あまつぶ、ソラヘかえる

菜の花のおしたし

第1話 人生の扉

「おう!

ついにお前も赤いちゃんちゃんこかぁ?

あーはっはっーと。」


「るっせえ!

いったい、何の用なんだ??

俺がいるのを見計らって来やがってよぅ。」


「今夜はどーなんだ?

可愛いお嬢ちゃん達から祝ってもらうのか?」


「そーしたいところなんだけどな。

会社の昔からの部下がな。」


「おう、そうか。そりぁ、良かったじゃねえか。な。」


「むさっ苦しい中年の男だぜ。

加齢臭ムンムンだ。

あー、バニーちゃん達のあま〜い香りに埋もれたいぜ。」


「ばーか。んとに、こりねぇな。お前。

まっ、お前にはあいつらは宝物だぞ。」


「わかってる。

それより、お前、わざわざ還暦祝いの言葉だけ言いに来やがったのか?」


「、、、、。

あのな、俺たちの育ったあの場所な、無くなるだとよ。

丸谷先生から手紙が来たんだわ。

それでな、、。」


「お前、丸谷先生の事憧れてたもんな。

まーだ、やり取りしてたのか?」


「ああ。

封筒の中にな、こんなもんが入っててよ。

お前とは今でも付き合いがあるって

言ったから。

これ、お前に渡してほしいとよ、、。」


俺は奴から封筒を受け取って、中を覗く。

なんだ?

えーい、めんどくせ。

封筒を乱暴にびっくり返して中をテーブルに

ぶちまけた。


そこには、

白黒の古い写真。

透かし模様の入った白いのに黄ばんだハンカチ。

下手くそな絵。

が入っていた。


なんだ、コレ。

俺はふいに後ろからナイフで刺されたような

息苦しさを感じた。

なんで、今更なんだ?

もう、とっくに忘れようと??

そっか、俺、覚えてるんだな、じゃなきゃ

忘れようなんてしねぇもんな。








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