、キュッと吸ってやる。明日香の身体がビクビクと一定のリズムで跳ね、それに合わせるように「んっっ」と大きな喘ぎ声が脳天から響いてくる。

 吸いついたまま舌で転がすと、彼女は大きく体を跳ねさせた後に股を閉じて、こちらが食いつけないようにしてしまう。

「なんで逃げちゃうのさ」

「今の、ヤバかったからダメんなっちゃいそうで」

「ダメだよ、今は気持ちよくなっても良いんだからさ」

「もうダメなんだって……」

 俺は明日香の言葉も聞かずに彼女の閉じた膝に手をかける。ダメだダメだなんて言っているが、抵抗する様子は見せない。

 唾液と愛液のどちらかもわからないそれに塗れた秘所に、口をあてがうと共にその中指を中に入れてやる。「両方はだめっ」という声を無視し、中指を彼女の中で少し暴れさせる。

 残された左手を彼女の臀部に添えて逃げられないようにしてやれば、彼女は抵抗することもできずに俺にいじめられるだけになる。痛くないかだけ気にしながら暴れる中指も、だんだんと彼女の反応のいい場所を捉え始め、それに従って明日香の喘ぎ声はさらに大きく激しくなっていく。

 段々とピチュピチュと水音が聞こえるくらいにしっとりとした秘所からゆっくりと指を引き抜くと、中指とそれの間に綺麗に弧を描いて糸が伸びる。

 ぐったりとしながら身体をピクリと震わせている彼女が、狂おしいほど愛おしく扇情的だ。

「トシくんの……ヤバい」と肩で息をしながら明日香が言う。

「大丈夫? 痛くなかった?」と俺が言うと、明日香は腕で目元を隠しながら首を何度も縦に振っている。

 目元は見えないが、紅潮した頬と赤く熟れた秘所が彼女の興奮を隠さず訴えてくれる。

 しばらく肩で息をしていた明日香も、少し休憩してあげれば息が戻ってくる。

「もう終わりじゃないよね? 最後までするよね?」

「まあ、ここまで来たからには……」

 そこでふと思うが、俺はゴムを今持ってない。当然だ、彼女にここまできれいに絆されてしまったとは言え、ヤる気が無かったの自体は本当だ。だから正直ゴムを買ったことすらない。当然のことだが、流石に生なんて絶対にできない。

「ごめん、俺、ゴム持ってないわ、だから……」

「え、私持ってるよ?」

 そう言うと彼女はベッドの下の収納をガサゴソと漁り始め、すぐにひとつの箱を取り出す。

「実は結構前から準備してて……」

 照れるように言いながら明日香は、箱の中からよくエロ漫画なんかで見るような小さな袋を1つ取り出す。

 キュッキュッと指を使ってゴムを袋の端に寄せて、ピーと開封すれば桃色の脱ぎ散らかした靴下のようなコンドームが露わになる。

「つけてあげる」

 俺の目の前に座った明日香はそう言って俺の陰茎の先にゴムを載せ、くりくりと綺麗に被せていく。

「えらく、手慣れてるな」

「そう? Youtubeで結構勉強したんだよね」

 俺の毛を抑えながら根元までゴムを下ろした明日香が、こちらを上目遣いで覗き込みながら言う。

「そんなのあるんだ」

「うん、結構真面目なチャンネルなんだけどね」

「普通に気になるな」

「あとで送るよ、だから今は、ね?」

 俺にゴムを付けた明日香はベッドに倒れ込み、俺を誘う。

 誘われるままに俺は彼女のすぐ前に座り直し、己の欲望の塊を彼女の秘所にあてがう。

 触れた先からじんわりと熱と快感が伝わり、はぁと息が思わず漏れる。

「入れて?」

「分かった」

 シンプルなやり取りだが、耳には自分の拍動の音が痛いほどに響き、明日香は顔を隠して恥ずかしそうにモジモジしている。

「痛かったら言えよ」

「うん、分かった」

陰茎の先で秘所を弄ると、ズブリと先が飲み込まれる。ここかと思って腰をまっすぐ押し進めると、明日香が苦痛に悶えるように「あああぁ」と声を上げる。

「大丈夫か?」

「思ったより痛かった」

「ゆっくりしようか」

「……うん」

 キュンキュンと自分のものを締め上げるそれの中でしばし、息を入れた後にゆっくりと自分の陰茎の反りに合わせるように腰を動かす。明日香はまだ苦悶の表情に近い物を浮かべている。苦しそうに漏らす息に少し心苦しくなりながらもじわじわと彼女の中を切り開いていく。今は気持ちいいとかよりも彼女のことが心配ではあった。

 ゆっくりとでも湿った彼女の中にはズブズブとスムーズに入って行き、気付けば自分のモノがほぼ全て彼女の中に納まっていた。

 じわりと愛液に滲む血液が、彼女の頑張りを象徴している。

「全部入ったよ」

「こんな痛いと思わなかった」

「ごめんね、もっとゆっくりできたかも」

「いや良いの、トシくん童貞卒業おめでとう」

「ありがとう、そっちもおめでとさん」

 そう小さく笑い合って唇を重ねる。彼女の眼にはじんわりと涙が滲んでいる。その少し赤くなった目を見れば、その痛さがかなり強力なものだったことは容易に想像できる。それでも耐えて俺を受け入れてくれる彼女が愛おしくて、何度も唇を交わす。

 覆いかぶさって入れたままの状態でもキスは問題なくできて、人がこれまでもこんな風にして来たんだろうなと妙に壮大に思った。

 気持ちよさは、まああるが正直あまり慣れない感覚だ。あいにくと仮性包茎な俺には亀頭にくる彼女の刺激が少し強すぎるくらいに感じる。

「ちょっと和らいできたかも、ゆっくりなら動いて良いよ?」

「無理はしないでよ」

「大丈夫」

 そう言って彼女はキスを1つせがむように顔を突き出す。お望み通り唇を返してあげると、幸せそうに“にへら”と笑いベッドに倒れ直した。

 俺はゆっくりと腰を引きそのまま戻してみる。極力ゆっくり、というのを意識しても彼女は痛みに耐えるように奥歯を強く噛んでいる。それが痛ましくて、でも愛おしくて優しく髪をなでながらキスをする。唇が離れたその時、明日香が俺の首に腕を回し、ギュッと強くしがみついてきた。

 その突然の行動と不意にかかる体重にびっくりしていると、明日香は「大丈夫だからハグだけさせて?」と囁く。愛する人の可愛らしい声が耳元に響くということに脳がとろけるような感覚を覚えた俺は辛うじて「うん」とだけ返すと、明日香はますますその腕に力を込める。正直少し痛いぐらいなのだが、その痛みこそが彼女からの愛欲の裏返しであるような気がして好きと思えた。

 そのまま数秒かけて抜いて入れてを繰り返していると、はじめは痛みに悶えるようであった声に、じんわりと元の嬌声が混じったように思えてくる。

 気持ちよさと言う観点ではよく分からないのが正直な所だが、目の前で快楽に震え始める彼女が可愛くて、ゆっくりとした抽挿を止めることはない。

 段々と自分でも勝手が分かり始め、己の陰茎の反りに合わせた腰の動かし方が分かってくる。不必要に力を込めて無駄に明日香を痛めつけることなく自分と彼女のカタチに合わせて動けるようになってくる。したことのない身体の使い方に、全身が悲鳴を上げそうではあるが、興奮がそれを押しとどめる。

「痛くは……ない?」

「うんっ……もう、だいじょぶ」

 はあはあと荒い息を漏らしながら応じる彼女が愛おしい。セックスが気持ちいいとか以前に明日香のこんな姿を見られるという事がたまらなく嬉しかった。ギュウと俺にしがみ付きながら喘ぐ彼女の後頭部を優しくさすってあげれば、より強い力で俺を抱きしめる。

「気持ちよく、なってきたかも……」

「本当に?」

「うん、トシくん、トシくんは気持ち、良い?」

「俺? 俺も気持ちいいけど」

「ほんと?」

「うん」

「だめ、もっときもちよくならないと」

 その言葉は熟れた果実のような魅力を持っていた。

「私はもうきもちいいから、トシくんのこときもちよくしないと」

 そう言って明日香は自分の身を引いて、秘所から俺の陰茎を抜く。「んふぅ」と息を漏らしながら抜き取ったのが何ともセクシーだ。

「トシくんこっちに寝っ転がって?」

「良いけど、なんで?」

 俺はそう聞きながら彼女の横に寝転がる。寝転がってすぐ彼女は俺の上に馬乗りになった。

「今度は私がうごくから……」

 そういって明日香は俺の陰茎を掴み、そのままその先を秘所にあてがう。亀頭が彼女の中に入ったかと思えば、明日香は重力のままにそのすべてを彼女の中に入れ込んだ。キュンキュンと俺の陰茎を締め上げるヒダが少々の痛みと強い快感を齎す。

 明日香も喜びを孕んだ喘ぎ声を漏らして、俺のそれを受け入れた。

「私がうごくからトシくんはラクにしてて」

 そう言って彼女は俺の上に覆いかぶさるようにして、腰を上下に動かす。重力のままに胸に垂れた綺麗な髪の先が俺の胸をくすぐってこそばゆい。

「はっはっ」と跳ねるような荒い息を漏らしながら腰を動かす明日香。先ほどと比べたらかなり速いペースで抽挿する明日香だが、不慣れなようだ。

「ゆっくりでいいよ、早いから気持ちいいわけじゃないから」

「ごめん」

「謝らないで、ゆっくり慣れてこ」

「うん」

 そういって腰を動かし始める明日香。俺のカタチを探るかのようなゆっくりとしたストロークがじんわりと、しかし確実な快感を与えてくれる。情けなくて恥ずかしいが、自然と「はあはあ」という息も漏れ出てしまう。

 顔を伏せて腰の動きに集中しているように見える明日香の頬を、彼女の髪を掻き分けて触れる。優しくなでてあげれば蕩けたような笑顔をこちらに返してくれる。

「きもちいい?」

「うん、お陰様で」

「よかった」

 そう言って明日香は顔をこちらに近づけてキスを落とす。こうやって俺と言う存在が彼女の為すがままになっていく感覚も悪くない。

 明日香は少し慣れてきたようで、先ほどまでより速いストロークで腰を動かしている。俺の太ももと明日香の臀部が触れて、子気味良い音が小さいながらもリズミカルに部屋に響いている。俺の漏れる息に呼応するように明日香も「あっ……はんっ……」と喘いでいる。

 俺の為に動いてくれている彼女が可愛くて愛おしくて、もっと気持ちよくしてあげなきゃという感覚に俺は襲われる。俺は再度彼女の髪を掻き分けて、抽挿に合わせて揺れる乳房に手をかける。ぎゅっとその先をつまんでやれば、明日香の上半身が小さく跳ねるように震える。

「それちょっと……やば……んぁ……」と声をこぼしているが、その腰の動きが止まることは無い。腰が止まらないなら必然俺の手と彼女の乳房もこすれてしまい、明日香は彼女自身の行動によって抵抗もできずに弄られている。

 だらしなく開いた明日香の口からつーっと1滴の唾液が垂れて俺の胸を濡らすが、彼女はそれに眼も暮れず快感に悶えている。

 髪越しに見え隠れする部屋の壁が、目に焼き付く様だった。

 しばらくそのまま柔らかな快感に悶えていた。明日香は最早痛みなど知らないかのように甘く乱れた声を漏らしているが、そのストロークが不意に止まった。

「どうしたの」と俺が聞くと、明日香はそれには答えず俺の方に倒れ込んだ。

「ちょっとぎゅってして」と言うと明日香は俺の首に頭を回し、力を込める。

 俺も特段抵抗することも無く、そのハグに応じる。腰に手を回し、キュッとこちら側に引き込む。

「ごめん、ちょっと疲れちゃって」

「大丈夫だよ、いつも使わない筋肉使うもんな」

 そこまで言って2人して深い息を漏らす。興奮は一向に冷める様子も無いが、確かに疲れ自体はじんわりとたまっているような気がする。明日の筋肉が正直心配だ。

 俺は自分と明日香の身体をぐいと起こす。入ったままのそれがグリっと彼女の中を刺激し、明日香は「ふあぁ」と大きく喜悦の声を漏らす。そのまま俺の太ももの上に乗る形になる。

「お疲れなら僕が動くから」

「だめ、だめ、私がする」

「いやでも」

「大丈夫だから、私が誘ったんだから」

 そう言って明日香は俺の太ももの上で上下に動いて、抽挿を再開する。首にまかれた腕に、リズミカルに重みがかかる。

 先ほどよりも密着した状態での動きで、蕩けた表情もはっきりと見える。彼女の漏らす息もはっきりと俺の鼻にかかっていることが分かる。自分も快楽に身を捩りたいだろうに、それでも動きを止めず、俺の目をじっと見つめながら奉仕してくれる彼女。

「可愛い」

 その言葉はびっくりするほど自然に口を突いて出た。

「え?」

「可愛いね、明日香は」

「あっ……だめ」

「可愛いよ明日香」

 明日香はその言葉に顔を伏せてしまう。と共に上下の動きが早くなる。

「明日香?」

「かわいい、だめ」

「なんでよ、可愛いんだからしょうがないじゃん」

 早くなったピストン運動が、それでも彼女の心を代弁してくれているような気がする。

「あぁ、もう、だめ。トシくん好き」

「うん」

「好き、好きトシくん」

「うん、俺もだよ」

「うん」

「俺も好き」

「うん、うぅ」

「可愛くて大好きだよ」

 唸るような声を上げながら顔を俺の肩に埋めようとしてくる。ただ上下に動くのと両立することはできないようで、必死に顔を伏せているが強く紅潮した頬は全く隠れず、ただただ恥じらう様子を見せている。

 首に回された腕の外側から俺の腕を明日香の顔に持って行く。そのまま前に垂れた髪を優しく掻き上げてみる。明日香はすっかり赤く熟れた顔と、涙ぐんだように滲んだ眼をこちらに向ける。

「やだ、見ないで」

「良いじゃん、可愛いんだから」

「やだやだ」

「最後までこうするから」

「もうバカ」

 そう言いながらも明日香は俺の視線から目を外さず、こちらをじっと見ている。

 まるでイくまでこのままかのように言ってしまったが、快感は順当に貯められている。あまり長くはもたないだろう。二人肩で息をしながら、少し汗ばんで湿った肌を合わせる時間が、あと少しで終わってしまう。何とも寂しいような、でもその時が来るのが待ち遠しいような気持ちになる。

 明日香はもう喘ぎ声を我慢するなんて発想が無いかのように荒い息と一緒に甘美な声を響かせている。耳にかかる息がえも言えぬ快楽を俺に運び、この一時にスパイスとして合わせられている。

 じわじわとした快感の高まりは段々と陰茎根元にじんわりと物が貯まっていくような感覚にすり替わっていく。こうなってしまえばもう秒読みとすら言える。

「結構ヤバいかも……」

「いたい?」

「ああ、そうじゃなくて、その」

「ん……ああ、良いよっ」

 そう言って彼女は上下運動を更に早める。

「出して、出して、いいよ、好き」

 荒く吐かれた息に混ぜ込むようにして声を出す明日香。俺も好きが溢れて止まらず、何度も「好きだよ」と声に出す。いつもは恥ずかしいことこの上ないのだが、今は何度も何度も言い続けないと彼女の可愛さに身体がもたないようにすら感じる。寧ろこんなものでは足りない。

最早使命感すら感じながら愛と可愛いということを繰り返し、繰り返し明日香に言う。

陰茎に走る感覚も最早尿意のそれに漸近するかのような感覚で、止められる最終段階も過ぎ去ってしまったように思う。

漏れる声も最早ただの息に留まらず、情けなく俺も声を漏らしている。好きという言葉か、乱れた男女の出す喜悦の声が部屋にこだましているかのように響く。

「ヤバい、もう出そう」

「いいよ、出して、出して中に、大丈夫だからぁ」

 その言葉に限界を迎えたように強い快感が縦一直線に走る。そうしてそのまま彼女の中にそれが爆ぜる。びくびくと下半身全体が震えるような快楽が脳にぶん殴られたかのような衝撃の形を取って伝わる。

 明日香はこちらのそれに気付いて、抽挿を中断して重力のままに脱力し、一番奥にそれを届けさせた。快楽と共に彼女の体重が下半身に叩き込まれる。重いなんて微塵も思えず、ただ彼女の一番奥に届いたような感覚がして、それがただただ幸福であった。

「すご、出てるの……?」

「うん、はあ……出ちゃったわ」

「良かった、良かった~」

 そんな風に言う彼女の頭を支えながら、ゆっくりとベッドの上に寝かす。そのまま陰茎を秘所から抜き取った。薄い桃色の被膜が俺の欲望を湛えたままはち切れんばかりに膨らんでいるが、幸いにも破れているということは無く、その事実に深く安堵する。一方の明日香はベッドの上で顔を覆いながらピクピクと未だに身体を震わせている。色々な液に塗れてしまった彼女の股が、射精後だというのに艶めかしく光って見えた。

「なんとか、漏れては無かったよ」

「ああ、良かった。サイズ合わなかったりしたらヤバかったから」

「そうだな、今度からは流石に俺が用意するよ」

「てことは次もしていいの?」

 明日香は覆った顔から目元だけを出してこちらを見る。

「まあその、節度は持ちたいけど」

「そっか、良かった」

 自分の陰茎からゴムを抜き取り、漏れないように結ぶ。

「これってどこに捨てたら良いんかな……」

「あー、この部屋のごみ箱でいいよ」

「大丈夫? バレたらマズそうだけど」

「大丈夫、気にしないで。あ、捨てる前に」

 明日香は顔を起こしてこちらに肩を寄せる。

「ちょっとそれ見せてよ」とゴムを指さして笑う明日香。

「え、いや汚いよ」

「何よ、外側は私が触れてたほうでしょ」

「それは……はい……」

 俺は折れてそのゴムを渡す。

 明日香はそれをツンツンつつきながら「男の人ってこれくらい出すものなの?」なんて聞いてくる。

「いや他の人のことは知らないからなんとも……」

「じゃあ、トシくんのいつもよりもは?」

「まあいつもよりは多いかな……」

「ふーん」

 明日香は何か訳知り顔でこちらの顔をニヤニヤと見てくる。

「なんだよ」

「いや、トシくんもひとりでするんだなって」

 ご指摘はごもっともだが、余りにも恥ずかしい指摘だ。

勘弁してくれ、と赤面していると、明日香は「大丈夫、もう1人でしなくても良いから」なんて言ってくる。

「いやだから節度をだな」

「そんな節度気にする頻度でしてるの~?」

「いや、その、うーん」

 全く明日香には敵わない。ニヤニヤとしながら楽しそうにしている彼女も乱れた彼女も等しく愛おしくて、俺は明日香を静かに抱きしめた。彼女のうなじからの甘いフローラルな香りが鼻腔をくすぐる。

「え、どうしたのトシくん」

「え、いや好きだな~って思って」

「う、私も。私も好きだよ」

「ありがとう」

 そうとだけ言って、部屋に2人、静かに抱き合っていた。好きとか可愛いとかいう感覚は消えはしないが、それでももうその言葉を言うことが酷く恥ずかしいように思える男女に戻ってしまっていた。

 どちらからせがむともなく交わすキスも、恥じらいと緊張で震えてしまいそうで、感触もよく分からない。あぁこんなことならもっとしておけばよかった、と思うのだからダメだ。2度目がすぐ近くにあるように思えてならない。

「トシくん、その、気持ちよかった?」

「うん、もちろん」

「良かった。ごめんね、無理矢理付き合わせちゃって」

「いいよ、ああは言ってたけど嬉しかったし」

「そっか……」

「うん……」

 消え入るような声になってしまう。未だ全裸な俺たちの脳が少しずつ冷静さを取り戻し、状況のヤバさを悟り始めた。今や俺は、ベッドの脇に脱ぎ散らかされた明日香の下着にすら恥じらう一介の弱い青年だ。

「とりあえず服は着ようか」

「……そだね」

 そう言っていそいそと俺たちはベッドの脇に不規則に散らかされた服を着こんでいく。

 シワは妙に増えてしまった気がするが、俺は元の制服姿に、明日香は普段来ているであろう部屋着になった。スポーツブラに薄手のシャツのコンボで快活な印象を受ける。

「私服可愛いな」

「え? あ、これ? なんか恥ずかしいな、楽な恰好しかしてないから」

「いや気にしないでいいよ」

 頬に手を当ててアワアワしている様子を見るに先ほどまでの獣のような女性はどこかに隠れてしまったらしい。

「そういや今日って晩御飯食べてく?」

「ああ、いやそうだな……」

 俺は明日香の親にも公認を頂いて付き合っているので、何度か晩御飯の場にもお邪魔させてもらってはいるが……

「今日はやめておくよ、ちょっとお父さんの顔見れねぇわ今日は」

「え、あ、そっか……」

 明日香は残念そうにはしているが、意図は理解できるようでそれ以上何も言ってはこない。

「じゃあ、もう帰っちゃうの?」

「そうなっちゃうね」

「そっか、寂しいな」

 そう言って、明日香はまた俺に抱き着いてくる。締め上げるような強さで、もはやしがみ付いている明日香は本当に可愛いばかりだ。優しく頭を撫でて、そのハグに応じた。

 何分間抱き合ったか、今や分からないほど長く抱き合ったように思う。ただ1度その身を離してしまうと足りなかったな、と後悔が漏れ出てくる。

「ごめん、帰らないと、だね」

「そう、だね。明日も会えるからさ」

「うん、大丈夫」

 そう言って俺は帰り支度を始める。机の上の課題や文房具を片付ける手をゆっくりにしてみるが、元々多くも無いそれは数瞬でカバンの中に収まった。

「じゃあ帰るわ」

「うん、お見送りするね」

 階下に降り、玄関までテトテトと付いてくる明日香。その頭をひと撫でして靴を履く。

「あ、トシくんネクタイ乱れてる」

「え、あれ?」

 見下ろすとそこには特段綺麗でも無いが問題があるわけではないネクタイがある。

「別に問題無くない?」

「もう、黙ってこっち来て」

 俺が彼女に寄ると、彼女はネクタイをわざわざほどいて結び直し始める。まるで実際の奥さんのようだ、なんて思って、そこでやっと明日香の意図を理解した。

「ごめんごめん」

「分かればよろしい」

 サクサクとネクタイを結び直した明日香は「よし」と一声かけて、その手を離す。

 その隙を突くようにして、こちらを見上げた顔にキスを一発お見舞いする。

「何呆けた顔してんだよ、これもセットだろ?」

「え、あ、うん……」

「じゃあね、また、明日」

「うん、また明日」

 左手を口に添えて、控えめに右手で手を振る明日香に、優しく手を振り返して扉の向こうに抜けた。

 完全に閉まってから大きなため息を漏らす。

 俺だって、寂しい。

 今すぐにでも明日の朝7時頃になってほしい。

 もう一つため息を漏らして俺は歩き出した。

 とりあえず今はシャワーを浴びたい。

 少し、汗をかきすぎた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

完結済、気分で書いたエロ 朝田ゆつ @OkamuAsat

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る