つむじかぜ

ハヤシダノリカズ

プロローグ

 今から私がいたしますのは、若かりし日の私の妻が体験したお話です。


 およそ三十年前、合格した大学に通う為、彼女は九州から単身京都にやってきて、一人暮らしをするようになりました。

 元々霊感少女であった彼女は実家にいた頃に、亡くなったお婆さんがはっきりと見えて、そのお婆さんに『いっしょにいこう』と言われたなんて逸話を持っていまして、京都に来た頃は『霊の多さに頭が痛いのが普通だった』と言う程に、心霊体験に塗れていたそうです。


『京都は霊的結界がしっかりしすぎていて、外部から霊が侵入してくることはないけど、内部の霊が外に出ていく事もないから、出て行けない霊がうようよしているんだ』なんて事を私が聞いたのは、さて、妻からだったか、それとも、メディアに露出していた霊能者だったか……。

 この辺りの私の記憶は随分あやふやでございますが、今もはっきりと覚えている妻の体験談をお話しましょう。

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