恋とチョコレートと、ホワイトスワン作戦
ケイティBr
はじまりと、チョコレート
バレンタインデーの朝、学校中が甘いチョコレートの香りに誘惑された男子たちと、そわそわする女子たちの気持ちで溢れていた。
俺、
「
耳慣れない声に、遼は顔を上げた。目の前に立っていたのは、クラス一の美少女である
彼女、
その熱心さは、部活動に限らず、どんなことにも全力で、誰の目にも魅力的な女の子だった。
でも、その日の
(え、なんで? どうして?)俺の心臓が、バクバクと不規則に跳ね始める。
突然の事で、泡を食ったような顔をしている俺に、
俺は、恥ずかしさのあまり、顔が真っ赤になった。
「はい。これ義理チョコだからっ」
朝っぱからのチョコの受け渡し現場に遭遇して、クラスのみんながこっちを見てる。
「ありがとう、でもなんで俺に?」ついそう尋ねると、
俺は、手に持った可愛らしいプレゼントを見ながら、ただただ、ぼんやりとしていた。
なんだか心臓がおかしい。速すぎる。これって病気? あぁ、俺は恋の病いにかかってしまったのか……?
――放課後、俺は2年生になった時、別のクラスになってしまった親友の
すると
「おーい、
「いや、
「そんな理由あるかよ。こんなにちゃんとした物を渡してんのによ」
俺は、ため息をつく。本命なわけない。そんなわけ……あるのか?
俺の態度に、
「どうした? 嬉しくねーのか?」
「信じられなくてさ。
「あぁ、まぁそうだな。
あの時は、下駄箱に入っていた手紙に踊らされて、ノコノコと呼び出されたんだ。
散々、馬鹿にされた上で『陰キャが身の程を知れ』と言われたんだっけか。
夕日が落ちて、暗くなり始めた道を肩を落として、俺と
「はは、だから。どうも信じられなくてさ」
「分からんでもないが、
「でも、義理って言われると、そうなのかな? って思うじゃん。今まで特に話したことなかったんだぜ?」
「まぁ、とりあえず、チョコを食ってから考えろよ。
俺の肩を叩きながら、
1年生の辛い時も何かと気にかけてくれた
「そうだな。ありがとう
「おう、それじゃまた明日な!」
「うん。また明日」
✧✧✧
「ごちそうさま」
「
「う、うん。ちょっとお腹いっぱいで……」
俺は、母さんから生暖かい目を向けられて居心地が悪くなっていた。
すると何かを思い出したように、台所へ行きレジ袋からチョコレートを取り出して俺と父さんに渡した。
「ふーん、そうなの。あ、これ義理チョコね。はい。お父さんのも」
「ありがとう。というか、俺のも義理なのか?」
「……今、渡すのかよ」
ショボンとしてしまった父さんと俺は、おざなりに渡されたチョコレートに心がささくれだっていた。
不満そうな俺たちに対して、母は包丁を手にとって――
「何か不満でもあるの?」と言ったので、俺たちは平謝りをした。
✧✧✧
その夜、俺はベッドに横たわりながら、天井を見つめていた。
その手には
「どう見ても本命チョコだよな、これ。母さんのチョコが義理なのは、見たまんまでわかるけどさ」
比較することで、より感じる小さな期待が俺の胸を焦がした。
チョコの感想と伝える為に、俺は可愛らしいラッピングを丁寧に解き。
現れたシフォンチョコレートを口に放おった。
チョコについていた粉に一瞬蒸せてしまったが、そのチョコレートはビターな味わいで俺の好みだった。
✧✧✧
翌日、
その時、眼の前で男の子が転んでしまった。
「いてて……」松葉杖を落としてしまって、膝を抱えている男の子に俺は声をかけた。
「
「あ、
その男の子は、1年くらい前から、俺が学校へ通う道すがら松葉杖を手に学校へ向かう小学生だった。
彼は、昔から足が悪かったが、こうやって一人で学校に通っているのだった。
俺は、よく見かけるな。と思っていたが、ある日、転んだ時に足を痛めてしまった
「学校まで送って行こうか?
「ありがとう。
こうやって、お互いに声をかけたり時には学校に送ってあげたりする仲だった。
元々は、家族が送ってくれていたが、小学校高学年になったし。独り立ちしたいと
そうして俺たちは、他愛のない話しをしながら学校へ向かった。
✧✧✧
朝の喧騒に包まれたクラスと、昨日のバレンタインで何も貰えなかった男たちが白く燃え尽きている気だるさが混じった中。
俺は、学校に到着して
「
「ふふ、どういたしまして。気合を込めて作ったかいが有ったわ」
俺の言葉に花が咲くように口元をほころばせた
その表情を見ていると、俺の
耳まで、真っ赤になってしまってるのが自分でも分かる。やっぱり俺は、
「あの、昨日のって義理……だったんだよね?」 でも、俺はそんな気持ちとは裏腹な言葉を口走ってしまうと、
「そ、そうよ。義理、だったわ」
先ほどの言葉を撤回したいが、上手い言い回しを思いつけなかった俺は――
「お、お返しはするから!」
「は、はい! 待ってます!」
と、なぜかクラス中に聞こえるような大声で叫んでしまった。
その瞬間、俺は心に決めた。「ホワイトデーには美咲さんへの気持ちを込めた特別なお返しをしよう。そして彼女のキモチを知るんだ。
――それが『恋とチョコレートと、ホワイトスワン作戦』の始まりだ。
おわり
―――――――――――――――――――――――――――
あとがき
KAC20244お題、ささくれ
書いていたら少なくとも1万文字コースの内容になりそうだった為、一旦こちらで終わりとします。
つづきが気になるよ。と言う形は、✧・フォロー・いいねで応援お願いいたします!
それでは、また別の作品でお会いしましょう。
恋とチョコレートと、ホワイトスワン作戦 ケイティBr @kaisetakahiro
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